塗装現場からのメッセージ《第3回》「塗装ロボット」か「手吹き塗装」か:塗装効率や品質を考える
当社(㈱技研)では、手作業による吹き付け作業の手吹き塗装と、塗装ロボットを使用したロボット塗装を行っており、塗装品質・数量・製品形状等によりそれぞれ使い分けている。
一般的には塗装ロボットのほうが、生産効率や品質安定性において「手吹きよりも優れている」と思われがちではある。
塗装加工をするにあたり、塗装品質・生産性における手吹き塗装とロボット塗装に対する考え方や、違いについて話していきたい。
本当に塗装ロボットのほうが優れているのか?
塗装ロボットという言葉の響きから、先端技術のイメージや、どんなものでも効率よく塗装ができるイメージを持たれる場合が多くある。
もちろん、工業塗装業界全体で見ると、最新技術が採用されている塗装ロボットは効率も良く、塗装精度や塗着効率などのレベルも高い。
しかし、近年において小ロット多品種対応の体制をとっている当社では、塗装ロボットのほうが必ずしも優れているとは限らないと考える。
塗装ロボットのティーチング
当社では6 軸タイプの塗装ロボットが導入されており、このタイプは関節軸が6 箇所あることで、人の腕のような動きを再現できる。
塗装のプログラムをつくる際には、まず塗装技術者が塗装作業を行う。そしてその作業内容と同じ動きをロボットで再現できるようプログラミングしていく。
手吹き塗装の再現をすることが、ロボットティーチングの基本である。
ロボット塗装する場合の条件とメリット、デメリット
ロボット塗装の条件(優先されるもの)
比較的数量が多いこと
高品質が求められるもの
製品形状、サイズが複雑すぎないこと
塗装条件がロボット塗装に合っているもの
ロボット塗装のメリット
手吹き塗装よりも生産効率が良い
塗装品質の安定
塗装技術者不足の解消など
ロボット塗装のデメリット
全ての形、サイズに万能ではない
繊細な作業や感覚の部分は人が行う必要がある
プログラム管理ティーチングを行う技術者が必要
小ロット多品種に対応するのが難しい
小ロットの場合は設備の都合により、手吹きよりも塗料のロスが多くなる
手吹き塗装のほうが効率の良い場合も…
総合的に見ると、やはりロボットで塗装するほうが安定した品質や、高い生産性を確保することが可能な場合が多い。
しかし、塗装する製品によっては熟練の技術者のほうが塗装作業効率が良い場合があり、塗装条件が繊細すぎてロボットでは対応できない製品などもある。
「塗装ロボットで塗装されたもののほうが一概に高品質というわけではない」というのが、塗装現場からの声である。
当社では、塗装に関する長年の経験やノウハウを生かし、手吹き塗装もロボット塗装も、変わることなく安定した塗装を提供していけるよう、日々技術革新を進めている。
これと同時に、近年の労働人口の減少や人材確保が困難な状況の中、自分たちのような小規模の塗装工場であっても塗装の自動化や無人化は必須項目と捉え、今後は加速していく必要があると考える。