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新産業共創プロセスの社会実装

2/24(木)に行われた Industry-Up Day Spring 2022 のテーマセッション1、新産業共創プロセスの社会実装 - 越境人材を中核とした新産業共創エコシステム構築事業 - の内容を簡単にご紹介いたします。登壇者の紹介については以下のnoteをご参照ください。

前回キーノートで「新しい時代のオープンイノベーションとして、社会課題を解決するための共創の場が必要」という課題提起がありました。その「共創の場」というものを実際どうやって作っていけばいいのか。そうした活動に取り組んでいる方々の対談です。

ドローンを使った新産業創出

VFR株式会社社長の湯浅さんはドローンを使った新しい物流を実現するための実証実験をしているそうです。物流だけにとどまらず、那須ハイランドパークのプロモーションや、新しい結婚式など、映像を含めたサービスを紹介してくださいました。

こうした実証実験をするために、那須地域と協力して活動しているそうです。那須のことをもっと知ってもらう、来てもらう、関係人口を創出して地域を盛り上げるために、いろいろなイベントを企画しているのだとか。

ドローン開発のためにいろんな会社を呼び込んで実証実験しよう、ということで開発者も業務委託の方もみんな那須に集めて合宿をして、いろんな人と交流して会社も越境してはちゃめちゃに活動していたら、普通の会社ではありえないほどに進捗があったとか。

一番難しかったのは人材確保。新しいことをやれば反響はあるけれど、それを長く続けるには人を集めるのが難しかったそうです。地方に行けば行くほど労働者が少ないという課題があり、いかに関心を集めて人に参加してもらうかが重要だとか。

遠隔医療の取り組み

伊那市でもドローン物流、AIタクシーなど新産業にどんどん取り組んでいます。そうした取り組みの一つとして遠隔医療を紹介していただきました。

お医者さんは病院にいながら、患者さんはオンライン診療をします。高齢の患者さんはスマートホンも使えないので、動画に出てくる青い車に乗り込めば、中に必要な機材が揃っているという形で進めています。ネクステート社の遠隔聴診器を使うことで、聴診の信頼性が格段に向上したとか。

ここでもやはり人材が課題になります。遠隔診療の車を運転する人が必要ですし、搭載されている機器の技術が上がれば、診療看護師さんもそれに対応できるように教育が必要になります。また、診察して具合が悪いと分かったら救急病院との連携も必要で、今はまだ情報共有ができていないのですが、組織を超えた協力ができるようにしたいとのこと。

また、こうした取り組みを伊那市の外にまで広げていきたいけれど、自治体職員では他の地域への対応が難しいという課題もあります。問い合わせはたくさんあり、いろいろ相談に乗るものの、こういった新しい取り組みはなかなか上手くいかないようです。これまた越境人材が重要になります。産業の境、地域の境を超えて経済的インパクトをもたらしていく。既存の物流やメディカルサービスを破壊してイノベーションを起こす、そうした産業政策が必要ではないでしょうか。

越境政策

越境を推進すると、破壊と創造をもたらすので、必ずコンフリクトが起こります。ブーイングが起こります。それをどうやってマネジメントしていくか。地域文化や精神、資源に対して深い愛情がないとできないことです。困難を乗り越えて地域を良くしたいと思う気持ち、ギャップを解消するためのネットワーク力があれば、新しいエコシステムが育っていくでしょう。

越境人材が越境人材を呼び、対話によって覚醒する。そんな作用があって、新しい仮説が生まれます。最初にいいアイデアがなくても、仲間が集まって対話が成り立ち、周囲を巻き込んでいくことでプランができあがっていくのです。だからこそ、みんなが集まる共創の場が必要なのです。

とはいっても、マネタイズの部分はかなりしんどいです。場作りは各自が手弁当で始められるけど、そこでお金がまわるようなうまい仕組みを作るのは難しく、まだまだ周囲に支えられている段階です。そこで、こうした共創の場作りを活性化させるための政策提言の骨子案が提示されました。

  1. 越境人材の価値とスキル・行動の可視化と育成の仕組みづくり~主に「個人」「所属組織」の問題

  2. 越境人材が活躍し、新産業共創を促進する場づくり~主に「活動機会・場」「成果創出・実装」の問題

  3. 両者を結びつけ、持続的かつ相乗的・加速的に推進する仕組みづくり~主に「活動継続・自律的発展の仕組み」の問題

越境人材の価値、役割はまだ明確化していません。望ましい行動が標準化されていません。その存在が浸透しておらず、そのためなかなか普及しない。でも間違いなく価値あることは見えてきた。だから、その価値とスキル、役割を定義していく必要があります。個人の努力頼みではなく、組織としても越境人材を育成するように。

越境人材同士も、集まりながら一緒に絵を描いていきましょう。成果創出からファイナンスの仕組みまで、これまでのナレッジを共有して、どうやって動きを加速していけばいいかの絵を描いて、実装して、実証していきましょう。

アインシュタインは「自分が何をやっているか分かっているなら、それはイノベーションではない」と言ったそうです。私たち越境人材は、何をやっているか自分でも分からないけど、すごい情熱を持って行動してます。みんな変わり者です。組織では評価されなかったかもしれない。でも、そんな人たちが繋がって活躍していく場が生まれつつあるんだ、と改めて感じました。

大企業の越境人材に求めること

独立してベンチャー企業を立ち上げた人に比べると、大企業に籍を置いたまま越境人材として活動するのはいろいろと制約があって大変です。活動に全力投入できず、もどかしさを感じることも多いでしょう。では、そんな人は会社を辞めて独立するしかないのかというと、そうではありません。これから越境人材が繋がって広がっていくために重要なポイントは3つ。

  1. 一番重要なのは、社内のポジションをしっかりと確立した越境人材であること。社外への窓口となれること。共創の場で新産業の提案などがあったとき、あなたを通じてあなたの会社に協力してもらえれば、それが何よりの貢献となります。越境人材は全員が登壇者たちのようにとんでもなくアクティブに活動しなくてもいいんです。きちんと会社をグリップして、橋渡ししてくれることが、一番です。

  2. 社員を育てること。パーフェクトマンを育てる必要はありません。むしろパーフェクトになってはいけない。半人前であることを暴露して助けを求められる存在になること。そうやってお互い苦手なところをフォローしあい、得意なところでカバーして協力し合うこと。そうした越境人材の仲間を、大企業の中で育ててほしい。

  3. 勇気を持つこと。上とも共通する話ですが、まず自分が最初に弱みを言うこと。大企業で自分の弱みを見せるのは勇気がいると思いますが、それをすることで助けてくれる人が見つかるはずです。

これらを頭の隅において、みんなで新しい時代の共創の場を作っていきましょう。

視聴者の意見

「大企業にいて社会を変えることができるの?」と聞いたとき『いや、できません』「なぜ?」『社会の一部だからです』という会話をしたことがあります。社会の一部だから社会は変えられないというのは、本質的なコメントだと思います。

大企業が持つリソースがイノベーションのカギだと思っていたので、大企業とスタートアップの連携に着目してきましたが、少なくともカネとヒトというリソースの流動性が高まりつつあり、その流れが今後も拡大するのならば、社会を変える役割を大企業に求める必要はないか、という気持ちになりつつあります。

大企業側もスタートアップ側もベンチャーキャピタル側も、一緒になって変革を行っていくタイミングですね。

登壇者からのメッセージ

共創の場作りを活性化させるための政策提言は、実際に政府に提言するためにまとめていきます。ご意見ある方はぜひお聞かせください。よろしくお願いいたします。

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