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塗装現場からのメッセージ《第21回》高品質な塗装製品は安全で快適な作業環境から
本コーナーでは、豊富な経験と実績を誇る茨城県稲敷郡阿見町の塗装専業メーカー、㈱技研・代表取締役 宮本勇気(みやもと ゆうき)氏が、塗装現場におけるさまざまな課題解決のためのヒントを伝授します。
塗装工場では、作業者の健康と安全を確保するためや、事故などから守るためにさまざまな基準や規則がある。これらの基準は、有機溶剤をはじめ、化学物質の取り扱いから、作業場所の設計、防護具の使用、そして塗装設備の適切な管理まで、さまざまな規定があり、守る必要がある。
取り扱う塗料の種類や使用量、塗装する製品により違いはあるが、工業塗装に関わる業者として最低限知っておくべき内容を自社の考えも取り入れ以下にまとめる。
化学物質の取り扱い
塗装作業に関わる材料には、多種多様な化学物質が含まれている。塗料やシンナーなどの危険物は、適切な取り扱いが行われない場合、作業者の健康に害を及ぼす可能性や事故につながる危険があり、取り扱いには十分な知識や社内でのルールが必要になる。たとえば、一部の化学物質は吸入や皮膚からの吸収により体内に侵入すると、肺や皮膚の病気が起こる可能性がある非常に危険なものも存在するため、自社で使用する際にはSDS(安全データシート)を確認し、それぞれの化学物質の特性と安全な取り扱い方法を理解していることが必要である。
作業場所の設計
作業場所は、作業者の安全を確保するために特別な設計が必要である。排気設備は特に重要で、塗装ミストや溶剤蒸気、研磨などを行う場合は粉塵が作業環境に滞らないようにするためである。
ここで重要なのが、塗装ブースと吸気装置である。塗装ブースは、作業者が塗装作業を行う際に使用する重要な空間で、塗料の飛散を防ぎ、作業者の安全を確保する。事故予防のためにも、塗装ブースや作業場所には適切な消防設備が設置されている必要がある。
また、塗装設備のレイアウトや設計は塗装品質にも直接関わってくる事項であるため、検討の際には、自社の製品や品質の確保ができるかも重要な点になってくる。
保護具の使用
労働安全衛生法では、塗装作業者は作業中に適切な保護具を着用しなければならない。これには、化学蒸気から呼吸器系を保護するためのマスクやゴーグル、塗料から皮膚を保護するための手袋や保護服などが含まれる。
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着用した研磨作業
教育と訓練
塗装作業の安全を確保するために、新人の作業者へは、基本的な健康被害に関する教育と、危険物の安全な取り扱いについての教育が必要である。この教育には、化学物質の取り扱い、保護具の使用方法、緊急時の対応策などが挙げられる。また、現場の責任者は規則や基準を定期的に確認し、塗装現場を管理する必要がある。
塗装工場や塗装作業に対する一般的なイメージは、塗料や溶剤を使用することから臭いや汚れなどのある過酷な環境であるというものかもしれない。しかし、昨今の塗装工場は自社を含め工場内を見てみると、作業環境はそのイメージを覆すような設備と環境を提供している企業が多くある。
安全基準を満たすことだけでなく、可能な限り安全で快適な作業環境を提供できれば、作業者への安心にもつながり、それが、質の高い製品とサービスにつながっていくと考えている。我々は塗装作業の安全基準を遵守し、それを常に改善し続けることが必要である。
㈱技研…1985 年1 月創業。シリコン加工・テフロン加工・金属およびプラスチック部品の塗装・印刷・組立その他加工全般を手掛ける。取扱品目は製菓、製パン用天板、住宅関連部品、自動車部品、弱電部品、時計部品、その他関連商品・各種部品。