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新たな靴にてプロムナード
週末、神奈川県の大山へ詣でた。目的は新たな登山靴の履き馴らし。大山は2回目でハーちんを連れては初めて。大山は日本三百名山にして日本百低山である。
登山や山に造詣の深い方は言わずもがなだろうが、少しだけ解説を挟んでおくと、低山と呼ばれる山々は標高1500メートル以下の山々を指すことが多く、有名山でいくところの、高尾山、筑波山、榛名山…そして大山もそれに準ずるのではあるが、低山=初心者向きとは限らないのを是非ともお伝えしたいのである。
というのも、低山がある環境というのは登山口までのアクセスがよろしく、例えば公共交通機関があったり、マイカーでも山道が運転しやすく、殊、冬季の凍結がないなどといった状況で、それはつまり、登山口の標高がそれほど高い所にはないということでもある。平地に近いところから登り始め、1200メートルくらいまで上がるということは、だいたい1000メートルくらいは登る算段になる。100メートルで0.6度気温は下がるので、山頂と登山口での気温差は6度。仮に冬場平地で5度の外気温でスタートした場合、山頂ではマイナス1度となる。高い木が減り、風が吹き抜ける稜線ともなると体感温度としては更に下がって感じる。
また、登山口から山頂までの傾斜が一定ではあるものの、わりあい大きい傾斜なことも低山にはよくある。山の地図でいえば登山口から山頂までの標高差がある割に所要時間が短かかったり、等高線がぐいっと張り出しているのがその目安だ。
高山のような、低酸素濃度での活動による身体のリスクは少ないものの、運動負荷としては結構大きなものである。
加えて、その山のある立地によっては、大まかな天気予報では雪や雨でなくとも風の流れや他の山との位置関係によっては道中だけ雨、山頂だけ雪なんてこともあるため、軽めのスパイクやチェーンスパイク、レインウェアなども装備しておく必要もあるのだ。
このように、一口に低山と言えばなんとなく気が楽そうに聞こえてきてしまうのだが、内情は繊細な判断が必要で、そんな判断能力を鍛えるためやもう少し踏み込んでそういった状況に耐える身体作りをするために冬場のトレーニングとして低山ハイクを重要視している登山屋さんも多数いる。
話を戻そう。大山は阿夫利神社を祀る山で、スーパーなどで見かける阿夫利豆腐の本拠地である。丹沢の近くであることからも察せられる通り、いい水、いい川によってもたらされるお豆腐はこの地域の名産である。下社までならロープウェイもあるし、ロープウェイに至るまでの参道のお店やお茶屋さんも楽しい。高尾山と筑波山を足したような雰囲気で観光地としても賑わっている。
下社より先、上社を目指して登山が始まる。大山からの景色の魅力は眼下に広がる厚木、伊勢原の街並みと相模湾である。海を見渡せる山があるのは神奈川県か千葉県の山(関東では)で、そう多くはない。大山への1度目の登山は、まだ登山をするという気持ちの育っていなかった頃であった故に、靴はスニーカーに毛が生えた程度、ウェアのレイヤリングの重要性もちんぷんかんぷんで登山道が辛かった記憶のままであった。今回はもちろんその辺りの装備準備は抜かりなく、新しい靴の調子もすこぶるよろしく、あの辛さは完全に自分自身の未熟さが要因であったと痛感したのであった。靴擦れもなく圧迫痛もないまま無事に登り降りできたことで、新たな相棒となった新しい靴。
それに伴い、旧登山靴はその役目を終えることとなった。登山に対する気持ちができてから初めて購入した登山靴。劔岳、谷川岳、浅間山…名だたる名峰もお気に入りの山も共にしてきた登山靴。やはり名残惜しく、ただでは捨てがたいため何か供養をしたいと模索中。自分の気持ちとモノノ怪の気持ちを寄り添わせていい結論を出したい。
天気は概ねの曇天、案の定山頂では雪がちらついた。寒さを心配したハーちんの様子は、行動停止時間が長引くと少しガクブルしだすこともあったが、登山者の方々から声を掛けてもらって調子の上がってきてからは、寧ろ大ハッスルに。少し先に行っては景色を眺め戻ってくるを繰り返し、私たちの2倍楽しんでいた。
下山途中には太陽の光が強まり、登山道のアセビの木々の隙間から見える相模湾の水面がキラキラと照り映えて美しかった。
みなみな無事に登り降りを終え、身支度を整える。2倍楽しんだハーちんはブラッシングをし終えたら、私が着替えている間に既に寝始めていた。身体だけでなく、どうやって登ろうか降りようかと頭も駆使する登山は犬にとっても大きな刺激なのだ。
今年もいい登り降りを積み重ねられそうな気配。名峰なら名峰らしい楽しみを、そうでなくてもその山の楽しみを、テン泊でも山小屋でも日帰りでも私たちらしい登山を、そして何より、無事に登り降りできることを忘れずに。
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