ランダム単語ガチャを使って文章を書いてみる試み
その名の通り、ランダム単語ガチャというサイトでランダムに単語を選出して、気に入った単語を抜き出して原稿用紙一枚分の文章を書いてみようという試みである。
単語:悩み事
精一杯を感じている。それは私自身を総括して見た時の率直な意見なのだろうか。ただ繰り返すだけの日々は、きりきりと張り詰めた緊張の糸を切り取ってしまうだけで破綻してしまう危うさを孕んでいる。日常の中にはびこるそれとない異和でさえ許すことができなくなったのはいつ頃からだっただろう。毎朝鳴る不快な音が、毎朝顔面に浴びていた冷水が、毎朝食べていたはずの目玉焼きが、いつしか今日という苦痛の第一歩のように感じて、すっきりと見えていた視界ですら滲むような思いを抱えるようになったのは。毎朝突き合わせる水垢に塗れた鏡の中に、日に日に濃くなっていく死相を抱えたまぬけ面が映るたびに、あほ面を晒して無邪気にはしゃいでいた遠い記憶が私を揶揄いだすのだ。あれほどまで綺麗に笑えていたのに、きっとこうなってしまった日々は変わらない。変えることができないまま、私は日に日に年老いていく。
私こそが、私の人生の加害者なのだ。
単語:青少年
それは、少し涼しさの残る初夏のことだった。綺麗な思い出だった。あの日描いた日々の中には確かに君が居たが、二人きりで紡いだ秘密基地はいつしかちっぽけな子供部屋になった。幾年が経ったか、気づいたら僕は大人になってしまった。社会の一員として、様々な苦汁を口腔に注がれてきた。苦痛に喘ぎ、鼻の奥に通り抜ける酸っぱい匂いに顔を顰めながら、あの日の君の色香だけを思い出して、何とか生きていた。今でもこの手に残っている柔らかな感触が、僕を人間として生かしてくれている。それで充分であろう。充分だと思っていた。だが、あろうことか僕の体はいまだに君を求めている。君の元で、共に生きたいと思っている。無邪気で美しい君だったから、今の僕では吊り合わないかもしれないけれど。いつか二人で愛を育んでいければと願っている。最後に見た君の顔は涙で少し歪んでいたけれど、今度こそは君の全てを愛せるように。
単語:脱法ドラッグ、赤とんぼ
遠い過去の思い出だ。複数の子どもたちに混じってはしゃいでいた私も同様に子どもだった。必死こいて捕まえて、振り回して遊んでいたらちぎれてしまった節足動物の羽。そんなありふれた思い出にすらもう触れないほどに私は成長してしまった。子どもたちはいたって無邪気だ。分別なんて後からついてくるのだ。幼い失敗は水に流すべきなのだ。しかし意固地な私の脳はそれを理解するのに長い時間を必要としてしまった。それもまた幼さゆえの失敗というべきか、しかし取り返しのつかない過ちだった。過去の私は完璧でありたいと願うのみだった。あんなに楽しかった思い出さえ、人生の汚点のように感じてしまっていた。人間として正しい形でありたいと願い手を出した薬剤は、私から人間性を取り上げるには充分なものだった。正しさにのめり込んでしまったゆえの過ちだ。私はもう純には戻れない。過去からの叱責と異常な恐怖に苛まれるだけの余生を過ごすのだ。
あとがき
単語から着想を得て文字を書くのは楽しい。ただ、文章の雰囲気がほぼ同じテイストで揃っているのでなんだか気に入らない結果になってしまった。全体的に暗い。
次回があるならもう少し楽しい文章を書きたい。