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侍の最後はなぜ見事なのか『SHOGUN 将軍』

海外のドラマがあまりにも良かった。普段ドラマを観ない映画ファンは気になっているのではないかな。

SHOGUN/将軍


  2024年/アメリカ/ディズニープラスドラマ


【ストーリー】



戦国時代末期、天下を統一していた太閤は世継の幼い八重千代を残して亡くなった。有力大名である五大老は八重千代が統治者となるまで、合議制で政治を行う取り決めがなされた。しかし五大老の中で確執が生じ始める。

そんな折、網代に流れ着いた複数のイギリス人が捉えられる。

【解説というか、レヴューというか、】 


スケールが違う。映像と脚本のこだわりが違う。キャラクターひとりひとりの奥行きが違う。ここまでディティールに凝ったドラマは初めてかもしれない。

ドラマはいかにハマるか、エンタメは中毒性が重視されやすい。けどこれはエンタメ性もあって、文化や芸術を伝える作品としてのクオリティも至極高い。映画ではアートムービーというジャンルが昔からあるけど、ドラマ芸術という新たなジャンルを作ったのではないか。

一話ごとにそれぞれテーマが違い、現代やこの先にも通づる普遍的なテーマを持って物語が広がる。その内容はこれまでの歴史時代劇とはだいぶ違います。

この時代の人たちは好んで戦ばかりしていたのではない。いかに少ない犠牲で、戦さをせずにいられるか思考を凝らしていた。その究極の選択が出来る
先見の明を持ったのが主人公、吉井虎永。徳川家康をモデルにしている。


理想の世を構築するため静かに
そしてしたたかに虎永は風を読む





このドラマ、登場人物の気持ちが少し分かりにくい。その理由は日本語にある。

相手の立場や気持ちを思いやり、配慮することを重要としている日本人の言葉使い。ここをよく表している。

敵対する者、野心がある部下、貿易を口実に侵略を企むキシリタン、相手の腹を読まなければない。政治的な駆け引きの場では特に、本音と建前を使い分ける必要があるからだ。戦争を始めると終わらせるのが難しい。それを分かっているのが虎永だ。

また場を和ませる為に、本音を避けることもある。心情を歌にしたり、または粗野な侍が茶を立てたりと、物事を美しく推しはかることに重きを置く。
いつ命が消えるか分からないゆえの行い。儚く、淡く消えやすいから美にこだわる。そういったJapaneseビューティの奥ゆかしさと複雑さを、外国人の視点で魅せています。

特に戦さを最小限の犠牲で済むませる為に、自らの命を手段として使う家臣たちの姿は圧巻。その死に様は、死しても永遠に語り継がれ、後世の人々の中で生きられると信じんているから成せる。


イギリス人航海士の通訳を務める鞠子(アンナサワイさん)
がとても素晴らしい




命を使って主君の駒になる、そういう美学を持つ侍たち。だから散った侍に「見事な最後だった」と褒め称える。現代人は当然、海外の人には理解不能だろう。

どう美しく生きてどう美しく散るのか、日本の美がいかに独特な世界なのかを生々しく見せている作品でした。

【メモ】



原作はジェームズ・クラベルの小説のフィクション。
1980年にアメリカでドラマ化され本作はリメイクとなる。

まさかディズニーで戦国を観るとは思わなんだ。あえて字幕を出して観るのがお勧めです。役者さんのセリフを耳から聴いただけでは難しい意味あいのセリフが多い。

活字を目で追うのと耳から聞き取るだけでは理解の仕方が違う。視覚から飛び込んでくる言葉がある。それがまた奥ゆかしいのだ。

『タイタニック』オマージュがなされる場面もある。字幕を読んで、最後までしっかり観て欲しい。


最後まで面白いキャラクター藪重(浅野忠信さん)


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