少年野球
野球が嫌いになりそうな僕を支えてくれたのは、審判のおっちゃんの「ありがとう」でした。
僕の所属する少年野球チームでは、監督による恐怖政治が敷かれていました。
"スポーツの現場では厳しい指導があたりまえ"を拡大解釈。もはや被写体が何かすら分からないほど、拡大に次ぐ拡大をしていました。
暴力こそ無かったものの、不快な言動のフルコンボだドンでした。
"そのとき親友のガマガエルくんがどう感じたのか、最も適当な選択肢を答えなさい"ぐらいに戻ってやり直した方が良いのでは?
そう助言したくなるほど、子どもより子どもな終わってる大人でした。
「エラそうにしてるけど、会社では窓際族やで絶対」という、保護者のヒソヒソ話を聞いたことがあります。
憶測イカツイけど、そう思う気持ちも分かるぜ。
ちなみに<窓際族>とは、出世コースから外れ、閑職で黄昏れる中高年サラリーマンを表す古い言葉です。
監督の下には3人のコーチがいました。
バッティング練習で、小学生相手に見たことない変化球を投げてくるMコーチ。どんな握りで投げたん?
「根性鍛えたらぁ!」と叫び、2mの至近距離からノックを撃ってくるTコーチ。彼は通年アタマが狂い咲いていました。
ミスに寛容で、子どもの気持ちを尊重してくれるSコーチ。テメェもなんか特徴あれや。
変な奴ばっかりやないか。
僕は野球が嫌いになりそうでした。
そんな僕を支えてくれたのは、審判のおっちゃん(名前知らん)でした。
僕の地区では、練習試合も公式戦も、ほぼ100%そのおっちゃんが主審を務めていました。
「窓際族どころちゃうやん」「仕事あれへんやん」などと、もう1人の僕が心の中でヒソヒソ話していたのが懐かしいです。
おっちゃんは、小太りで声がこもり気味。
歯は2本しかありません。
従って、滑舌が終わりになられていました。
ちと不潔な要素も持ち合わせており、保護者からは嫌われていました。
でも僕にとっては癒やしでした。
判定のコールがオリジナリティの塊だったからです。
ストライクは「ライヤーッ」
ボールは「棒」
セーフは「ケープ」
アウトは「ありがとう」
変な奴ばっかりやないか。