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中国人社員は全員キョトン 日本人にしか通用しない仕事観8選

相撲で「なぜ寝技を使わないんだ!」「奥襟を取れ!」と言ってもキョトンとされますよね。自分が結果を出してきた世界で効果を上げた知識や経験が、異なる世界でも通用するとは限りません。中国に赴任してから「自分の仕事観や流儀が中国人社員に響かない!」と怒ったり嘆いたりしている駐在員に向けてお送りします。

このnoteは、毎週水曜に配信するYouTube動画のテキストバージョンです。
記事の末尾に動画リンクがあります。


押しつけは相互不信の火種

中国に限らず海外赴任で気をつけたいのは、日本ではごく当たり前だと感じてきたことが、違う文化圏では当たり前ではないことです。

日本と現地に「違いがある」のは当然。日本から来たから、ウチは日系企業だから、自分は日本人だから、といって、違いを理解しようとせずに日本の当たり前を押しつけると相互不信の火種になります。

「アイツは中国(現地)のことがわかってない」「現地社員を見てない」「結局、自分中心やないか」と思われたら、現地社員は動いてくれません。

とりわけ赴任直後の3か月〜半年間に自分の常識を押しつけすぎると、相手は動かないだけでなく、不信感・反感を抱きます。「今度来た駐在員はダメだ」と思われてしまえば、その後の仕事にも影響します。

今回は「中国では響かない流儀と仕事観」の典型を紹介します。赴任してしばらくの間は特に気をつけてくださいね。

中国では響かない流儀・仕事観8選

① 仏の顔も三度まで

日本ではよく言いますよね。二度三度までは忍耐力を発揮して見守るけれど、それを過ぎるとドカーンと爆発する。日本人に多いパターンです。

例えば、ちょこちょこ遅刻を繰り返している社員に対し、ずっと何も言わずにいて、5、6回目あたりで「お前、いい加減にしろ!」と雷を落とす。毎回「ドカーン!」ではなく、我慢に我慢を重ねた末、改善が見られないと爆発する傾向があります。

これ、現地では「はて?」です。なんでそこまで我慢するのか、上司なんだし、言いたいことがあるなら言えばよかったじゃない、と思われます。

駐在員が我慢して溜め込んでいる間、相手には何も伝わっていません。「やばいかも」「そろそろ爆発するぞ」といった目盛りの変化が読めない現地社員には、静かな状態から突然爆発したように見える。人格が豹変したみたいに映って「今度来た人、ちょっと極端だよね」と引かれてしまいます。毎回爆発までする必要はありませんが、ずっと我慢するぐらいだったら、その都度言った方がいいです。

② よく検討する

「よく検討してから」というのも日本人のやり方です(私は、これは日本がずっと村社会で米作りをしてきたことと関係があるのではないかと思っています)。

何事にも簡単には飛びつかず、しっかり熟考して、さまざまな可能性・リスクを織り込み、その上で決断していく。「この新規事業はまだFS(実行可能性調査)が不十分だ」と差し戻したり、「もっとよく検討してリスクを洗い出してから進めるように」とブレーキをかけたり、PDCAのPの段階で止めようとするやり方は日本では普通です。

これを現地社員がどう思っているかというと、「そんなことをやっている間に、どんどんライバルが先行しちゃうよ」。慎重に検討している間の機会損失の方がかえって高リスクなんだけどと思われています。実際、着想したのは自分たちが先だったのに、あっという間に市場ができあがってしまい、参入前に過当競争から淘汰フェーズに入ってしまうようなこともあります。

③ 「残業してでも」という責任感

中国人社員に対して「国の違いなのかもしれないけど、責任感が薄い」と思う日本人が多いようです。

お酒の席では、駐在員が苦笑交じりに「いやー、みんな定時でスパーンと帰るよね。自分がオフィスに残っていると何人かは残ることもなくはないけど、基本的にはみんな気持ちよく定時で帰ってるわ」とこぼしています。その裏には、本当はまだやるべき仕事が終わっていないのにという不満が潜んでいます。

一方、現地社員は「明日でもいい仕事だったら、無駄な残業はしない方が合理的。会社だって残業代が割増になるんだから、みんな無理して残業しないで帰ればいいじゃない」と思っています。

④ 神は細部に宿る

これは私も好きで、よく使う言葉です。「フォントがバラバラ」「テンプレートの罫線の太さが違う」「ここは端で揃えて」という話を現地社員にそのままぶつけると、「差不多でええやん、日本人は細かすぎる」と感じていたりします。

