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対立の中に座す~テロリストはなぜ生まれるか~エルダーシップ

前回、対立を避けずに受け入れること、特権を持つ者の自覚が大事、という話をしました。今回は対立を引き起こす「テロリスト」がなぜ生まれるのかについてお話します。

そもそもテロリストがいなければ対立は起こらないのに

私たちは、対立を引き起こす厄介者(テロリスト)さえいなければ平和に過ごせるのに、どうしてそういう悪意を持った人間はいなくならないのだろう、と考えたりします。でも、そういう風にあなたが思うからこそ、テロリストは生まれるのだ、と筆者は言います。

テロリズムの特徴は、権利を奪われた集団が、平等や自由を求めて主流派に対して攻撃することだ。主流派に対する無差別で不当な暴力だと思われているものは、実際には、自由を求める戦士が苦しんできた傷を埋め合わせようとする試みだ。その目的は、パワーを持つ人々に社会変革の必要性を気づかせることだ。
テロリストの観点からすれば、自分たちが傷つけたり殺したりする主流派の人々はすべて、罪なき犠牲者ではない。主流派の人々はすべて、たとえ静観しているだけであっても、テロリストが闘っている抑圧に関与しているのだ。

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世の中はいつだって多数派と少数派に分かれていて、多数派にとっては快適だけれど少数派にとっては居心地の悪い場所になっています。そのことを多数派は常に自覚しないといけないのです。少数派がつらい思いをしていることに配慮しないと、追いつめられた少数派が反旗をひるがえして「テロ」が起こるのです。

ここでの「テロ」というのは爆弾で襲撃するような物理的なものだけでなく、LGBTや障がい者たちの訴えのようなものも含まれます。多数派が少数派の悩みに耳を貸して、それを受け入れることができれば、その訴えはテロではなくなり、調和のとれた社会に進むことができるのです。

筆者が「対立の中に座す」と言っているのは、こうした対立から目をそらさずきちんと向き合うことが大事だ、ということです。

テロリズムの定義を拡大できるだろう。周縁化されたグループが政治的な動機で復讐を行うことだけでなく、怖れや心理的な苦痛を引き起こすような、人間関係や集団内での出来事もテロリズムに含まれるのだ。テロリズムは、小規模なものから国際的なものまでの、幅広い社会的なプロセスである。それは、権利を奪われた個人やグループによる活動であり、彼らに対して過去や現在に意図的あるいは無意識的にランクが乱用されたことへの復讐や、平等の実現を願う行為なのだ。

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テロリズムの特徴

弱者たちによるテロリズムが起こるときは、以下のような特徴があるそうです。どれもこれも、身に覚えのあるシチュエーションですね。

①パワーを求める傾向
自分の思い通りにするために、小グループでの話し合いのときに陰口を言ったり、突然会議の中に割り込んで統制を壊したりする。
②絶望
圧倒的なパワーの格差に、もうだめだと感じてしまう。表面上は冷静に見えても、感情は暴力的になっている。
③無謀
最高の理想を掲げ、その邪魔になりそうなすべての人に対抗する。パワーを持つ人々に向かって、彼らには受け入れがたい意見を押しつけ、コミュニケーションを安全に進めるための共通ルールを破る。
④忠誠
復讐心があまりにも根深いため、自分と共通のアイデンティティを持つ人々にも「こうあるべきだ」という敵意が向けられるようになる。
⑤中毒
権威ある人物との対決を常に求めるようになる。正義感の矛先は、あらゆる集団の権威を攻撃する。いつでも敵を必要としているのだ。
⑥報復禁止の通達
「偏見を持つ人からの復讐が怖いので、このグループで意見を述べるのは難しいです。けれど、私は話さなければならないと感じています」。自分のことを、勇気ある英雄として配役するのだ。そして、自分に対立する相手には、はじめから偏見を持つ人というレッテルを貼る。このようにして、議論や報復をあらかじめ封じるのだ。
⑦集団に対する非難
「あなたたちが変わらないから、私はこのグループを離れます。私の知る限り、あなたたちは他で出会ってきたのと同じくらいひどかった」
⑧自己破壊
あまりにも悲しみが深すぎて憎しみを抑えきれなくなると、自分が最も必要とする人々を傷つけてしまう。テロリズムがきわめて強力になり、目的のために役立つ人々をも追い払ってしまうこともある。
⑨強さに関する無自覚
テロリストは、ある種のスピリチュアルなランクを持っている。しかし、そのランクが持つパワーを自分のものと捉えていないか、パワーの存在に気づいていない。自分の人生は弱々しく、ほとんど意味などないと考えていた。だが実際には、過去の不公正を正すという正義感に動機づけられた強いパワーを、彼は持っていたのだ。

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そして、ひとたびテロリズムが成功すると、それは中毒になります。皆さんも、正義という暴力に取りつかれた人を見たことがあるでしょう。結局、そうやって強者の特権を手に入れたら、それを無意識に行使して、再び対立の炎を生み出してしまうのです。だからこそ、強者にも弱者にも常に意識を向けるエルダーシップが必要なのです。いや、無理じゃね?

正義の力は気持ちよいものだ。それは甘美なものであり、とても強い満足感をもたらす。場合によっては、それがもっと欲しくなる。特定の過ちについてある個人に復讐していたはずが、あっという間に、あらゆることについてすべての人に復讐するようになってしまう。こうしてテロリストは度を超えて、自分が闘おうとしていた問題そのものになってしまうのだ。彼らもまた、パワーの無自覚な乱用という罪を犯してしまうのである。

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ということで、だんだん繰り返しが多くなってきたので、本書のエッセンスはだいたい掴めたのかなぁ? と思いました。

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