+短編小説+【夢を買ったら】 第3話
眞近の職業はエステティシャン
約10年この業界に身を置き
様々なお客様の"綺麗”になるお手伝いをしてきた
お客様は
お給料日毎月来てくださるOL
ご両親がお金持ちの学生
キャバ嬢
ホステス
アイドルや推しのイベント前のお手入れ
初回のみの方
眞近の友達
そしてセレブのご婦人
沢山の方と色んなお話をしながら
施術が終わった後は
『うわ〜凄くスッキリした!顔が小さくなってる〜!』
など、
喜びの声を聞けるこの仕事は
決して良いお給料を貰っているとは言えないが
眞近にとって幸せな時間でやり甲斐のある仕事だ
今日は眞近を長年指名している
セレブのご婦人のお話
ご婦人の名前は山本様
山本様の歳は私の二つ上
41歳
子供は1人
一般的に"美人"とは言えないが
気さくで明るく、ズバズバハキハキとした物言いは
眞近は気持ちよく元気を貰えるお客様の1人だ
山本様は
いわゆる"昔からのセレブ"
と言われる育ちではなく
結婚して仲間入りを果たした女性だ
家は都会の真ん中にあるタワーマンションに住み
ベンツは2台
夏休みには毎年
海外や沖縄
その他年に数回の旅行へと出かける
勿論持ち物も全てブランドものだ
何でも出産時のお祝いにと
ご主人から
HERMESの鞄をプレゼントしていただいたとか
山本様✴︎『今度結婚式があるからFENDIのスーツ買いに行ったの〜』
眞近✴︎『うわ〜!凄いですね〜!流石です〜!』
山本✴︎『何着ていけば良いかわからなくて、
何となく百貨店歩いてたらFENDIの前通ってね。
そして何となく試着したらピッタリだったからそれにした!』
何となく
何となくでFENDI買えるのがいかにもだ
山本様はセレブながらに
偉そうにすることもなく
見せびらかすこともなく
平然ととんでもない額の話をいつもしてくれる
そんなお話を聞きながら
施術を終え
20万円のコース入会を決め
自分がエステをしたわけでもなく
20万が自分に貰えたわけでもなく
セレブになったわけでもないのだが
何だか眞近はスッキリとした気分になっていた