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枡原徹尾と江戸のおふぎ

舞台は江戸時代。
主人公の名前は枡原徹尾。
親の愛情を一身に受けて育った男性。
身長187センチ、癖毛、職業は飛脚。
夢のお伊勢参りに行く弥次喜多もの。
言わない方がいいことを言う人達が集まる部屋を作る物語。


いつもショッキングピンクの服しか着ない。口癖は「報連相」。アルフォートいちご味フェチ。趣味はタイムスリップして未来を見ること。Vtuberにハマっている。

右足が左足より2センチ短いことがわかったが、それには大きな秘密が隠されている。左足の小指の爪の裏に位置情報を送信するマイクロチップが埋め込まれており、なんらかの理由で信号が15秒以上途絶えるとアメリカとロシアが保有するICBMが世界中の主要都市に向けて発射される。

プニプニした食べ物が好きで千と千尋の神隠しに出てくる謎の食べ物を探し回ったがなかなか見つからず、発狂して足の指を全て切断した。

足の指は竜の足首と交換してもらったので解決した。その代わり足袋をはくことができなくなったのと、雨に濡れると足から稲妻が流れて周囲3㎞の人々を感電させてしまうようになった。

足の指を切断したときに生体電流が途切れ、マイクロチップの信号が途絶えたため、ICBMが江戸に向けて放たれた。

一.原宿

枡原徹尾は原宿までやってきた。
この街では「ヴイちゅーばー」という芝居ものが流行っている。
そこいらの芸者とはわけがちがう。
枡原はお気に入りの「ヴイちゅーばー」に会いに芝居小屋へと向かった。

彼女が、原宿一のヴイちゅーばー、おふぎだ。

「おふぎ!このあと暇か?」
「気安く話しかけないで」
「そんなつれないこと言うなよ」
「スパチャ。返事が欲しければスパチャしなさい」
「俺は宵越しの金は持たねえんだ」
「それはパーッと金を使う人のセリフ、あなたはただの金無し。貧乏人は帰りな」
枡原徹尾はおふぎに芝居小屋を追い出された。

枡原徹尾が街を歩いていると、見知った顔が2つ。枡原とおなじく飛脚をやっている椎さんと俄さんだ。
「よう、椎と俄じゃねえか、最近どうよ報連相」
「俺たち、もう大名飛脚は辞めることにしたんだ」
「おいおいどうした急に」
「もう、あの丁稚大名に仕えるのは御免こうむりたくてな」
「そんな滅多なこと言うもんじゃないぞ」
「いいんだ、俺たちは言わない方がいいことも言えるように、独立して江戸で町飛脚を始めるんだ」
「そうか、ついにお前らも独立かぁ。感慨深いな」
「枡原さんも一緒にどうです?」
「いやいや、俺はいいよ。これから伊勢参りにいかなきゃならねえしな」
「ほう、どうして伊勢参りに?」
3人は他愛のない雑談で盛り上がっていた。

椎さんと俄さん

「そうだ、占いしてやろうか」
枡原徹尾は椎さんと俄さんに提案する。
「お、徹尾さんの夢見占いですか?ありがてぇ」
「せっかくお前らが独立するっていうんだから、ちょっと行く末を見てやろうと思ってな」
「お願いしやす!」
いいだろう、徹尾はうなずくと、静かに目を閉じた。
枡原徹尾は、瞑想することでタイムスリップして未来を見ることができる。
せいぜい1週間くらい先までしか見えないが、その的中率は80%を超える。「おっとこれは」
「どうでした?」
「日本橋はしばらく辞めた方が良さそうだな報連相」
「何が見えたんです?」
「いま、日本橋は火の海だ」

二.移動

枡原徹尾は2人と別れたあと、吉原に向かって歩き始めた。
もう日が傾き始めているが、このペースで行けば日が暮れる前には着くだろう。
川沿いの土手を歩いていると、3羽の鳩が飛んできた。
「おう! ぼんじり、せせり、はつじゃないか。どうした」
それは枡原のペットであり、大切な相棒の伝書鳩たちだった。
「くるっぽー」
「こっかどぅろどぅー」
「フギチャン!フギチャン!」
3羽のハトがわめいている。うるさい。
よく見ると、はつの脚に手紙がくくりつけられている。
誰からの手紙だ?
開いてみると、それは田中藩の藩主である譜代大名、丁稚からの親書だった。

