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塗装現場からのメッセージ《第8回》マスキング塗装:デザインや機能性確保のために

本コーナーでは、豊富な経験と実績を誇る茨城県稲敷郡阿見町の塗装専業メーカー、㈱技研・代表取締役 宮本勇気(みやもと ゆうき)氏が、塗装現場におけるさまざまな課題解決のためのヒントを伝授します。

※本記事は「塗装技術」誌に掲載されたものです

当社で行う塗装仕様において、問い合わせの多いものの1つに、塗装の塗り分け、いわゆるマスキング塗装がある。
マスキング塗装の目的はデザイン性機能性など、それぞれに意味や理由が存在する。ここでは自社でマスキング塗装を行う際に注意しているポイントやコツを簡単に紹介していきたい。

マスキング塗装の目的

まずいちばんに確認することであり、最も重要な点である。お客様に対し、マスキングが必要な理由や、求められる精度、基準を確認していく。
マスキングの目的については大きく分けて以下の2 点がある。

  1. 外観デザインのためのマスキング:自動車の内装部品、遊技台の装飾、玩具など

  2. 製品の機能性を確保するためのマスキング:導電塗装での導通の確保、次工程での組み立て精度の向上など

生産計画数の確認

マスキング塗装の場合、マスキングを行わない通常の塗装と比べた場合に工程が多くなる。
手間や時間、資材などのコストも追加される。生産計画数についても、発注ロットや総生産数、生産期間を考慮し、全体を把握したうえで、より適正なマスキングの方法を検討していく必要がある。

マスキング方法を選定する

マスキングテープ(シール)を使ったマスキング

主に塗装面が平面でマスキング形状が単純なもの、数量が少量の場合や、量産前の試作品などの製作時に行う場合が多い。

  • メリット:試作時など少量から対応可能・時間はかかるが、複雑な形状でも対応可能

  • デメリット:テープやシールは使い捨て、製品形状によりマスキング精度が安定しない場合もある

マスキングジグを使ったマスキング

製品の形状に合わせて金属や樹脂を使用し、専用のマスキングジグを製作する。

  • メリット:マスキング品質の安定・作業効率のアップ

  • デメリット:定期的なジグの洗浄や剥離が必要・専用ジグになるため費用がかかる

テープ(シール)とジグの複合でのマスキング

それぞれの長所短所を補いつつ併用して使用する。

マスキングジグの種類

⑴ 電鋳マスク

  • マスキングする製品から電鋳型を作成し、塗装用のマスキングとして使用

  • 寸法精度が高く出るため、複雑なマスキングも可能

  • デザイン性が求められる場所や、細かな機能性が求められる場合に採用

  • 製品現物から型取りをするため複雑な形状でもある程度対応可能

  • 非塗装物の寸法にバラツキがあると、型に合わないなどの不具合、見切りのズレ、吹き込みなどが発生する

電柱ジグ 上下マスキング(電鋳マスク)

⑵ 板金製マスク

  • 製品の形状に合わせて、板金加工した製品をマスキングジグとして使用

  • 比較的マスキング精度の低いものに使用可能(製品裏面への吹き込み防止、通電性の確保など、デザイン性を求めないもの)

板金ジグ 座金マスキング(板金製マスク)

⑶ 樹脂成型マスク

  • 樹脂で型取りしたマスク、成型金型を製作したマスキング用の成型品、最近は3D プリンターなどで出力された成型品でのマスキングなどがある

  • 比較的に寸法精度が高い

  • 精度を求める場合、繰り返しの塗装には塗装剥離が必要となる

  • ジグは使い捨てになってしまうことが多い

成型品ジグ 開口部マスキング(樹脂成型マスク)

⑷ 市販の汎用ジグ

  • プラスチック製やシリコーン製のネジ穴キャップやチューブなど、需要が多いものに関してマスキング用品が発売されている

上記に挙げたようにマスキングの塗装方法にはさまざまな種類があり、それぞれに塗装する際の注意点や不具合の内容、管理用法などが異なってくる。
塗装業者においては、それぞれのマスキング塗装の品質に応じた管理が必要となるし、塗装する際に器具や数値管理だけでは測ることができないという特性もある。
マスキングジグなどの道具に頼るだけではなく、塗装技術のレベルの向上に努めていくことも大切である。

㈱技研…1985 年1 月創業。シリコン加工・テフロン加工・金属およびプラスチック部品の塗装・印刷・組立その他加工全般を手掛ける。
取扱品目は製菓、製パン用天板、住宅関連部品、自動車部品、弱電部品、時計部品、その他関連商品・各種部品。


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