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これから書く話は私の娘が見た「夢」の話であってそうではないのかもしれません・・・。
                  
私の母は、地方で妹夫婦と一緒に暮らしていましたが、事情があり、急遽
私達の家に越してくることになりました。
足が少し悪いだけで体は元気でした。

私の子供は殆ど祖母と会うことが無かったので、子供たちも祖母もお互いに深く関わることはなく、足が悪い為2階に上がることもないため、子供達が2階の自室に入ってしまえば、それこそ何日も顔を合わせないこともありました。

そんな母でしたが、数年経った頃から病院に入退院を繰り返すようになり、医師の努力も虚しく、まもなく母は亡くなりました。
葬儀や色々な手続き等、慌ただしい時があっという間に過ぎていった
ある日のこと、娘がこんなことを言うのです。

「お母さん、あたし、お母さんとお祖母ちゃんの夢を見たの。
何故か二人共私の部屋に居て、お母さんはベットの端に座っていたのだけれど、お祖母ちゃんはクローゼットの一番下の引き出しを開けて、何かを探しているような感じだったんだよね。」

「お母さんに『お祖母ちゃんどうしたの?』と聞いたけれど首を傾げて応えてくれなくて・・・。あたしのクローゼットに何かお祖母ちゃんの物って入っていたっけ?」

何度も言いますが、祖母は足が悪いので2階の娘の部屋に行くなんてことは物理的に有り得ません。

「先ずお祖母ちゃんが2階に来ることはないし、ましてや部屋になんか入室したこともないから何も入っていないと思うけど・・・。」

そう返答したものの、何故か気になってしまい、ある日の午後家族でクローゼットの中を確かめることになりました。

「お母さん、本当に開けるの?なんだか怖いよ!!」
「私も怖いけど、そのままにしてはいけない気がする。」

思い切ってクローゼットの一番下の引き出しを開けたところー。

「わぁ、可愛い!!」

クローゼットの引き出しには、娘の物は一切入っていませんでした。

その代わりに、祖母の手編みであろう、カーティガンと手袋と祖父の形見のネクタイピンが入っていました。

白い色の毛糸でピンクのお花とビーズが付いていて可愛らしいカーティガンと手袋でした。

「これ誰のカーティガン?見たことないよ?」
「お母さんがあたしのクローゼットの引き出しに入れたの?」

「私も見たことないー。」

祖母が多分娘にあまり会ううことが無くても、気がかりで編んでくれたのでしょうか。

家族に尋ねましたが、誰もその品を見たことも引き出しに入れた覚えなどある人物は居ませんでした。
当然、足の悪い母が入れたとは到底思えません・・・。

「これどうしようか?貴方が夢で見たのはお祖母ちゃんが何か言いたいことがあるのかも・・・」

「カーティガン着てみた方が良いのかな?そのままにしておいた方がいいかな?」

その品々をどうしようかと考えた結果、母の眠るお寺の住職の方に相談することになりました。

住職さん曰く、「カーティガンや手袋を身に着けてもいいですが、お寺の方で供養しても良いと思います。」とのこと。

家族全員で相談した結果、ネクタイピンは仏壇に、そしてカーティガンと手袋はお寺の方でご供養して頂くことになりました。

何故2階のクローゼットの引き出しにそれらの物が入っていたのかは、未だに解りません・・・。

でも娘の見た夢は「夢」と言うよりも母からの「遺言」であったのかもしれません。そんな気がしてならないのです。

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