枡原徹尾と伝書鳩たち

拝啓 枡原徹尾殿

丁稚です。このたび、我が田中藩の飛脚を担当していた椎と俄が独立することになりました。それ自体はいいんです、私も2人の才能の高さは承知していますし、いずれはこんな田舎の飛脚ではおさまらない日が来るだろうと思っていました。
ただ、立つ鳥跡を濁さずっていうか、出ていくなら出ていくで先に相談してくれればよかったのに、言わないほうがいいことを街中でさんざん言って出ていったものだから、こちらとしてもけじめをつける必要がでてきました。
徹尾殿には申し訳ないが、いったん2人とは距離を置いていただきたい。
あなたにも、望まぬ危害を加えなければならなくなってしまうが故。
よろしく頼む。敬具

田中藩 丁稚

なんだなんだ、戦か? 面白くなってきたな!

丁稚大名には、田中花という御前様がいらっしゃる。
絶世の美女で、いくつになってもその若い美貌は衰えることがないという。
一方、あまりにも美しすぎるがゆえに、実は人間ではないのではないか、
田中花は死んでも動き続けるゾンビらしい、といった噂も飛び交っている。
田中花の好物はファミチキ。
田中花は自室にスタジオを構えて夜な夜なラジオの配信をしているラジオパーソナリティだった。

三.吉原

夕暮れ時、枡原徹尾は吉原宿に到着した。
ここには行きつけの催事酒場「極楽」がある。
店主の桐さんとは酒を酌み交わしながら情報交換するのが常だ。
「よう桐!最近どうだい報連相」
「徹尾さん、久しぶり。いまちょうどラジオで聞いたんですけど、日本橋がヤバいんだって?」
「俺も"視てきた"よ。完全に火の海だった」
「百姓一揆か、それともどこかの大名が攻めてきたのか」
「そこまでは分からなかったが」
徹尾は中ジョッキを飲み干して、店内を見回す。
「ところで今日はなんの催事をやってるんだ?」
「今日は"大喜利"ですよ。やってきます?」
「いや、俺はそういう頭使うのは苦手だ」
「そういわずに、今日のイベンター、いい子が来てますから」
「俺はおふぎだけで十分だよ」
「見かけによらず固い男だねぇ」

徹尾は酒場を出て宿へ向かう。
吉原ではいつもお世話になっているママがいる。
ママの名は、スポポポノビッチ麗らか、という。
おそらく本名ではないが、この街でそんな無粋なことを聞くやつはいない。
スポポポノビッチ麗らかは、美しいツルツルマッチョなオカマだ。
その美しい筋肉も素晴らしいが、ママの作るアルフォートいちご味は絶品で興奮が止まらない。
なんかやべー薬でも入ってるんじゃないか?って思う。
もう、アルフォートいちご味のことを考えただけで、イッてしまいそうだ。
「ようママ!今日空いてるか?」
「あら徹尾ちゃん、よく来たわね。空いてるわよ。危なかったわね、明日はちょうど丁稚大名様がこちらに来るから予約でいっぱいなんだけど」
「丁稚が!?さすが、動きが速いな」
「あら、何か知ってるの? とりあえず明日はおもてなしのためのアルフォートパーティーをするつもりよ。徹尾ちゃんもこっそり来る?」
「マジか!? いいのか!? 恩に着るぜ!!!!」
その晩、枡原徹尾は興奮しすぎてあまり眠れなかった。


次の日、大名行列が吉原宿にやってきた。
なんだなんだと通りゆく人々も様子を見にくる。
いつもなら事前に通告があるのだが、今回は突然の訪問だったようで、内情を知る人は少ない。丁稚大名は、その名のとおり他の大名から使いっ走りなどを命じられたり、粗雑な扱いを受けている。
本人も大変腰が低く、優しい性格のため、威厳を感じる人もあまりいなかった。
「どうもすいませんね、はい、じゃがいも配りますよ~」
なんかじゃがいも配り歩いてる。
そういった身近な存在感があるため、百姓たちからは支持されていた。今日はスポポポノビッチ麗らかに話があって吉原にやってきた。
そしたら、アルフォートパーティーを開いてくれるというので、その歓待を甘んじて受けることにしたのだ。

