トップだけじゃなくサブも重要!二番手の駐在員の動き方【中国駐在サバイバル】
先日、ある総経理(中国拠点の経営者)と「トップだけじゃなくサブが重要だよね」という話になりました。私もすごく同感です。今回はサブ的なポジションで赴任する中国駐在員の振る舞い方について考えてみます。
二番手の動き方
二番手のやりやすさとやりにくさ
今回は中国拠点の二番手(例えば副総経理、工場長、統括部長など、総経理や現地統括の下で働く人)を想定していますが、これは中国に限った話ではありません。日本でも他国でもほぼ同じように考えられるのではないかと思います。
サブは最終的な権限を持たないため、自分のみで決断して進めることはできず、上司にお伺いを立てなければいけない場面が出てきます。その一方で、最終責任を負わない分、動きやすい立場であるとも言えます。
つまり、サブにはサブなりのやりやすさとやりにくさがある。そこを踏まえて、やりやすいところで動くのが重要だと思います。
では、具体的な動き方を見ていきます。
動き方① トップとセットで調整する
冒頭に出てきた現地総経理と話した際、このことが議題になりました。総経理と副総経理の両方からお話を伺ったのですが、お二人とも「トップとサブはセットで考えていかなければいけない」と強調されていて、非常に印象に残りました。
どんな組み合わせだとうまくいくでしょうか。
Top 強→No.2 柔
強気でパワフルなトップの場合、サブも同じく強気なタイプだと、社内で受けに回れる人がいなくなってしまいます。トップが当たりの強いタイプであれば、サブはソフトな感じの方がバランスが取れます。
Top 静→No.2 動
トップが物静かなタイプなら、サブはアクティブで賑やかな人の方が、両者ともおとなしいタイプより組織に活気が出ます。
Top 粗→No.2 細
ざっくりしたトップの下では、サブは細かく締めていく役割を担います。トップがいい加減な書類に「オッケー♪」とハンコを押しそうな時は、二番手が「いやいやいや、ちょっと待て、これ何?」と部下にツッコむ。二人とも雑ではまずいです。
Top 攻→No.2 守
トップが攻撃型である場合、サブは守りを固めるのが望ましいです。チームが攻め一辺倒になってしまうと危ないですからね。
Top Leadership→No.2 Manegement
リーダーシップを発揮するトップなら、サブはマネジメントで支えます(リーダーシップとマネジメントの違いについてはYouTubeで話していますので、よかったらご覧ください)
Top Hot→No.2 Cool
トップが熱い人の場合、サブはややクールな方がバランスが取れます。
Top 寛→No.2 厳
個人的には、トップが寛容でサブが厳格な方が、組織はうまく機能するのではないかと思います。現に日本の有名企業の創業者にはこの組み合わせが多いです。厳しいトップがビシッと締めてしまったら、二番手以下が組織のムードを柔らげようとしてもなかなか難しい。サブがゴリゴリやっているのを見てトップが「まあまあ」となだめる感じの方が、一般的にチームはうまくいきます。
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ここまでトップとサブの役割分担を7パターン挙げましたが、どれも絶対ではありません。サブの役割は固定ではなく、トップの性格やスタイルに応じて変わるものです。
その逆も然り。すでに現地にサブがいて、トップが後から赴任するなら、サブのタイプに応じてトップが役割を調整するのも手です。
いずれにせよ、トップとサブはセットで考えること。二人が役割分担してバランスを取る方が、同じタイプが二人いるより組織はうまく回ります。
動き方② トップを演出する
トップの現地での見られ方を演出することは、サブの重要な仕事です。
甘い→人情派
トップが社員から「総経理は甘いなぁ」と言われている場合、「甘い」という表現は仕事人としてネガティブな印象になるので、サブは「ウチのボスは情に厚いんだ」とイメージを修正しておきます。
雑→大らか
雑だという評判が立ちそうなトップであれば、サブは「大らか」と置き換えて、社内世論をそちらへ導くことでトップのポジティブな面に光を当てます。
弱→優
トップが弱腰・弱気に見えてしまいそうな時には、それを「優しさ」と捉え直します。部下に厳しく接するような時、サブは「総経理に言われてるから、ここまでにしておいてやる」という対応ができます。総経理の温情で放免されたという形にすることで、トップを弱腰ではなく優しいキャラとして際立たせます。
鬼→仏
