
30歳、乳がんになる #5「診断に呆然」
先生は手書きの図を見せながら、知識ゼロの私にもわかるように説明してくれた。
・右胸の乳頭の右上あたりに1.4cmの乳癌がある。これは非浸潤癌の疑い。非浸潤癌であれば99%転移はしない。
・ただ、脇の下に1.5cmの癌細胞が見つかっている。これはリンパ節転移か、それとも乳癌が広がっているだけなのか、まだはっきりしていない。
・もしリンパ節転移なら、どこかに浸潤癌が隠れている可能性がある。
・さらに石灰化(カルシウムが沈着する現象)も広範囲で起こっている。
シンジュン…ガン?非浸潤癌?…なんだそれ。
え、癌?私が?こんなに元気なのに?死ぬ?
一瞬で色々な考えが頭を駆け巡った。
年齢的にも周りに大きな病気をした人はいないし、医療知識なんてゼロ。今さら悔やんでも遅いのに、もう少し勉強しておくんだった。
先生は、今後の方針について説明を続けた。
・まずCTとエコーで追加検査を行う。その結果、もしリンパ節転移ならもう一度針生検をして浸潤癌を見つける必要がある。
・リンパ節に転移がなく、乳癌が広がっているだけなら、手術をすれば終わり。
治療方法は大きく3つ。
1.手術(乳房の広範囲に癌があるため乳房温存は難しい)
2.抗がん剤(進行度とサブタイプによって決まる)
3.放射線
さらに先生は続けた。
・乳房再建について、1次再建(手術と同時に行う)と2次再建(後から行う)がある
・家族で家族性乳癌卵巣癌症候群の方はいるか?もし気になる場合は遺伝子検査も可能
・抗がん剤治療をすると卵巣機能が低下するため、妊娠を望むなら妊孕性(妊娠する力)を温存する必要がある
情報が一気に押し寄せ、受け止めるのに精一杯だった。
さっきまでスマホゲームをしていたのに。
まさか、こんな現実が待っているとは思わなかった。
どうしよう。
診察が終わり、頭が真っ白のまま、緩和ケアの看護師さんに連れられ空いているベンチに座った。
看護師さんは親身になって話を聞いてくれた。
「髪の毛は抜けるのか、ウィッグのこと、仕事は休職するべきなのか。今何をすればいいのか…」
看護師さんのおかげで少しずつ気持ちが整理されていった。
でも、看護師さんと別れた瞬間、張り詰めていた糸がぷつんと切れた。
涙が溢れてくる。
「どうしよう…えらいことになった。」
涙が止まらない。
すると、夫がポツリと一言。
「泣いても仕方ないやろ。しっかりせえ。」
え、厳しくない?
そう思った瞬間、不思議と涙が引っ込んだ。
今思えば、夫もいっぱいいっぱいだったのだろう。
************
次回はセカンドオピニオンのことを書きます。