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塗装現場からのメッセージ《第7回》お客様のための再塗装:生産効率と再塗装について

本コーナーでは、豊富な経験と実績を誇る茨城県稲敷郡阿見町の塗装専業メーカー、㈱技研・代表取締役 宮本勇気(みやもと ゆうき)氏が、塗装現場におけるさまざまな課題解決のためのヒントを伝授します。

※本記事は「塗装技術」誌に掲載されたものです

当社はメーン業務として塗装加工を受託している。作業には細心の注意を払っているが、品質基準により塗装後の検査工程や加工中に塗装の不合格品が一定の割合で発生する。不合格の内訳は主に外観不良である。
受託加工の場合、塗装素材は基本的にお客様からの預かり品であるため、簡単に「塗装がダメだから塗装された製品も廃棄する」というわけにはいかない。再塗装が可能なものは再塗装することで良品に仕上げて、顧客へ納品している。
塗装素材の製品を廃棄せず、再塗装することで全体のコストを抑えることもできるため、再塗装はお客様にとってもメリットが出てくる。
再塗装方法は被塗物の材質、使用する塗料、要求される品質などにより変える必要がある。当社で行っている再塗装方法を、以下に掲載する。

表面を研磨して再塗装

意匠性を目的とする塗装ではいちばんスタンダードな再塗装方法。塗装不良の原因である異物、ムラ、肌、色彩、艶などの不具合がある塗膜表面を研磨紙などで全体的に研磨し、再塗装を行う。塗装不具合の内容と塗装膜の厚さにより、研磨材の粗さも合わせて選定する。塗装条件も素材からの塗装と同じ場合や、塗料の特性に合わせて希釈率や乾燥条件等の塗装条件を変えていく必要がある。

研磨作業

ブラスト処理を行い、旧塗膜を除去して再塗装

フッ素塗膜やシリコーン塗膜、セラミック塗膜など、出来上がった塗膜へ塗装した際に塗料の付着性が確保できない塗膜を扱う場合に行う。
塗膜自体に非粘着性や撥水(はっすい)・撥油(はつゆ)性がある場合、塗膜へ再塗装や上塗りを行っても上塗り塗料は付着しづらい。初期密着は良好でも2 次密着で剥離する可能性もあり、再塗装する際は完全に旧塗膜を除去する必要がある。

剥離剤で剥離して再塗装

主に金属製品で膜厚の指定がある場合や、ブラストで素材を傷めたり、変形してしまうリスクがある場合に行う。製品の材質や塗膜の種類により溶剤、酸・アルカリ性などの剥離剤や薬品を選定し、剥離する。

剥離作業

予備乾燥後に外観検査を行い、研磨や洗浄をして再塗装

研磨して再塗装

塗膜の硬化前に再塗装する方法。フッ素、シリコーン系の塗膜など、硬化前の塗膜が再塗装しても付着性が良好な場合に採用する。塗膜の取り扱いで色艶、膜厚などに注意が必要。

洗浄し再塗装

簡素に説明すると溶剤などで洗い流すこと。上記「ブラスト処理を行い、旧塗膜を除去して再塗装」「剥離剤で剥離して再塗装」の方法よりも塗膜の除去が容易にできる場合が多い。フッ素・シリコーン塗装などで、金属製品の素材の質感を生かすために素材を傷めてはいけない場合、研磨での再塗装ができない塗膜の場合は、こちらの方法を行う。
洗浄ムラや汚れやシミなどにも注意が必要であり、洗浄液の選定も重要になってくる。

上記のように再塗装する場合は素材と塗装膜、品質規格に合わせて再塗装工程を選定し、進めていくことが大切である。
塗装会社にとって再塗装は、不合格品の手直しであり、コストロスになる作業ではある。だが再塗装を行うことで、製品自体の廃棄を削減ができるほか、再塗装の方法や工程を再検討することでコストを減らすこともできる。

今回は再塗装について紹介したが、再塗装に限らず生産効率を考える時には、自分たちの使う塗料の性能や特性を十分に理解したうえで、塗装工程を決定していくことが大切であると考える。

㈱技研…1985 年1 月創業。シリコン加工・テフロン加工・金属およびプラスチック部品の塗装・印刷・組立その他加工全般を手掛ける。
取扱品目は製菓、製パン用天板、住宅関連部品、自動車部品、弱電部品、時計部品、その他関連商品・各種部品。


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