「差不多」とは「だいたいオッケー」。内容が確認できればいいのに、なぜ誰も見ない細かいところまでこだわるのか。会議が終わったらもう使わない資料なんか「差不多」でいい。細部に労力をかけるのは非合理的と思っています。

⑤ 独断専行よりみんなの知恵

チームで仕事をしているんだから、みんなの意見を取り入れよう。みんなで議論して腹落ちしてから取り組もう。日本では自然な話です。上司に「それは自分たちで決めなさい」「私に判断できることとできないことがある。やはり会議で検討しよう」と言われても違和感ないですよね。

むしろ「ボールは全部私に回せ、私が決める」タイプのリーダーは、独断専行だ、独善だ、周りの話を聞かないと批判・非難されがちです。

しかし、中国のような社会では、決めない上司は存在する意味がない。そんな上司がいたら「コイツはボスに値しない」と見切られたり、「じゃ自分たちで勝手にやりますわ」と判断されたりする。日本人としては「そういうわけじゃない」と言いたいところですが、決めない上司が中国で尊敬されることはありません。

⑥ 結果よりプロセス

私も社内でよく言います。結果オーライではダメ。たまたま今回は問題が出なかったけれど、プロセスにはいろいろ反省点がある。運がよかっただけなことも相当あった。次回も同じように運が転んでくれるかわからないんだから、確実に反省しておかないといけないぞ……。

中国でこういうことを正面から言うと、「商売は結果がすべて。利益を出すために商売していて、利益が出た。よかったじゃないか。なんでそこで反省?」と思われます。

これは職人気質と商人気質の違いに起因するもの。結果よりもプロセスだと言うだけでは共感してもらえません。「やれやれ、また日本人のプロセス好きが出たぞ」とうんざりされたりします。

⑦ 厳罰主義はウチに合わない

日本企業に厳罰主義は合わない」と言う日本人は多いです。問題社員の行為が明らかに度を越していて、辞めさせないと他に示しがつかないという状況で、私が「これはもう解雇一択。裁判になっても毅然と対処するべきです」と切り出すと、「ウチは日系企業だし、社風もあるし、裁判とか解雇とかはちょっと。もう少し円満に……」と渋られます。

そんな上層部をまじめな社員たちがどう見ているか。「あんな問題社員をまだ野放しにしておくわけ? なぜ解雇や裁判をそこまで嫌がるのか理解できない」。もう少し言ってしまうと、会社は弱腰、事なかれ主義だと呆れています。

⑧ 急がば回れ

努力をしっかり積み重ねて、自分のレベルを着実に上げていけば、必ずいずれ報われる。特に若いうちは、急いで結果やリターンを求めず、じっくり自分の力を高めていくように、と日本ではよく言われます。私も言います。

が、これをそのまま現地社員に求めても、「どうしていま報いてくれないんですか?」と感じている。いずれ報われるって、そんな保障ないやんと思っていたりします。

駐在員の場合は尚更です。「どうせ帰任するんだから、自分が報われるべき頃にはもういないでしょ」とか「この会社だっていつまで存在するかわからないのに、5年後、10年後、20年後の話をされてもね」と思っています。

特にまだ親近感も信頼感も醸成できていない赴任半年未満の間にこんなことを言ったって逆効果。現地社員たちに「そんな何の保証もない表面だけの口約束を、我々が真に受けると本気で思っているのか? コイツはそこまで脳天気なのか?」と思われ、上滑りしておしまいです。

じゃあ、どうしろと?

本質と合理性を追求する

ここまで挙げてきた流儀の数々は、中国人社員に響かなくても、日本人から見ると大事なこと。だから、「郷に入りては郷に従え」だとか「中国なんだから中国流に合わせましょう」と言うつもりはありません。

日本流を押しつけても意味がない、あるいはむしろ逆効果という現実に直面したときにどうするか。やはり現地の現実を見据えた上で、本質と合理性を追求することだと思います。

思考停止して当然・当たり前・常識だと押しつけるのではなく、その場で、本質はどうなのか、この局面において合理性を追求したら何を選ぶことになるのかを考えます。

「これは当社の核心的価値に関わること。中国人に響かなくても日本流の考え方・やり方の意義や必要性を徹底しなければならない」ということはあります。逆に中国の社会通念や人を動かすために必要なことを考えると、中国流の方がいいこともあります。

本質や合理性の追求という観点から説明・啓蒙・議論していけば、優秀な社員から順に理解していきます。

日本流と現地流はいいとこ取りできる!

