見出し画像

「閉ざされたページ」

雨が降り続く夜、静かな街の一角にある古びたアパートの一室で、探偵の村上は一人、机に向かっていた。薄暗い部屋の中、唯一の明かりは机上のランプだけで、彼の顔を不気味に照らしていた。目の前には一通の手紙があり、その紙は何度も読み返された跡がある。

手紙には、こう書かれていた。

「あなたの知らない秘密が、この街に隠されている。真実を知りたければ、今夜12時に旧図書館へ来い。証拠を見せよう。」

差出人の名前はなく、ただの匿名の手紙だったが、村上の探偵としての勘が騒いでいた。この街で最近起きている連続失踪事件――4人の若い女性が忽然と姿を消し、いまだ手掛かりは皆無。警察も手を焼いている事件だが、何かを感じ取った村上は独自に調査を進めていた。そして、この手紙は彼の推理にさらなる火をつけた。

時計の針が12時を指す頃、村上は静かに旧図書館の前に立っていた。廃墟同然の建物は不気味なほど静まり返り、遠くで雨音が響くだけだった。村上は懐中電灯を取り出し、ゆっくりと図書館の中へ足を踏み入れた。

本棚が乱雑に倒れ、埃が積もった室内はまるで時間が止まったかのようだった。村上は手紙に書かれていた通り、中央の大テーブルに目をやると、そこには黒い封筒が置かれていた。慎重に封を開けると、中には1枚の写真と、さらに一枚の手紙が入っていた。

写真には、失踪した女性たち全員が写っていた。全員が同じ場所――この図書館の前で撮られたもので、手には奇妙な本を持っていた。そして、手紙にはこう書かれていた。

「この本に触れた者は、全て消える。彼女たちはまだどこかにいる。だが、見つけられるかはあなた次第だ。」

村上の背筋に冷たい汗が流れた。消えた女性たちは生きている? そしてその本とは何なのか? 彼は写真に写る場所をもう一度確認し、急いでその場所に向かった。

写真に写っていた棚は、中央から外れた一角にあった。彼はその棚に近づき、乱雑に並べられた本を一冊一冊確認した。古びた本の中に、妙に新しい本が一冊だけ混ざっているのに気づいた。無題で、表紙は真っ黒。村上は慎重にその本を手に取った。

その瞬間、周囲の空気が一変した。部屋全体が揺れ、足元が不安定になるような感覚に襲われた。彼は何かに引き込まれるようにして気を失った。

目を覚ますと、村上は見知らぬ場所にいた。まるで別の世界のように、灰色の空と無限に続く荒野が広がっている。そこには失踪した4人の女性たちが、無表情で立っていた。

彼女たちは一斉に村上を見つめ、無言で近づいてきた。

「ここは……」村上が声を出すと、女性の一人が静かに答えた。

「私たちは本の中に閉じ込められた。この世界から出る方法を、探して。」

村上は愕然とした。この本はただの物語ではない。読む者を引き込み、抜け出せなくする罠だ。

どうすればこの異世界から脱出できるのか――村上は頭をフル回転させ、彼女たちを救い出す方法を模索し始めた。

この物語の結末は、彼の探偵としての能力にかかっていた。

いいなと思ったら応援しよう!