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【中国駐在サバイバル】本社と現地の連係…共通の敵に立ち向かえ! 【前編 現地側の注意点】

中国拠点で問題が起きた際、最前線の駐在員に対して日本側が後方の砦になってくれるケースと、相互不信が募って後ろから弾が飛んでくるケースがあります。

お互い会社のためにと思っているだけに、内輪で気力や体力を削り合い、目の前の敵にいいようにやられてしまったりするのは、本当に残念でなりません。

本社と現地の連係では、私自身、成功例と失敗例、どちらも遭遇してきました。苦い経験も数々あります。くやしい思いをした回数だけ、どうすれば不幸な状態を回避できるかという引き出しも増えました。

今回は、現地の駐在員と本社が協力して共通の敵と戦うためのコツ・心得を紹介します。

このnoteは、毎週水曜に配信するYouTube動画のテキストバージョンです。
記事の末尾に動画リンクがあります。


本社と現地の連係が戦いの行方を左右する

今回は、中国拠点と日本本社の両方に読んでほしい内容です。

これまで私たちは中国現地でさまざまな課題と戦ってきました。「日系企業の野戦病院」と呼ばれているほどです。

戦いの中で気づいたことがあります。本社と現地の絆が強固で、揺るがない信頼関係がある場合には、ものすごく難しい案件でもまず失敗しません。一方、連係が悪い場合は、私も苦汁を飲まされた経験がいくつかあります。

本社と現地の関係性が失敗の最大の原因とまでは言いませんが、経験上、成否を分けるくらい強い要素です。

どういう行動が連係を壊すのか、本社と現地に分けて挙げていきます。まずは現地側が気をつけることから。

連係が壊れる行動…現地側が気をつけること

本社を批判・非難する

現地が本社を非難・批判していると、仮に内容が的を射ていても、本社側の人たちはいい気がしません。そんな状態が続けば、本社は現地側を積極的に支持しなくなります。

これでは、現地で陣頭指揮を執っている駐在員(リーダー)が苦境に陥ったり、本社を巻き込んだ改革や挑戦が必要になったりしても、本社は手を差し伸べません。むしろ「これまで散々あるべき姿をぶち上げてきたんだし、自分でやってみせたら」と冷ややかな態度を取ります。

合弁相手と険悪になる

合弁会社の場合、合弁相手と険悪になってしまうと本社は困ります。合弁パートナーとの関係がガチャガチャするのは経営にとって大問題。

日本側を代表する現地駐在員が合弁相手側と鋭く対立すると、中国側にも面子や感情があるので、本来なら同意したであろうことでも、いちいち反対に回る。経営がスムーズに進まなくなります。

合弁相手との関係がよくないのに本社が日本側の駐在員や現地幹部を立てると、現地はまるで代理戦争のような状態に。かといって、本社が合弁相手ばかり立てると現地駐在員の立場が難しくなる。

日本側としては「もう少し大局的に考えて大人の振る舞いをしろよ」と言いたくなります。

現地社員たちと険悪になる

同じことは駐在員と現地社員の間でもあります。駐在員と現地のベテラン社員の折り合いが悪く、やたらバチバチやり合っている。冷戦状態(またはホットウォー)で収拾がつかなくなると、本社も放置しておけなくなります。

でも、現地社員の側に問題があるのか、駐在員の側に問題があるのか、両方なのか、はたまた日本側を丸ごと敵視しているのか、本社にはなかなか見えてこない。

例えば、長年会社に貢献してきた現地幹部がいる。今回赴任した駐在員がこの幹部とうまくいかず、日本側に強硬策を提起してきた。日本側から見ると駐在員サイドが冷静さ・公平さを欠いた見方をしているようにも感じる。こうなると、なかなか強硬策を支持することはできません。

一方、駐在員は「なぜ本社は理解・支持しないのか」と不満を募らせていく。それを見て本社はさらに「彼/彼女はムキになっているんじゃないか。もう少し冷静にマネジメントしてくれないと困る」と懸念を深める。

本当に改革や大ナタが必要な状況だったとしても、こんな相互不信の状態では本社と現地の共通の課題・敵に立ち向かうことは困難です。

「現地社員は味方、本社は敵」という態度

特に駐在歴が長い駐在員は、現地社員たちの前で、わざと「現地は味方、本社は敵だ」という態度を取ることがあります。

これはマネジメントのテクニックとしては有効です。内部をまとめるには「敵は外に作れ」が鉄則。上手に本社を悪者にして、「本社がうるさくて困ったもんだよ。しょうがないからチャッチャとやろうぜ」と促すわけです。

しかし、本社の前でも敵意を見せてしまう人たちがいます。これでは駐在員の反乱になってしまいます。

駐在員が「敵は本社にあり!」などと言い出したら、本社としても看過することはできない。そして発言者が討ち取られてしまえば、現地社員と本社の関係修復も非常に難しくなります。経営管理上、いいことは全然ないです。

人間には感情がある

最前線で戦う駐在員の「本社に現地の現実を見てほしい」という思いは、私もよ〜くわかります。だからと言って、本社側の人たちの感情を逆撫でするようなやり方や態度は控えた方が賢明です。

敵を作るなとは言いませんが、敵を増やしていいことはない。そうでなくとも現地には立ち向かわなければならない相手が社内外問わず大勢います。必要以上に敵を増やして、あちこちから恨まれていては、何事もうまくいきません。

現地は戦場です。本気で陣頭指揮を執っている駐在員は気が立つこともあるでしょう。ただ、カーッと頭に血が上ることがあっても、そこは自分の感情を抑える必要があります。

現地側の心得3か条

ここまでを踏まえて、現地側の心得を3か条にまとめました。

  • 現地社員も本社も味方に

  • 敵を増やさない

  • 共通の利益を前面に

まずは現地も本社も味方につけるように工夫・努力をする。必要なときは焦点を絞って対決し、不用意に敵を増やさない。そして、現地法人の発展は現地社員と本社側の共通の利益であることに焦点を当て、「みんなで共通の課題を解決しよう!」という方向に持っていきます。

このあたりの工夫は、現地側に頑張ってほしいところです。

この話、次回に続きます。待てない方は動画でどうぞ。

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