そして、日本流と現地流の融合、いいとこ取りだという局面もあると思います。

上に挙げた中では、①の「仏の顔も三度まで」。我慢して我慢して爆発はよくないけど、瞬間湯沸かし器のように毎回ブチ切れればいいものでもない。

間を取るには、二度は是正機会と考えればいい。1回目は教育、2回目は注意喚起または最終通告として、毎回明確にフィードバックする。それでもダメだったら3回目にドカーン。

本人も周囲も、段階を踏んでダメ出しがあり、是正するチャンスもあったけれど、それらを踏み越えたからアウトになったと理解できます。ある程度は猶予や挽回の機会を与える日本流と、いきなりアウトの過酷な現地流は、どちらかよりも組み合わせるといいと思います。

②の「よく検討して」については、不用意に手を出して損失を招くリスクもありますし、慎重すぎて行動を起こせず機会損失を招く・周回遅れで落伍するリスクもあります。

だったら、コケても大丈夫な程度でお試しはどうでしょう。勇猛果敢にチャレンジするか、冷静慎重に検討するか、という全振りのGOかNOかではなく、その中間。見極めるためにスモールスタートですぐやってみる。うまくいかなくても、勉強代・学習機会とすればOK。ここも折衷の余地があると思います。

それから③「残業」の問題。残業してでも仕事を完遂するという責任感はほしい、これは私も同感です。しかし、残業すればいいのか、または早く帰る人は不熱心・無責任なのかというと、これも何か違いますよね。無意識にそう見てしまっている人がいたら、海外駐在を契機に改めちゃいましょう。

私が社内で用いているのは業務完遂主義です。労働時間は長ければいいというものでも、短ければいいというものでもない。それぞれの社員に任せている仕事、あるいはお客様から頼まれて受けている仕事があるわけですから、その仕事が終わったかどうかで判断します。

大きなプロジェクトが終わったばかりのメンバーであれば、次の週ぐらいはペースをゆるめてもいい。私も「早く帰れ」と言ってます。

逆に、仕事が終わってないのに早く帰ろうとするメンバーには突っ込みを入れます。「あの仕事、お客さんから言われて3日も経っているよね。持って帰ってもいいけど、今日中に必ずお客さんに報告して。デッドラインは今晩24時まで」と線を引いたりもします。

こういう場合は、残業してオフィスでやるもよし、チームで話し合って誰かが持ち帰ってやるもよし、あるいはリモートで一緒にやるもよし、形は問いません。しかし、終わらせるべきなのに終わっていない業務があったら、週末だろうが平日の夜だろうが私は突っ込みます。

「週末でも夜中でも突っ込むって、プライベートタイムにそこまでやるのか」という声が聞こえてきそうですが、私はやります。なぜなら、その事態に至ったのは本人の責任だからです。

もちろん、調整の余地があるなら来週に回してもいい。お客さんと相談して「来週でいいよ」と言ってもらえたなら何が何でも前詰めでやる必要はない。私だって、納期遅れの仕事じゃなければ、夜中や週末に突っ込んだりしません。

要は合理性と本質がどこにあるのか、状況ごとに判断していくことです。

今日のひと言

お互いの当然が違う前提で本質追求

日本と中国、お互いの当たり前は違います。相当違います。違うということを前提にした上で、「ここは日系企業だから」「今までこうしてきたから」と押し切らず、逆に「中国だから中国流で」と押し込まれもせず、状況を踏まえて本質を追求することが大切です。

自社にとって、この状況において、合理性を追求するとはどういうことなのか、深く考えて自分で判断したのなら、その基準を現地社員に伝えるべきです。

例えば残業なら「お客さんと今週内にって約束したのに、まだ終わってないよね。プロとして約束したら終わらせる。もう木曜の夜だから段取りは任せるけれど、明日の24時までには送ってね」と伝えます。

日本流も現地流もなく、今の状況でやるべきことをベースに議論していけば、お互いの流儀をぶつけ合ってどちらを通すかという話ではなくなります。本質・合理性という観点から、自社やチームにおいて、この局面・状況において、どうするべきかを判断してもらえたらと思います。

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