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恋と時間のいたずら【小説3/3】
●取り敢えず一郎は母にまた来ることを告げて、日の国に戻った。
「色々整理しないといけないことがたくさんある。」
川の国の将軍が悪いやつであること。母親が川の国から出ることが出来ないこと。
まずは日の国の将軍であり、織姫の父でもある神田一之介に直接話す機会を作った。
一之介に一郎が織姫に思いを寄せていることを悟られてはいけない。
「将軍、川の国の将軍は悪評がたち暴君という噂も聞きます、そのような者に姫を嫁にだすのは危険な行為だと思います。」
「俺の娘は川の国の将軍に出す。川の国の資金と資源をふんだんに活用するためにはその方法しか無い。」「しかし、川の国は豊かな国ではありません。農民からの高い税金により豊かに見えているだけです。それに農民に対しての政策が殆ど成されていなくて国としてはこれから弱体化していくと思われます。」「うるさい!俺が決めたことに口出しするな。」
一郎は説得が不可能であると感じて、その場は承知したように振る舞った。
織姫の幸せを願って川の国の将軍が人格者であれば、身を引く選択肢を持っていた一郎だが、暴君であることを知りなおさら心配になった。
「織姫様、申し訳ありません。川の国の将軍が暴君であることを殿に進言したのですが、
結婚の取りやめを行うことが出来ませんでした。」「私、一郎と会うまで自分の存在理由が分からなかったの。でも一郎と一緒に過ごしてきてやっと分かりました。一郎と出会うためにここにいるんだって。だから、、、だから、、、」織姫は目から涙を流した。「織姫様、とりあえず今日は帰ります。」一郎の頬に一つのしずくが流れた。
●「夜逃げをするしかない」日の国から出て、母親の居る川の国で暮らすことを決意した。
「もしも織姫様が夜逃げを承諾したら決行しよう」数週間後、一郎は織姫の元に会いに行った。
「このような理由で川の国へ夜逃げを行おうと思っております。姫様からすると地位などを全て捨てることになり、追われる身になります。金銭的な余裕も無くなるかもしれません。」一郎は正直承諾するとは考えていなかった。戦国の時代に一恋愛のために、自分の身分や地位を捨てて危険な夜逃げを行って貧乏な農民になることは当時の常識では考えられなかったからだ。「私行きます。連れて行って下さい」織姫は夜逃げをして一郎と一緒に過ごすことを選択した。「ありがとうございます。そう言ってくれると思って、作戦を考えてきました。」
●作戦の内容は一郎が長期調査に行きそこで一郎のお金を川の国の一郎の母親の和子の家に運ぶ。そして関所の人間を買収して夜逃げ当日に通れるようにする。当日の夜は織姫の就寝時間に寝室の門番の2人を一郎が一気に倒し、そのまま馬で一気に川の国に向かうという作戦だ。川の国までは馬を走らせれば10時間くらいで着く。
夜逃げ当日、作戦通り織姫を馬に乗せ10時間ほど走って川の国の関所に到着した。
あらかじめ買収していたはずだったが、買収した相手が上の者に口出しをして、
偽りの買収をされていた。門番には10人ほど居て突破するのが難しい状況だった。
一郎の馬はスピードが早いのでそのまま突っ切ろうと思ったが、一郎と織姫を乗せていて重量があるため門番の馬に簡単に追いつかれてしまうことが明白だった。一郎はこのようなことになる可能性を一応考えていて対策を考えていた。
関所の隣の山を越える作戦だった。関所は山の間の谷に作られていて関所では無く山を越えることでも川の国に行くことが出来た。しかし山を越えるための労力は普通よりも数倍もかかる。「織姫様、申し訳ありませんが山を越えることになりそうです。」「私は大丈夫です」一郎と織姫は3日間で山を超えた。一郎があらかじめ隠しておいた水や食料で飢えることは無かったが、織姫の体力が限界だった。「恐らく三日も経って日の国では織姫様の捜索隊が組まれていて山の中にも捜索隊が入り込んでいるだろう」一郎達は山を越えた所に隠していた馬に乗り、和子の家に向かった。数時間後に和子の家に着いた。「なんとか着くことが出来た。」「よろしくお願いします。日の国の神田織姫です」「こちらこそよろしくお願いします。」織姫と和子は最初は仰々しかったが、次第に打ち解けていった。
一郎達に幸せな日々が続いていた。「結婚して下さい」ある日、一郎は織姫にプロポーズをした。「よろしくお願いします」一郎と織姫は無事結婚することが出来た。
一郎はこれから幸せな生活が始まると思っていた。しかし一郎と和子が段々薄くなっていることに気がついた。一日も経たないうちに半透明で向こうが透けるくらいの薄さになっていた。「なんで消えるんだ?」一郎は必死に理由を探した。そこで思いついたことは歴史を変えてしまったため自分が生まれなくなっているからだと言うことに気がついた。
一郎が殆ど目視できなくなってきていた。「織姫様、自分が消えたら日の国の人達に俺に無理矢理連れて行かれたと言って下さい、そしたら罪には問われないと思います、、、、」
一郎と和子は完全に姿を消してしまった。織姫はこの恋が人生で最初で最後だった。