サクッとやっちゃう元カノ【前編】

20代の頃。

彼女と『バイオハザード』をしました。

ウィルスに侵された無数のゾンビを倒すTVゲームです。

ゲームの持ち主は僕。
彼女は初めてのプレイでした。

怖がりのキュートな彼女

キャラクターは警官なので銃を持っています。
小ぶりなハンドガンです。

まずは、彼女に操作方法の説明から。

いきなりゾンビがひしめくエリアへ突入しても、たちまちGAME OVERです。

ということで、ゾンビのいない安全な場所に移動。
壁に向かって銃を撃つ練習から始めました。

弾丸の数には限りがあります。操作に慣れていない彼女は、パンパンパンパン何発も何発も貴重な弾をムダにしくさりました。

でも、仕方ありません。
愛の力で許せます。

彼女は一発撃つたびに「キャー!」「こわい!」と叫びました。

耳がキンとなって腹立たしく、とても可愛らしかったです。

チュートリアルを終え、ゾンビエリアのすぐそばまで到着。

「...怖すぎるねんけど」

コントローラーを握る手は震え、恐怖で顔面蒼白でした。

(守ってあげたい)

生まれて初めて、そんな感情を抱きました。

出陣

「ぎぃやーーーー!!!」

オリジナリティのかけらもない量産型の金切り声をあげ、ゾンビと対峙する彼女。

逃げ惑いながら、ダメージをくらいながら、なんとか最初の1体を倒すことに成功しました。

大層喜ぶのかと思いきや。

「ごめん...メッチャごめん」と謝りながら倒れたゾンビを横切りました。

初めて銃を撃ったときの「キャー!」といい、「メッチャごめん...」といい、ゲームの世界に没入しすぎて現実との区別がつかなくなっているようです。

(なんてピュアで優しい娘なんだ)
(金切り声に「黙れや」とイラついてしまった自分を殴りたい)
(親切でコーヒーを出したのに「ぬるない?」と言われ、己に2度と茶は出さんと誓った僕はあくまでも正しい)

そう思いました。

センスのかたまり?

怖がりながらも、予想よりはるかに順調なペースで進む彼女。

次第にゾンビへの恐怖感も薄れ、わずか2時間足らずで的確に銃弾をHITさせられるまでに成長しました。

それだけでなく、薬草・ナイフ・マシンガンといったアイテムも効率的にGETしていきます。

いつしか、コントローラーを握る手の震えも止まっていました。

彼女「もしかして、ウチむっちゃセンスあるんちゃうん?今日中にクリアとか有り得るかも!」

いいえ。
世の中そんなに甘いものではありません。

次のステージが鬼門なのです。

キミは絶望に打ちひしがれることでしょう。


【続く】

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だっぷんする間(ま)に読む駄文
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