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塗装現場からのメッセージ《第4回》適正膜厚と不具合

本コーナーでは、豊富な経験と実績を誇る茨城県稲敷郡阿見町の塗装専業メーカー、㈱技研・代表取締役 宮本勇気(みやもと ゆうき)氏が、塗装現場におけるさまざまな課題解決のためのヒントを伝授します。

※本記事は「塗装技術」誌に掲載されたものです

㈱技研では、金属部品への焼き付け塗装や、プラスチック部品への装飾の塗装、シリコーン加工やフッ素加工、その他機能性の塗装など、さまざまな塗装を取り扱っている。それらの管理における項目の1 つが、膜厚である。
見た目重視の外観目的塗装はともかく、機能性を目的とした塗装において膜厚は塗膜性能を確保するうえで、重要な要素であり、塗装された製品の価値に大きく関わってくる。

標準膜厚とは

一般的な焼き付け塗装やプラスチックへのウレタン塗装の1 コートでの膜厚は10~20μm 程度を標準とされていることが多い。しかし、シリコーン系の塗装で適正な膜厚が1μm 以下の場合や、特殊な超防錆力を求められるフッ素塗装において300μm 以上の膜厚が要求される場合もある。その際、標準塗膜の設定では、塗料と素材の関係や使用される環境を想定する。
要求される塗膜のスペックは、塗料メーカーが塗料開発時に設計したり、塗装業者側で適正な膜厚を設定する。
塗膜の機能性を十分に引き出すためには、それぞれの塗料の設計に応じた膜厚を確保し塗装していく必要がある。

塗装製品における大事な管理項目 膜厚測定

膜厚が原因による不具合

膜厚は見た目に与える影響は少ないため、外観を要求される塗装において重要視されることはない。ただし、膜厚が厚すぎると、

  • ワレ

  • 付着不良

  • ハジキ

  • 硬化不良

  • 変色

  • 硬度や耐薬品性などの塗膜本来の性能が発揮されない

などの不具合が発生してしまう。
性能を出すために必要以上に厚く塗ることは間違った考えである。また、コスト削減のために薄く塗るなどの手法は、十分な塗膜性能を引き出せない。

適正膜厚での塗装

近年は、塗装する目的もさまざまである。各塗料メーカーからは使用用途や必要なスペック・機能性を考慮した、さまざまな種類の塗料が発売されている。それぞれの塗料には塗料設計者が設定した適正な膜厚があり、塗膜本来の性能は適正な膜厚で塗装することで可能となる。

塗装業者の役割として

近年は特に機能性塗装の分野において、塗膜の性能や役割、品質レベルに対する要求が上がっている。膜厚が性能に直結する場合も多い。
それぞれの塗料に合わせた適正膜厚を提供していくことが塗装業者が果たすべき重要な役割であり、塗装会社として価値や存在意義を示すことができる基準の1 つと考える。
さらに塗装専門業者においては、さまざまな塗料を扱うことで膜厚に関する知識や技術力を高めていき、塗料の性能を十分に引き出せるような、塗膜が主役になれる塗装をすることが必要な役割と考える。

㈱技研…1985 年1 月創業。シリコン加工・テフロン加工・金属およびプラスチック部品の塗装・印刷・組立その他加工全般を手掛ける。
取扱品目は製菓、製パン用天板、住宅関連部品、自動車部品、弱電部品、時計部品、その他関連商品・各種部品。


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