+短編小説+【夢を買ったら】 第5話
『緊急事態宣言を発表します』
2020年4月7日
眞近の破産状態はこの辺りから始まった
眞近の働いてるお店はほぼ歩合が給料となる
施術や物販をした分は
大元の会社から
売り上げに応じた額のパーセンテージが入る仕組みだ
コロナとなり
あっという間に客足が遠退き
緊急事態宣言が発表される前から
ほぼ収入がない状態が続いた
現金を残すため
カードを使い
キャッシングまで手を出さないといけない状態となる
そしていよいよ,,,
店が休業となり
家すら出れない日々
仕事も他になく
国からの援助を受けるために手続きをしたが
その場しのぎに過ぎなかった
到底足りず
支払いをし
食費
水光熱費
蓄えを使う毎日
消費者金融にまでも手を出した
何とかしなくちゃ
何とかなる
何とかする
眞近にはこれしかなかった
今までもこうして自分に喝をいれながら
乗り越えてきた
だから今回も乗り越えれる
そう思っていた
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コロナ禍がやや落ち着き
仕事がゆっくりスタートし始めた
『仕事しなくちゃ』
その頃には眞近は
すでに金銭的に
ほぼ終わりを迎えていた
今まで何とかなってきたのは
たまたまだったのか
自分の過去を振り返る
眞近はわりとお金遣いがあらいところがあった
仕事がら好きなこともあり
美容にかけるお金も多く
食事も外食や飲み代
おしゃれも好きな眞近は
ハイブランド物は買わずとも
洋服やカバンに靴など
散財してきた
母子家庭にしては
自由奔放な生き方だ
子供達の学費や生活費
全てこなしながら
その分自分もしっかり使っていた
今思えば
この身分でありながら
反省しかない使い方だ
『ママ〜鞄が壊れたから買わないとあかん』
やすはが言った
『オッケー。買いに行こう』
金銭面の辛さなど見せず
眞近は返事をする
大きめのリュックが必要で
この年頃はある程度の流行のカバンを欲しがる
こういうシンドイ時に限って
色々物は壊れたり
急な出費があるものだ
下調べをしていたやすはは
13,500円の品に手を伸ばした
『これだ!ネットで見てたやつ!これ欲しい!』
眞近は冷や汗とモヤモヤと辛い気持ちで
レジへ行き
先ほどおろしたばかりの2万円に別れをつげ
お釣りを手に取り
そそくさと店を出る
”辛い気持ち”
この感情は子供が高いものを選んだからではない
こんな物を気軽に買えない自分への情けなさだ
何て母親
最低人間
終わってる
今の眞近の心の中は
見た目とは裏腹に
黒く荒んだ感情で満タンになっていた
でも
こんな辛い時は
幾度と乗り越えてきた
絶対負けない
乗り越えてみせる
『よーし!スタバ寄ってコーヒー飲んで帰ろうか〜』
眞近は気持ちをまた奮い立たせ
切り替えながら
ショーウィンドウを横目に
嬉しそうなやすはと
軽くなった財布と
重たい心と並んで
真っ暗な道を
笑いながら帰っていった
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