塗装現場からのメッセージ《第16回》塗膜の付着性を高める方法と工夫
当社(㈱技研)では金属・樹脂製品など、さまざまな材質への塗装依頼があり、日々さまざまな素材へ塗装を行っている。
塗料の性質から、そのままの使用では塗装の付着性が悪い素材でも、塗装前処理を行うことで塗装を可能にするケースが多くある。
塗膜の付着性を高めることは、塗膜の性能向上に影響する最重要事項である。塗膜がしっかりと基材に付着していなければ本来の塗膜性能は発揮されないため、素材と塗料に見合った塗装前処理工程の選定は必要不可欠である。
今回は塗料の素材への付着性を高めるためにどんな方法があるのか、塗装前の処理の種類について簡単に紹介していく。
プライマー塗装
上塗り塗装の前に、素材と塗料の両方に相性の良い塗料を、スプレーガン等を使用し塗装する方法である。
プライマー塗装を採用する目的は、付着性を上げる・防錆力を高める・上塗り塗料の発色性を高める。
塗料は各塗料メーカーから金属用・樹脂用など、さまざまな種類が発売されており、それぞれの材質や用途、要求される塗膜性能に合わせて選定して使用する。
塗装の設備があればできる工程であり、塗装業者であればプライマー塗料の選定のみで処理できる。
ブラスト処理
粒状の粒子をエアの力を使って素材にぶつけて表面を荒らす加工法のこと。ショットブラストやサンドブラストなどと呼ばれる場合もある。ブラスト処理を行う目的は、素材を目荒らししてアンカー効果を高めることである。
素材と上塗り塗料、塗装する膜厚に合わせて表面の粗さを設定したり、研磨剤を選定し処理を行う。ブラスト研磨材の種類にはセラミック粉や樹脂などさまざまなものがある。
塗装業者でも設備を有している業者は多いが、ブラスト専用の設備が必要になるほか、研磨剤の種類や加工方法にはそれ相応のノウハウも必要になってくる。ブラスト加工専門業者も複数存在する。
化成処理
酸やアルカリなどの薬品を使った水溶性の処理で、主に金属製品に対して、「被塗物を薬品槽に浸漬する」「薬品をシャワー方式でかける」などをして行う方法である。リン酸鉄被膜処理、リン酸亜鉛被膜処理、クロメート皮膜処理、などがある。
化学反応を用いて表面を改質し、塗料の付着性や防錆力を高めることが可能になる。
専用の処理設備、排水設備や処理液の濃度管理などが必要になってくる。
電気やガスなどを使った処理など
上記のプライマー塗装、ブラスト処理、化成処理を複数組み合わせることで付着力が確保できる場合がある。
それ以外にも、特殊なガスとバーナーを使用し素材表面を改質するフレーム処理や、電気のコロナ放電を使用したコロナ処理、プラズマを使用したプラズマ処理など、少し特殊な前工程も存在する。
繰り返しになるが、素材が何であれ、使用する塗料の付着性は塗膜の性能に大きく関わる非常に重要な項目である。
塗膜の性能を最大限に引き出し、確保するためには、塗装する製品の用途やスペックに応じた塗装前の処理工程を選定して行い、管理することが大切になってくる。
また、塗装技術や塗料の進化と新技術により、日々革新的な前処理方法も開発されている。塗装に関わるものとして、最低限の情報収集も必須である。