+短編小説+【夢を買ったら】 第4話
『百貨店で値段気にせず買い物出来たら幸せだなぁ』
そんな事を考えながら
眞近はデパ地下のお惣菜を眺めていた
お金に余裕がある人の景色とはどんな感じなのだろう
以前
セレブになられたお客様に
『お金に余裕が出来て何が変わりました?』
と聞くと
『ん〜心に余裕が出来たよね』
ちょっとして事で怒らなくなり
イライラしなくなった
そんな事を言っていた
私に程遠い話だな。。。
どんな景色を見ても
どんな場所にいても
何を食べていても
頭のどこかには
お金に対する憧れと
嫌気がある状態だ
特に返済に追われているよう身の眞近は
笑っていても
全部嘘の笑顔に自分自身が思えてしまう
喜びも
幸せなことも
心から感じられていないのが
何故か分かる
ちゃんと笑えてるのだろうか?
そんな風に思えてならない
眞近はポジティブで明るく
何事にもめげなず
争い事か嫌いで
平和主義
そんな自分が大好きだった
あの頃の自分はどこへ行ってしまったのだろう
40前にもなり
貯金残高は143円
督促状の中で生活をし
毎日返済の電話がひっきりなし
携帯代や光熱費も遅れ
かろうじて払えてるのは家賃ぐらいだ
手元にお金がない分
クレジットカードを切ってしまう
そのクレジットカードも
使えるのは一枚のみ
限度額は目一杯で
欲しいものも勿論買えず
食費で限界だった
ただ
そんな眞近の唯一良いところは
その事を一切周りに知られず
愚痴も溢さず
お金がない
なんて事は言わない
本当は言えたらどれだけ楽だろう
言霊を信じ
マイナスなことは言わずに
ひたすら働く
いつか出逢えるであろう
ゆとりのある幸せな自分を毎日夢見ながら
なんて良い話みたいに終わりそうだが
現実はそうはいかない
明日も明後日も明明後日も
きっと同じ景色で
苦しい笑顔の中で
過ごしているんだろうな
眞近はお惣菜を買い
周りからは到底分からない
普通の暮らしをしている人のように
人混みを歩いて帰っていた