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塗装現場からのメッセージ《第2回》耐熱塗料の魅力と塗装加工方法

本コーナーでは、豊富な経験と実績を誇る茨城県稲敷郡阿見町の塗装専業メーカー、㈱技研・代表取締役 宮本勇気(みやもと ゆうき)氏が、塗装現場におけるさまざまな課題解決のためのヒントを伝授します。

※本記事は「塗装技術」誌に掲載されたものです

耐熱塗装の特徴と一般的な塗装との違い

耐熱塗装はその名の通り、高温に耐えることができる塗装のことである。
一般的なメラミン塗装や、アクリルの焼き付け塗装の耐熱温度は200℃ 以下の場合が多い。塗膜の耐熱温度以上の環境で使用された場合、変色や、塗膜剥離などの塗膜異常が発生してしまう。

一方で耐熱塗装は、そのような環境で使用された場合でも、塗膜異常を起こすことなく、美観や性能を保つことができる機能を持っ塗装である。塗料設計により耐熱温度が設定されており、耐熱300℃、600℃ など、使用用途・環境に合わせて選定し、使用する。
耐熱塗装としての多くはシリコーン樹脂系の塗料を使用したものが多くある。その他にも、フッ素樹脂、エポキシ樹脂などの熱に強い樹脂や原料が使用されている。

手吹き塗装作業

塗装加工例として

身の回りには熱に関わる製品が多数ある。オーブンレンジ・ストーブ・アイロンなどの家電部品、バイク・自動車用マフラーなどの自動車部品、フライパンやオーブンなどの厨房用品、バーベキューコンロなどのアウトドア用品など、さまざまなところで使用されている。

耐熱塗装使用例/オーブンレンジ

耐熱塗料使用時の注意

上記で述べたようにメラミン・アクリル樹脂のような一般の焼き付け塗装とは違い、さまざまな樹脂を用いて塗料が設計されているため、塗料に含まれている内部溶剤もそれぞれ特殊な場合が多い。
一般の焼き付け塗装設備と同じ設備を使用する場合は「設備の材質や洗浄に使用するシンナーなどが使用可能か」など、確認や注意が必要である。
塗膜へ再塗装する場合にも、フッ素樹脂・シリコーン樹脂などは、一般の焼き付け塗装のように再塗装ができないため、製品を塗装する際は塗装工程での工夫が必要になってくる。

シリコーン樹脂などでは、一般塗装の生産ラインとの相性の悪いものもある。耐熱塗料を使用する際は自社の塗装設備で塗装が可能かどうか、十分な確認が必要である。

耐熱塗装使用例/バイクマフラー

乾燥温度と素材選定

耐熱性のある塗料は、比較的高温で乾燥させるケースが多く、一般の工業塗装設備で使用する温度帯よりも高い。200℃ 以上の乾燥が必要なものや、フッ素塗装に至っては380℃ の焼き付け設備が必要となる場合もある。

塗装をする際、新たに乾燥設備が必要となる場合もある。
高温で乾燥した際に、非塗装物の熱による酸化や溶融などが発生し塗膜に影響を及ぼすこともあり、注意が必要である。

耐熱塗装使用例/バーベキューコンロ

耐熱塗装の可能性

耐熱塗装というと黒やシルバーなどの工業部品のイメージが強いが、条件により赤・青・黄などカラフルな調色や、メタリック、パールなどの塗装も可能になっている。現に一般家庭向けの厨房用品などは色、デザインなどまさにさまざまである。
耐熱性+αで、非粘着性や撥水(はっすい)性、すべり性などの耐熱+付加機能のあるものも多くある。このような特徴を理解し、生かすことができれば、市場のニーズに合わせた塗料の選定や塗料の開発も可能となる。

耐熱塗装の枠に捉われない機能塗装を社会に提案していくことも、塗装業者として意義があると感じている。

㈱技研…1985 年1 月創業。シリコン加工・テフロン加工・金属およびプラスチック部品の塗装・印刷・組立その他加工全般を手掛ける。
取扱品目は製菓、製パン用天板、住宅関連部品、自動車部品、弱電部品、時計部品、その他関連商品・各種部品。


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