松潤に逢いに行って取り調べを受ける姉
映画『99.9-刑事専門弁護士-THE MOVIE』を観ました。
刑事事件の裁判有罪率は99.9%。極めて困難な状況の中、松潤演じる天才弁護士が残り0.1%の可能性にかけて事実をあぶり出し、無罪を勝ち取るという設定です。
僕は、テレビドラマの映画化には興味がありません。
しかし、この日はSPイベントで、上映後に舞台挨拶のパブリックビューイングが開催されるとのこと。
僕は、香川照之さんの敬虔な信者。
オカンと姉は、松潤の烈々たる宗徒。
ということで、3人で映画館へ。
ネットで事前購入したチケットを発券し、スクリーンに入りました。席に座り、いよいよ暗転。
しかし、何やら様子がおかしいと感じました。
やけにザワザワしていたのです。
全校集会なら、生活指導の先生が怒り狂うレベルの〈ざわわ〉でした。
まもなく映画が始まるというのに...。
この日はイベントの都合上、映画泥棒→予告→本編ではなく、暗転してすぐに本編がスタート。
最初に喋り出したのは松潤。
ではなく、斜め前の席に座るマダムでした。
「だーかーらー!ここ私の席なんですけど!」
響き渡る怒号。
マダムの前には、10〜20代の女の子が仁王立ち。
「いやいや何回も言ってるじゃないですか!この席のチケットはウチが持ってるんで!」
睨み合うマダムと女の子。
「やあやあ我こそは!」と口上を述べ、一騎討ちに突入しそうなぐらい殺伐としていました。
映画館で観るメリットは没入感なのに、まったく集中できません。
驚いたのはここから。
客席のそこここで、マダムvs女の子のような言い争いが始まったのです。
一体、何が起こっているのでしょうか?
僕は、飛び交う怒号の断片を組み立てて状況把握に努めました。
映画どころではありません。
むしろ気が散るので「香川さん、ちょい黙れる?」と、スクリーンにクレームを言いそうになりました。
(あたしゃ、何しに来たのか分かんないよ...)
心の中のちびまる子ちゃんが嘆きました。
怒号の断片から浮かび上がった事実は以下の通り。
1席に2枚のチケットが発券されている
購入ルートが複数あり、映画館の一般発売と嵐のファンクラブによる発売の2通り
一般とファンクラブの席が丸カブり
そらモメるわ。
あいかわらずザワつきが止まりません。映画館のスタッフさんも、観客に詰め寄られてあたふたしていました。
そんな中、たった1人、映画の世界に没入している人物が目に映りました。それはオカンでした。
なんでなん?
この状況下で作品に集中できているのは、オカンだけ。99.9%の観客が映画そっちのけなのに。
常日頃から〈武勇伝を語るオトンの話しをノイズと捉え、フル無視でクイズ番組の問題に傾聴する〉という、たゆまぬ努力がもたらした結果でしょうか。
そんな事を考えていると...。
「席、間違ってません?」
遂に僕達のところにも来たようです。
40後半〜50代前半ぐらいのお姉さんが、チケットを握り締めてコチラを睨み付けていました。後方に、女子大生ぐらいの子が、ハンディ扇風機を握り締めてコチラを睨み付けていました。
親子でしょうか。
僕達は一般発売組なので、相手はファンクラブからの購入ということになります。
「どちらが優先か分からないので、お手数ですがスタッフさんに確認していただけませんか?」
姉が冷静に対応したのですが、相手の親子はチケットがカブッているという状況を把握できていなかったようです。
「ここ私達の席なんで!」の一点張りでした。
1フレーズしかプログラミングされていない、昭和のオモチャみたいでした。
相手の母親は段々と目が血走り、興奮状態に。
「だから御宅が悪いんですよね?どうなんですか!?黙ってないで、なんとか言ったらどうです!?」
姉は取り調べを受けているかのようでした。
そして、相手の娘がハンディ扇風機を「強」にし、姉の顔めがけて当てて来ました。
昭和の刑事ドラマでは電球を容疑者の顔に向けるのが常套手段でしたが、令和ではハンディ扇風機でプレスをかけてくるようです。
「さっきからなんやの?」
ここで遂にMyオカンが始動。
相手の母親と娘が、Myオカンを睨み付けました。
やばい。
喧嘩になる。
これほど無駄な争いはありません。トラブルの原因は、コンピューターのシステムエラーによるものです。
観客やスタッフさんに落ち度はありません。イライラする気持ちは分かりますが、怒りの矛先がズレていると感じました。
観客同士でモメたところで、スタッフさんに詰め寄ったところで何も生まれません。
返金対応は可能か、他に空席はないか、といった点を淡々と映画館側に確認することが適切だと思いました。
ただ、そんな説明をした所で、憤慨する相手の親子が冷静に聞いてくれるとは思えません。確率的には0.1%ぐらいでしょうか。
(そんな馬鹿げた希望的観測を信じる愚か者は、キミか映画の主人公ぐらいさ)
心の中の永沢くんが嫌味を言ってきました。
確かに、Myオカンも普段は温厚ですが、怒りが沸点に到達すると、北条政子よろしくテストステロンの分泌量がバズり倒して闘争心むき出しになってしまいます。
繰り返しにはなりますが、これほど無駄な争いはありません。敵はCPUです。
しかも、CPUは自らの手を汚さず、巧みに操って人間同士で戦わせようとしています。
シンギュラリティは2045年と聞いていましたが、もはやAIによる人間の駆逐作戦が始まっているのでしょうか?
結局らちが明かなかったので、僕たちが席を譲ることに。不幸中の幸いで他の席が空いており、途中からですが映画を鑑賞できました。
新しい席に着くや否や、Myオカンは映画に再没入。笑って泣いて、舞台挨拶の松潤にキャピキャピしていました。
姉は、まさか松潤に逢いに行って取り調べを受けることになるとは予想できなかったでしょう。
散々な映画鑑賞であり、一生の思い出に残る映画鑑賞になりました。
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