「椎と俄の件なんだが」
丁稚はアルフォートを食べながら、スポポポノビッチ麗らかに用件を話した。
「ごめんなさいねぇ、あたしは何も知らないから力になれなくて」
と言いながら麗らかは、いちご味のアルフォートを食べて悶絶している枡原徹尾のほうを見る。
「おお、椎と俄なら知ってるぞ、あいつら日本橋に行くらしい」
「やはりそうか。今はどの辺りか分かるか?」
「どうだろうね。そんな急いでいる風ではなかったから、まだ箱根あたりじゃないかね」
「そうか、情報助かる、ありがとう」
丁稚は礼を言うと宿を出ていった。
「徹尾ちゃん、いいのかい?仲間を売るようなことしちゃって」
「はは、別にあいつら仲間じゃねぇし、うまいことやるだろ。心配すんな」
そういうと再び枡原はアルフォートを食べ始めた。

すっかり満腹になった枡原は吉原を出発。
今日は藤枝まで行くつもりだ。
少し距離があるので足を速める。
しかし、この前交換してもらった竜の足首はすこぶる調子が良く、小一時間走り続けても全く疲れることがない。
この調子なら夜までには問題なく着くだろう。あと心配なのは天気だけだ。
前方には雲がひろがり、あまり先行きはよくなさそうだった。

四.蒲原

三連休の中日、田子の浦近くのしょぼい長屋で暮らす白洲さんは、西側を見て雲行きを案じていた。
この時間から干しても洗濯物が乾かなそうだ。
午前中を寝て過ごしたことを恨めしく思っていたその時、地面が揺れ始めた。南海トラフ地震を何十年も前から予告されていたこの地域に、ついにその時が来たのだろうか。揺れが大きくなる。東からくるようだ。突風と共に眩しいショッキングピンクが目に飛び込んできた!
身長は180を越える、くるくる天然パーマの美脚な飛脚が猛スピードで通り過ぎていった。
じゃがいもを落としながら…
地震は彼の足音だったようだ。もうおさまった。白洲さんは、「お兄さん落とし物よ!あと、蒲原手前の富士川は…」と言いかけ、やっぱ言わなくてもいい事は言わないに限ると呟き懐に馬鈴薯をしまい個人部屋に帰った。家電製品50Hzと60Hzの境がある富士川を越える枡原。
梅雨でくるくる巻き毛になりがちな彼。毎朝の整髪に欠かせない癖毛用の電子櫛「すとれえと鉄板」があちらでは火を吹くとは知らないだろう…

五.藤枝

夕刻、枡原は田中藩のお膝元、藤枝宿に到着した。
丁稚大名にもらったじゃがいもは、ふところにしまっておいたはずだが気付いたらなくなっていた。落としたのだろうか。
しかし、同じく預かった手紙の方はしっかりと持っている。飛脚としての仕事はいつだって完璧だ。
手紙の中身は知らないが、奥方様の田中花に宛てられた手紙だ。丁重に届けさせていただく。
守衛に手紙を手渡し、お役御免になったと思ったが、しばらく待たされたあと、屋敷の中に入るよう命じられた。
田中花が直接面会を求めているらしい。どんな手紙だったのだ。
枡原は案内されて田中花の待つ部屋に入った。
そこには、見慣れない金属質の装置を操作する田中花がいた。

「よくぞ参った、枡原殿」
「そちらの装置は?」
「これは、のーとぱそこんじゃ。ラジオのストリーミング放送に使っておる」
「はあ……? それで、御用というのは?」
「椎と俄の件じゃ。あの2人は、我が藩のあることないこと、言わない方がいいことを言いふらして回っているそうではないか」
「まあ、言わない方がいいことを言うのは快感ですからね」
「そなたも、グルじゃろ?」
「えっ?」
枡原は虚を突かれた。
「丁稚は騙せても、妾を欺くことはできんぞ」
田中花は真っすぐに枡原を見つめる。
こいつは、何を考えているのだ。枡原は思いを巡らす。
俺を捕まえたいならそのチャンスはあったはずだ。むしろ、わざわざ部屋に招き入れて、田中花自身を危険にさらしていることになるぞ?
「俺は、言わない方がいいことは言ってませんが」
「言うべきことを言わないのも同罪じゃ」
「そんなご無体な」
「丁稚は箱根宿に向かったようじゃが、椎たちはまだ原宿におるんじゃろ」
「それは、その……」
「枡原殿。そのことは今は構わん。教えて欲しいのは日本橋のことだ。そなたは、視えるんじゃろ?未来が」
なぜそれを……!?
枡原は、目の前の女の底知れなさに、恐れおののいていた。