トップが「鬼のように厳しい」というイメージで通っている時には、「実は」という形で別の一面を見せます。「社員の前ではニコリともしないけど、実は裏でこんな風に現地のフォローをしていてね」といった話をすることで、仏の部分もあると演出します。
仏→鬼
逆も同様です。「総経理は本当に優しいけど、副総経理はうるさいんだよな〜」という感じになっているなら、時には厳しさが垣間見える場面を作ります。余談ですが、京セラの稲盛さんがまさにこのタイプだったそうです。普段は仏様みたいなのに、内に鬼のような苛烈さを秘めている。幹部に対する時や、ここは絶対に譲れないという場面では容赦なく厳しい態度を取り、組織全体を引き締めていました。
完璧→抜け
完璧主義的な傾向があるトップの場合、現地社員に「総経理は細かすぎる」とウンザリされることも。時々はちょっと抜けている面を見せて、おちゃめなところもあるという印象を与えると効果的です。サブからホンワカエピソードを小出しにして中和します。
厳→甘
「めっちゃ厳しい」「怖い」と恐れられているトップなら、例えば「猫にはメロメロ」とか、「実は甘党でパフェが好き」とか、柔らかな一面を出してギャップを見せていきます。
動き方③ トップを活用する
トップの肩書を効果的に活用することも重要です。サブとトップでは周りの受け止め方が違います。次のような場面では、トップを引っ張り出して周囲の心をつかむといいと思います。
社内に釘を刺す
ここは締めるべきという場面では、サブよりトップがガツンと言う方が重いです。総経理や社長に話をして、トップから釘を刺してもらうとより効きます。
社内を鼓舞する
社内が意気消沈している時も、やっぱりサブよりトップです。朝礼などで「危機は危険と機会のセット。チャンスと捉えて頑張っていこう!」みたいに盛り上げてもらうよう依頼し、みんなを鼓舞します。
政府への挨拶
トップが自分で挨拶に来たとなると、役所も面子が立ちます。普段はサブが対応しても、必要なタイミングではトップを連れて行くと効果大です。
サブがやってはいけないこと
サブとしてやってはいけないこともあります。
トップをディスる
他の社員たちの前でトップを貶めてはダメです。
トップにかみつく
議論するのはいいことですが、「それ、おかしいんじゃないですか?!」みたいにトップにかみついているところを社員に見せてはいけません。
トップを孤立させる
部下たちとつるんで、「今度の総経理はやりにくいよね」という空気を作り、トップを孤立させるサブがいます。これは組織を乱します。
トップと派閥争い
自分の派閥を作り、トップ派かサブ派か、などとやっているサブは現地社員に呆れられます。
トップに無条件服従
イエスマンのサブと、イエスマンを作ってしまうトップは、結局両方とも軽んじられます。無条件にトップに従うのもよくないです。
トップのせいにする
「自分は悪くない」とトップに責任を押しつけるのは、トップを活用することとは違います。活用はトップを使って全体の利益のために動くこと。自己保身のためにトップを踏み台にすることではありません。
トップをダシにする
トップをダシにして自分が手柄を上げる、自分に光を当てようとするのは、サブの役割を理解していない行為です。
サブだけが輝く組織はない
ここまで見てきた通り、サブの役目はトップを主役として機能させること。組織全体をうまく回すカギはトップです。トップが機能していないのにサブだけが機能することはありません。
トップが頼りない、または厳しすぎると感じる場面であっても、サブは補佐役に徹してトップを立て、時には自分が踏み台になったり潰れ役になったりしてトップを演出し、組織の中でトップがしっかり機能するように持っていくことが必要です。
そうして初めて、サブ自身も活かされて仕事がしやすくなり、全体の業績アップにつながります。
反対に、トップを踏みつけにして自分が輝こうとする人はサブ失格です。いくら優秀でも、サブがトップを差し置いて目立っていると、周りからは「あの人は狭量だな、小物だな」と見られます。サブだけが評価されたりはしません。
「そうは言っても、裏に回ってばかりではトップの評価が上がるだけで、サブには光が当たらないんじゃ…」と不安になるかもしれませんが、大丈夫。見ている人は見ているし、サブの献身は誰よりトップが知っています。
今日のひと言
トップを立てるのがサブの花
今日はサブの役目はトップを機能させることという話をしました。この立場を経験しておくと、自分がトップになった時に非常に役立ちます。トップの役割をよくわかっていなければ、サブはうまく動けないからです。
サブの時代にトップとしての振る舞い方をきっちり学び、自分がトップになった時は、サブのキャラクターや動きを見極めながら役割を上手に分担し、今度はトップとしての役割を果たしていきましょう。