【中国駐在サバイバル】本社と現地の連係…共通の敵に立ち向かえ! 【後編 日本側の注意点】
前編に続き、中国拠点で問題が起きた際、現地と本社が協力して共通の敵と戦うためのコツ・心得を紹介します。前編は現地側が気をつけることでした。後編は日本側が気をつけることです。
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連係が壊れる行動…日本側が気をつけること
裏を取らずに駐在員を疑う
現地社員や合弁パートナーが直接、本社に何か言ってくることがあります。
「駐在員の○○が問題を起こしている」
「こんな悪いことをしている」
「現地の私たちはみんな困っています」
このような告発があったら、まず本社がすべきことは事実確認と調査のはず。ところが、確かめもせずに駐在員を疑う本社は少なくないです。
告発を受けた本社からの依頼で、私たちが客観的な第三者として調査に入ると、結果は告発の通りということもあれば、根も葉もないこともあります。
本社が身内である駐在員を一方的に擁護し、現地の声を無視するのはダメ。でも、現地の言うことを鵜呑みにするのも同様にマズい。駐在員にとって極めてアンフェアであり、最前線で体を張って仕事できなくなります。
少なくとも事実確認はすべきです。
問答無用で駐在員を処罰
「疑う」を飛び越えて、問答無用で駐在員を処罰する本社もあります。弁明の機会も与えられずに強制帰任になったり、左遷・降格されたり。
これは第三者の私から見て言語道断。駐在員の未来を潰してしまうだけでなく、現地に間違ったメッセージを送ることにもなります。
告発した側の立場で考えてみてください。目障りな駐在員がいたので、合弁相手や社内で結託してあることないこと並べ立て、ダメ元で本社に言いつけたら、あっさり帰任させてくれた。これは成功体験以外の何物でもないです。
いちど味を占めた現地社員たちは、「何かあったら同じ手で追い落とせばいい」と学習します。結局、損なわれるのは本社の利益です。
駐在員に秘密で話を進める
これも重要な点です。本人の不正疑惑、駐在人事など、駐在員自身が当事者であるために内密にしなければならない案件はあると思います。が、そういう話じゃないのに、「情報が漏れるといけないから」程度の理由で駐在員を蚊帳の外にして話を進めていないでしょうか。
すると、いざ案件を伝えたとき、本社側にとって非常にまずい事態に陥ります。
中国拠点の課題を解決するために本社が最も協力してもらわなければいけない相手は間違いなく現地駐在員。その駐在員が、自身の管理する拠点の大事な話を聞かされていなかったとなれば、そりゃやる気も失います。別のルートから薄々勘づいて、本社に不信感を抱いていたり、反発したりすることもあります。
特に撤退や人員削減といった重い課題では、実情をいちばん把握している駐在員抜きに話を進めると、現実からずれる、現地の法的リスクや労務管理リスクを見誤るといったことが起きがちです。
駐在員の持つ一次情報の価値を軽んじたせいで本質を見失い、そのために現地は大混乱。しかも尻拭いをするのは現地にいる側だなんて、ひどい話ですよね。
本社の都合を押しつける
本社は立場が強いので、わざとでなくても、現地の状況に全然配慮せず本社の都合を押しつけていると思われがち。これを放置すると現地は疲弊していきます。駐在員も現地社員もです。
本社から押しつけられるアレコレで本来の業務に専念できない。
便利使いや社内政治のためとしか思えない雑務が多すぎる。
本社が本当に現地拠点を発展させたいと思っているのか、それさえ疑わしくなってきた。
……こんなことを内心思っていては、力も湧きません。
最前線の風圧・負荷を忘れがち
戦いの最前線は現地。陣頭指揮を執っている人がいちばん大変です。役所、客先、取引先、社内など四方八方から弾が飛んでくる、本社からもいろいろ言われる、合弁なら合弁パートナーにもかなり気を使います。
遠い本社にいると、すべての風圧・負荷が一身に集まる大変さを忘れがちです。深く考えずに「現地は気楽でいいよな」「現地にいるのに何やってんだ」というような心ないことを言えてしまう。こうした言動は現地の士気を確実に削ぎます。
「本社様」になってませんか
本社が肝に銘じておかなければならないのは、プロフィットセンターはどこかということです。本社なのか、それとも現地なのか。仮に現地がいま利益を出せていないなら、上から厳しい言葉を投げつければ利益が出るのか。「本社様」という態度で向き合っていては、現地の心は離れていきます。
現地側の人は全員、いちどは「事件は会議室で起きてるんじゃない」(古いネタで恐縮です)と思ったことがあるはずです。本社は現地の実情を理解していますか。現地に足を運んでますか。シビアな状況になったら陣中見舞いに行ってますか。
そうしたことを何もせず、エアコンの効いた会議室からオンラインで言いたいことだけ言ってませんか。
最近あまり聞かなくなった「OKY(お前が・来て・やれ)」。この気持ちも現地側はみんな持っています。これは中国だけでなく他の国でも同じです。
「現地はこうするべきだ」「何でこんなことができないんだ」と駐在員に言いたくなったら、自分が明日から逆の立場になったらできるのか、冷静に考えてみてください。
「自分ならできる」「いつでも行く準備ができている」、こう言い切れる人なら、多少強い言葉で現地を叱咤激励しても問題ないと思います。
日本から出る気がない人、「それは現地の仕事だろう」と反論してしまう人に、「べき論」を現地に押しつける資格はありません。
日本側の心得3か条
ここまでを踏まえて、現地との連係を保つための日本側の心得をまとめます。
身内に対して辛辣すぎないこと
北風より太陽のアプローチ
現地の損は本社の損
身内に甘いのもよくないですが、辛く当たりすぎるのもダメ。現地側は本社のために最前線で体を張っています。辛口すぎてはいけません。
現地へのアプローチは北風より太陽。厳しく鍛えるより、働きやすい環境づくりや、援護射撃・応援の方が、現地はやる気になります。
現地がゴタゴタすると、最終的に損をするのは本社。現地拠点はグループ全体の業績のために動いています。彼らにいい仕事をしてもらうにはどうすればいいのか、より力を発揮してもらうために本社は何ができるのか。日本側は、常にこの観点に立脚すべきです。
今日のひと言
外部に山積する敵・難題を可視化しよう
いま中国のビジネス環境は厳しい状況にあります。「本社と現地駐在員」という関係の外側にも、さまざまな課題・難題が山積みです。内輪で無駄なエネルギーを消耗している余裕は、現在の現地法人にはないと思います。
内より外に目を向け、しょうもない社内政治をやっている場合ではないと気づけば、本社と現地は黙っていても連係が取れるはず。お互いに揚げ足を取ったりマウントを取ったりするのはやめて、まずは自分たちの外にある敵・難題を可視化しませんか。