「申し訳ないが、俺は過去は視えねぇんだ。だから日本橋で何があったかは分からない。ただ、そこいらじゅうが焼け野原になっている」
「その後じゃ。さらなる追撃がくるのか。あめりかの黒船が来るのか。敵からはどういう要求がくるのじゃ」
「あめりか?なんだそれは」
「お主、国際事情には疎いのか?これだから鎖国中の民は…」
「俺はこれから伊勢国に行くつもりだぞ」
「江戸が鎖国してから400年、ここいらの生活水準は一向に変わらんが、海の外の世界はすっかり様変わりしておる。今のところお情けで放置されているが、どこかの国が攻めてきたら、守る術はないぞ」
「田中花殿は海の外にまで精通しておられるのか」
「おそらく、今回の日本橋の火事はあめりかからの砲撃。向こうの要求を察知して、こちらから先手を打つ必要があるのじゃ」
「先手を打つって、こんな駿河国の片田舎でどうやって?」
「はん。このグローバル時代に田舎も都会も関係なかろう。既に布石は打っておる。各国のマフィアを統率する、世界最大の闇組織『いわいう』のトップこそ、ヴイちゅーばーのおふぎだ」
「おふぎ!?」
「おふぎがオンラインカジノを運営して世界中から金を巻き上げているの、知らんのか?」
枡原には、話の内容が半分くらいしか分からなかったが、おふぎはすげー奴なんだな、というところだけ理解した。

そのとき、窓の外からバッサバッサと音が聞こえた。
ハトだ。
「くるっぽー」
「ぼんじり!どうした急に」
枡原がハトを見て笑いかけた顔が、そのまま凍り付いた。
鳩が鋭い爪を枡原の顔に向けて飛んでくる。
すんでのところで枡原は攻撃をかわしたが、鳩の爪は枡原の耳を切り血しぶきが飛ぶ。
「よくやった枡原」
ハトが喋った。
その様子をみていた田中花は、ショックで目から光が消えていた。
それは、絶望の表情だった。

「ヴイちゅーばーおふぎを陰であやつる黒幕がいることは分かっていた。ファミチキタベタベルマンと名乗っていたのでとんだおふざけ野郎だと思っていたが、まさかこんなかわいいお嬢さんだったとはな」
ぼんじりは畳の上に優雅に着地すると、田中花に向かって喋りかけた。
「どうしてここが・・・」
「枡原に仕込んでいたのは、足先のGPSマイクロチップだけではない。耳たぶにも盗聴センサーが仕込んであったのだよ、おしゃべりさん」
クッ、枡原相手で油断して喋りすぎた。
それにしても足がつくのが速すぎるな。
「我々、旅籠屋いよかんはアメリカのスパイとしてこの国に潜入し、『いわいう』の弱体化を図るために情報収集を続けてきたのだ。おふぎは美しく、優秀な賭博師だが、明らかに技術的な支援を受けていた。その裏の黒幕を探すために枡原を改造し、泳がしていたのだ」
田中花はなんとかこの場から逃げる算段を立てる。
しかし。
「無駄だ。いでよ嵐!」
ハトが叫ぶと部屋の中に突然ものすごい嵐が現れる。
畳の部屋は雨で濡れ、机の上に置いてあったノートパソコンはーー
その瞬間、部屋はものすごい稲妻に包まれる。
枡原の竜の足首が濡れたため、周囲3kmの人々を感電させる、ものすごい稲妻が発生したのだ。
ノートパソコンはショートして電源がつかなくなり、田中花も意識を失った。

まばゆい稲妻がおさまり、嵐も落ち着いてきた。
倒れている田中花の横で、枡原徹尾は仁王立ちになり、空を見ていた。
そこにはハトが呼んだドラゴンがいた。
ドラゴンは鋭い牙をむき出しにしながら喋った。
「嵐です」
ご挨拶いただけた。
嵐と名乗るドラゴンのまわりには仲間の鳥がたくさんいる。
旅籠屋いよかんというのは、鳥類の集まりなのか?
ハトが叫ぶ。
「いけ嵐!このまま2人を殺すのだ!」
「嵐です」
ハトの方が偉いのだろうか。ドラゴンは、図体はでかいけれど比較的穏やかな性格に見えた。

