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業間休みにパラダイムシフトを起こした怪童M君
小学生時代、業間休みをいかにムダなく遊び尽くすかに全身全霊をささげていた。
業間休みとは、2時間目と3時間目の間に設けられている長い休み時間のこと。
通常の休み時間は10分だが、業間は20分。
小学生の本分である、ドッヂボールに思う存分取り組めるボーナスタイムだ。
1〜5年生の間は何も考えずアヘアヘ遊んでいたのだが、6年生になって業間の使い方にパラダイムシフトが起きた。
僕は6年2組だったのだが、クラスメイトにM君という怪童がいた。
M君は頭脳明晰。
お医者さんである父の遺伝子を継ぐサラブレッドだ。
授業でも
先生「じゃあ、この問題分かる人は手を挙g...」
M君「〇〇です」
と、毎回食い気味で解答する憎たらしい小僧天才児だった。
天才児が、ある日つぶやいたのだ。
「業間ってムダが多いよな」
クラスメイト「?」
M君は自由帳をピリッと破り、何やら書き始めた。
一言一句を覚えてはいないが、以下のような事が書かれていた。
ドッヂの線は代表者2名が1時間目の休み時間に引いておく
他の者は各チームでジャンプボール出場者および内野・外野のポジションを決めておく
試合に出ない者は外野の後方に位置し、逸れたボールをカバーする
要するにムダを排除し、20分間フルで楽しめるように立てられた作戦だった。
今考えれば大したことではないが、当時「チョークは赤が1番ウマそう」とか考えていた僕からすれば、革命的アイデアだった。
早速、次の日から実践。
競合他社(他のクラス)は、業間が始まってからコートの線を引いたりチームを決めたりする中、僕達2組はすぐにドッヂを開始できた。
M君様様だった。
近距離にM君がいても忖度して見えないフリをし、遠くにいる腹立つ女子に狙いを定めていた。(←最低じゃない?)
長尺で楽しめるドッヂは、いつも以上に白熱した。
しかし、そんな日々は長く続かなかった。
6組の野郎どもが、体育の授業後そのまま運動場に残り、僕達が引いたコートでドッヂにいそしみ腐り倒していやがったのだ。
クラス全員が怒りに震えた。
冷静沈着なM君も拳を握り込んでいた。
クラス1のバリかわ女子、Sちゃんにいたっては、花壇をゾーニングしているレンガを引っこ抜いて6組の方へ鬼ダッシュして行った。
さすがに焦った僕たちはSちゃんを羽交締め。
すんでのところで撲殺事件は未遂に終わらせた。
羽交締めにされているSちゃんは、目の前に人間がいるのに鎖につながれて動けないゾンビみたいに「ア"ーーー!!」と叫んでいた。
それまでちょっと好きだったが、めっちゃヒイた。
そこから2組と6組のコート争奪戦が始まり、抗争は卒業まで続いた。
他人が努力して生み出した利益を横取りする人は許せない。
PS.
あれから僕も大人になり、たくさん勉強し、今では「赤にちょっとだけ黄色を混ぜるのが1番ウマイかも?」という考えに至るほど賢くなれた。
(↑待って、完全に社会の外野じゃない?)
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