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塗装現場からのメッセージ《第5回》導電塗装の提案

本コーナーでは、豊富な経験と実績を誇る茨城県稲敷郡阿見町の塗装専業メーカー、㈱技研・代表取締役 宮本勇気(みやもと ゆうき)氏が、塗装現場におけるさまざまな課題解決のためのヒントを伝授します。

※本記事は「塗装技術」誌に掲載されたものです

導電塗装とは、原料に導電性のある塗料を使用し塗装された製品のことである。主にプラスチックなどの電気を通さない素材に塗装を施すことで、塗膜に導電性を持たせることが可能になる。
導電性の顔料としては銀・ニッケル・銅などの金属系、カーボンなどの炭素系、酸化スズなどの金属酸化物系があり、医療機器部品や家電部品など、導電性能や用途により、さまざまな電子機器部品で採用されている。

導電塗装の特徴

導電性

塗装を施すことで、塗膜表面に導電性能を付与することができる。塗装する導電材や塗料により塗膜の体積抵抗値が変わってくるため、要求する性能により塗料を選定する必要がある。

電磁波シールド性

導電性を付与することで、電子部品などから発生する電磁波ノイズを遮断し、装置の誤作動を防ぐことが可能になる。医療機器分野などでは機器から発生する電磁を遮へいし、また人体から発生する微弱な電磁波を防ぐ目的で使用されている。

ノイズ対策

エレキギターや音響機器の筐体(きょうたい)内面へ塗装することで、ノイズの発生を防ぐことが可能になる。

エレキギター筐体への内面塗装

帯電防止性能

導電性を付与することにより、帯電防止や静電気防止が可能になる。透明の帯電防止塗装も可能である。静電気対策が必要な精密機器の組み立てラインや工具などに採用されている。

代表的な導電フィラーの特徴

ニッケル

比較的安価で形状安定性に優れている。

比較的安価で導電性能に優れている。

高価であるが、導電性能、電磁波シールド性能に優れている。

カーボン系

金属フィラー系よりも導電性は劣るが汎用性が高い。

上記以外にも、金属酸化物系などの導電フィラーがさまざまな分野で使用されている。

塗装加工例

当社では電子機器部品を中心に、医療機器の外装カバーの内面や、遊戯機器の筐体内面への塗装、ドローンの電子基板ケースへの電磁波シールド塗装、半導体組み立てライン専用工具などへの塗装を行っており、さまざまなタイプの導電塗装が行われている。

基板ケースへの内面塗装
遊戯機器の筐体への内面塗装

導電マスキング塗装も可能

当社では塗膜の性質上、機器の内面のみの塗装や部分的な塗装を行う場合が多く、マスキングが必要になる塗装へも対応している。

導電マスキング塗装

また、外観の塗装との組み合わせで複雑な内面導電塗装+外面通常塗装などの塗装仕様へも対応可能である。
近年では電子機器のEMI 輸出規制の対策もあり、機器内面への導電塗装の採用例が非常に多くなってきているほか、外観が透明な導電塗料も開発が進んでおり、さまざまな場所で使用されている。
類似の導電性被膜として、樹脂メッキや金属蒸着でも同様の性能確保は可能ではあるが、塗装のほうが小ロットへの対応や複雑な形状への塗装、マスキングの塗装が可能であるため、今後も導電塗装技術は非常に有効な手段であると言える。

㈱技研…1985 年1 月創業。シリコン加工・テフロン加工・金属およびプラスチック部品の塗装・印刷・組立その他加工全般を手掛ける。
取扱品目は製菓、製パン用天板、住宅関連部品、自動車部品、弱電部品、時計部品、その他関連商品・各種部品。


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