「おい、ぼんじり!俺たちを殺してどうするつもりだ?」
枡原はハトに問いかける。
「アメリカはこの国を占領したがっている。中国やロシアへの進撃の拠点として有用だからな」
「俺たちは日本のお偉いさんじゃないぞ。なんの権限もないんだぞ」
「枡原は知らないだろうが、そこのお嬢さんとおふぎが作った秘密結社『いわいう』こそが、国際社会の中でこの国に攻め入ることを防いでいる最終防衛ラインなんだ」
「それはさっき聞いたが、俺たちを殺したら各国のマフィアが怒るんじゃないのか?戦争になるぞ?」
「だから、それを悟られる前に全て消し去る。船頭をなくしたならず者の集まりなど、恐るるに足らん」
「ははーん。なるほど、それは旅籠屋いよかんの独断専行ってことだな。おそらくアメリカからの指令を無視して飛んできたんだろ」
「この世界、結果こそが全て。最終的に笑うのは我々だ」
ハトが笑っている。あんまり怖くない。
「ぼんじり、お前の本体は別のところにいるんだろ? ハトに憑依してるのか?」
「それが分かったところでお前らに手出しはできん」
「いいことを教えてやるよ。ハトは、そんなに頭が良くないんだぜ?」
「バカにするな」
「お前は、俺の伝書鳩だ。今、しゃべらなくてもいいことを、延々と喋らされてることに、気付いてすらいない」
「変なはったりは止めろ」
「そして、この会話はお前の本体に届いていない。お前は末端に残された憑依意識のかけらから情報を漏らしているだけだ」
「盗聴器が用意してある」
「俺の耳に埋め込まれた盗聴器は、お前の爪で切り落とされたんだよ」
「そのためにわざと耳だけ切ったというのか!?」
「そして、盗聴器から電波が途絶えた結果、この場所にはICBMが打ち込まれる」
「!?」
見上げると、空から大陸間弾道ミサイルが降り注ぎ、空に舞うドラゴンと鳥たちを次々と撃ち落としていく!
「嵐です」
「嵐です」
「ミサイルの嵐です・・・」

空からミサイルの雨が降り注ぎ、空中で大爆発する様子をビデオカメラで撮影・中継する2人組がいた。
おふぎと、椎さんだ。
「大変なことになっています。巨大な稲光のあとは爆弾の雨です。これはどこの国からの攻撃なのでしょうか!?」
今回の騒動の一部始終を全世界に生放送していた。
「無抵抗の国に一方的に攻撃を仕掛ける、このような野蛮な行為が許されるのでしょうか」
全ては枡原の計画通りだった。
江戸にICBMが打ち込まれたときから、枡原は次の攻撃を予測していた。
だから枡原自身がおとりとなるので、その様子を伝えてほしい。
椎さんと俄さんはそう頼まれ、行動を起こしていた。
椎さんはおふぎと協力して撮影機材一式を運んで藤枝宿まで走り、
今ごろ俄さんは丁稚大名と合流して日本橋の惨状を伝えまわっているはずだ。
この情報こそが、最大の武器になる。
しかし、本当に言われた通りの映像が撮れて、おふぎも驚いている。
枡原は言っていた。
「俺は未来が"視える"んだよ。だから間違いねぇ」
これは、単なる冗談ではないのかもしれないな、と思った。

六.鞠子

翌日、枡原徹尾、田中花、おふぎ、椎の4人は、鞠子宿の丁子屋でとろろ定食を食べていた。
「昨日の中継はどうだった?バズったか?」
「全世界で同接500万突破してたよ、すごかったよ!」
おふぎは嬉しそうにとろろご飯を食べている。
「チャンネル登録数も5000万人だって」
「闇の組織がそんな人気になって大丈夫なのか?」
「だいじょうぶだいじょうぶ。江戸は法整備ざるだから、捕まりっこないわ」
田中花も澄ました顔で答える。
「おふぎもすっかり人気者になっちまったな。俺も鼻が高いぜ」
「は?あんたには関係ないわ」
「おいおい、俺のおかげでスクープ取れたんだろ?」
「まぁ、そこは感謝してやらないこともないけど」
そのとき、ようやく日本橋から戻ってきた丁稚と俄がお店に到着した。
「お疲れ様!ずいぶん早かったな」
「いえいえ、皆さんの活躍、見ましたよ。そちらこそお疲れさまでした」
「それじゃあみんなで乾杯だ!」
こうして6人は祝杯をあげた。
片隅で丁稚が椎と俄に何やらお説教をしていたけれど、無事仲直りできたようです。
めでたしめでたし。

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