「タイムアウト!」
「タイムアウト!」
何人ものひとたちが声を揃えてそう言うと私の開腹手術が始まった。
「タイムアウト」!??
何かのクイズ番組か???
痛さで意識が朦朧としている中、頭の中にいくつもの「はてな」が浮かんできた。
そう、私は今開腹手術の真っ只中なのだ。
開腹手術と言っても大袈裟なものじゃない。ただの帝王切開。
現在、日本で出産する人の4人に1人と言われている、なんら珍しくないことなのだ。
周りにも何人もいる。なんなら、帝王切開チーム“カイザークラブ”を結成できるほどいるそうだ。(実際にそんなCLUBは結成していない。。)
しかし、今まで30ウン数年生きてきて初めての手術をする私にとって、それは未知の世界。だだっ広い砂漠にぽつんと置き去りにされた不安な状態だ。
今まで出産をした人に「自然分娩ですか?」と聞いたことはなくて、一番に出てくる言葉は「出産おめでとう!男の子?女の子?」もしくは、「何グラム?」で…
産んだ人も自分から帝王切開の体験を語る人はあまりいなかった。
生々しいからか、子供のことでいっぱいなのか。
だから、私は帝王切開の細かい体験を想像することもせず今まで30数年平和に生きてきた。
私がこうなることになった経緯を話そう。
遡ること、日曜日、お昼に夫と実家近くの公園で開催されていたフードフェスへ行った。
出産予定日になっても何も変化なく、少し運動しようと母に誘われたのだ。
そこでいくつか美味しそうなものを食べてお腹いっぱいになり、家に帰ってゆっくりしていた。
夫と横になってテレビを見て、どこかの芸人さんの話で「はははは。。」と笑った時だった。
少し何かが漏れる感じがした。
これは!破水ってやつか!?
夫と喋っている間にも、水が並々と入ったコップからチョロチョロと溢れる。
(来たぞ!!来た来たー!待ってろよすぐに産み落としてあげるぞ私の子供よ!!)
あれよあれよと言う間に、病院の分娩室の前室みたいな場所へ。
ベッドに寝ている私は不安とドキドキ、期待感が入り混じっていた。
(よし、誰よりも早く安産で産み落とすぞ!!)
負けず嫌いな私は、そう意気込んでいた。意気込みすぎていた。
20代で遊び呆け、30代で仕事に目覚めバリバリと今までやってきた。
気づけばアラフォーのこの私。
周りの誰よりも遅い出産を経験する私にとって、「安産やってん!」と、みんなに自慢したい。
絶対安産で産んでやる!と意気込んでいたのに。。。
「タイムアウト!」
今から何が起こるのか。
手術が始まった。