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どうしてお役所仕事は発生するのか ~第3章 動機的制御:組織内決定

オーガニゼーションズ 第3章はとても長いので、前半のP46~62で一区切りします。ここではお役所仕事というのが、どんな組織でも普遍的に発生するよね、というメカニズムについてみていきます。これまでのまとめは以下をご参照ください。

命令を受けた人はどう行動するか

第2章では、人間は受動的機械で、言われたことをただ実行する、と考えてきました。でも実際の人間は、命令を受けたときに命令の意図とは異なる、予期しない行動をすることがあります。それを体系化していきます。

それが顕著になるのがお役所仕事です。本当ならこちらの困りごとに対して親身に相談に乗ってくれるはずのお役所が、なぜか傲慢で、きっちり書類を用意しないと門前払いしてくることがあります。そうなってしまう理由について、マートン、セルズニック、グールドナーの3人が考えたモデルを紹介していきます。

マートン・モデル

何かしらの命令(3.1 制御要求)が出されると、自分はこの命令を受ける立場にあるんだなという自信(3.2 信頼性強調)につながる。

命令が繰り返されるたびにこの自信が強くなり、同時に以下の3つが引き起こされる。
・個人として命令を受けてるのではなく、会社内の職位の代表として仕事を受けていると感じる(3.3 人格的関係量の減少)。
・規則を守ることこそが自分にとってプラスの価値だと感じる(3.4 組織規則内面化)。
・どんな問題でもこれまでの事例や基準の範囲内で対応しようとする(3.5 意思決定の範疇化)。例外に柔軟に対処しようとしなくなる(3.6 代替案探索量の減少)

その結果、人間性が失われて、どんな人でも似たような画一的なお役所仕事ばかりするようになります(3.7 行動硬直性)。そして、職員同士の仲間感は強くなって団結心が醸成され(3.8 内集団一体化)、排他的で内向きの組織が形成されていきます(3.9 対外部圧力相互防衛性向)。

おかげさまで、職員は権力を個人的に濫用することが減る(3.10 個人的行為防止可能性)という良い面もありますが、お客様からは不評を買うことになるわけです(3.11 顧客との悶着量)。

お客様から不評を買うことは、本来の組織の目的とは真逆の結果のはずですが、クレーム対応に当たる職員としては、こんなクレーマーに個人的に対応すると余計めんどくさいことになるから、マニュアル通りのお役所仕事に徹しよう、と負のスパイラルに陥ります(3.13 個人的行為防止の必要感)。

こうしてお役所仕事はなくならないどころか、どんどん強化されていくんですね。これがマートン・モデルです。以下に分かりやすい(?)図を置いておきます(筆者はこれが分かりやすいと思ってる)。

マートンモデル

セルズニック・モデル

マートンは、命令に対して人々が従う規則の面に注目していたが、セルズニックは権力について注目した。

まず何かしらの命令(3.1 制御要求)が出されると、それを実行するための権限も与えられる(3.14 権限移譲)。その結果、しっかりと命令を実行するために人々は努力して(3.15 専門能力の訓練量)、組織の目標に近づくことができる(3.16 組織目標と実績の差異が減少)。ここまでは良かった。

しかし、権限移譲によって悪いことも起こる。俺の部門はこの仕事をする、といった縦割りの文化が発生する(3.17 組織下位単位間の利害分岐)。同じ会社内なのに部門間で対立するようになり(3.19 組織下位単位間の対立)、自分たちが正しいと主張するようになる(3.22 下位単位イデオロギーの形成)。

こうして、人々は会社全体の目的ではなく、自分が所属する部門の目的こそが一番大事だと思うようになる(3.23 参加者による下位目的内面化)。部門としての方針も、会社全体より内部の事情を優先するようになり(3.20 組織内決定内容)、お役所仕事はなくならないというわけです。

セルズニックは、これを避けるための方法を2つ提案してくれています。まずは、部門の下位目的ではなく、会社全体の目的をしっかり理解させること(3.21 参加者による組織目的内面化)。もう一つは、各部門の仕事をしっかりチェックしてどれくらい会社の目的を達成できているか観察・検査すること(3.24 組織目的の操作性)。まぁ、単純に全体を見ろって話です。

セルズニックモデル

グールドナー・モデル

グールドナーの考え方は、マートンとセルズニックの間をとった感じになっているので詳細は省きます。趣旨は「しっかりとした規則があれば、人々はそれを守っていれば怒られなくて安心だし、会社は長く存続」できるというもの。

しかし「これをやってはいけない」という規則を作ってしまうと、「ここまではやってもいい」という最低限のラインで済まそうとする人が出てきて、行動水準が下がる。そうなると、厳しく監視する必要が出てきて、仕事中の緊張感が高まり、会社が不安定になる、という。

保育園でお迎え時間を守らない人がいるから罰金を設定したら、罰金を払えば遅れてもいいのかと、かえって守らない人が増えた、みたいな話ですね。

お役所仕事はなくならないのか

ここまで組織構造的に、お役所仕事が発生しやすいよね、ということを見てきた。これは一面では正しいが、しかし必ずしも絶対ではない。個人の勤労意欲とか感情とか動機付けとか、そういう影響も見ていく必要がある。3章の後半ではそうした個人の動機についてより深く見ていく。

課題

権限委譲により組織内で問題が発生した事例を挙げて、セルズニック・モデルで説明してみよう。

私の答え

・バーの売り上げ管理を任せる(権限移譲)
・お金の管理は俺の仕事だと感じる(組織下位単位間の利害分岐)
・管理しているお金は俺のものだと感じる(参加者による下位目的内面化)
・お金を持って逃げる(組織内決定内容)

こんな感じ? 違うかな? まぁいいか。

追記:みんなの回答

全く同じ備品(例えばラミネート用の機械とか)を持ってるのに、所有してる部署が違うからいちいち借りるときに借用のための申請用紙とか書いたり、部門の長とか通して調整しなきゃいけないのとか、それっぽいなーと思いました。会社の備品という意味では同じはずなのに、各セクションに所有権みたいなのを割り振ってるからそういうことが起きますよね。

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