最後の焼酎
断酒20年のヨウスケです。
思い立って断酒宣言をするも、あえなく1ヶ月ほどで失敗。
「断酒会に出なくても断酒はできる」
と、大口を叩いたのもあって断酒会には顔を出しづらく、相変わらず日雇い派遣の現場に出て日銭を稼いでは飲むという毎日。
時々、数少なくなった飲み友達が外で飲ませてくれていました。
記憶を無くすことがほとんどで、次の日に、夕べ何かやらかしていないかと妄想に近い不安にかられ、アルコールを口にするととりあえず落ち着きます。
大酒を飲んで家でひっくり返っている日も増え、1週間何をしていたのか全く思い出せず、
「廃人みたいなもんやな…もう、俺も終わりや」
と、思わず出てくるのはそんな言葉。
1年ほどそんな生活が続いた夏、飲み友達から引越しをするから手伝ってくれと頼まれました。お礼は焼肉とビールという我々の中ではお決まりのパターンでした。
一人暮らしの引越しなので大して荷物もなく、軽トラックで3往復くらいで荷物の運搬も終わり、昼過ぎには早々と焼肉五○での引っ越し祝いが始まります。
メンバーは以前の会社の同僚達。私はせっかくの焼肉に手をつけることも無く延々とビールを飲みます。
当たり前のように飲み足らず引越し先のアパートで二次会です。ビールや焼酎を買い込んでのエンドレスの飲み会。その後は全く記憶がありません。
そのまま酔いつぶれて寝てしまいました。
次の朝、友達から
「もう、来ないでくれ」
と、今までに無かった冷たい一言。
聞けば酔って壁をガンガン蹴りまくっていたらしく、彼が言うには引越ししてその日の夜に暴れられたのでは、隣人に会わす顔も無いし、俺も不安で仕方がない…。
記憶が無いとはいえ、言われてみればその通り。持って帰れと言われた焼酎の残った瓶を手に、家までトボトボ自転車で帰ります。
唯一こんな俺を理解してくれていたと思っていた友達からも見捨てられたような気持ちになり、さすがに落ち込みました。
暑い日でした。帰ったのは朝の10時くらい。帰りに安いチューハイを3本くらい買って部屋で飲み始めます。
友達からのあの一言「もう来ないでくれ」が頭の中にエンドレス再生しています。
寂しいやら情けないやらで、飲んでも飲んでも気分は落ち込んだままです。
彼とは20年を越える付き合いであったが、こんな言われ方は初めてでした。
とうとう最後に残った友達まで失った気がする。
持って帰れと言われた焼酎の瓶が目の前にあります。
「これをやるからもう二度と来るな」
と言われているような気がして、それでも、その焼酎に手が伸びる自分が本当に情けない…。
二日酔いというより飲みっぱなしなのもあり、アルコールの回りも早く、全部空けたところで飲み潰れて寝たようです。
次の日、猛烈な暑さで目が覚めました。同時にアルコールが切れる地獄の苦しさが待っていました。
脱水症状も起こしてますが、身体が欲しがっているのは水ではなくアルコール…。
とりあえず台所まで下りて水を飲みますが、すぐに吐いてしまいます。
「いかん、アルコールを補充しないと頭も身体も動かん…」
しかし焼酎の瓶も空っぽ、そこら辺に転がっている酎ハイの缶も見事に空…。
散らかった部屋の中から財布を見つけ出し中身を確認。かろうじて小銭が300円ほど残っている。
「コンビニでなくスーパーまで足を伸ばせば酎ハイが3本は買えるな…」
全く働かない頭でもなぜかこういう計算だけはきちんとできます。
買いに出かけようとするも、足がふらついてまともに立ち上がれません。
猛烈な胃の痛みもあり布団の上に倒れ込みます。
「とりあえずもうしばらくしてから買いに出よう…」
そう思ってしばらく布団の上で横になりました。
しかし、その後、アルコールの離脱症状の地獄の苦しみが待っていました。
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