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業界インタビュー10 建築(ハウスメーカー)の仕事

身近で働いている人にインタビューして、どんな仕事をしているのか、どんな課題を抱えているのか、といった話を蓄積していく企画の第10弾。今回はハウスメーカーです。

ハウスメーカーって何?

建築業界について調べると、いろいろな業態があることが分かります。デベロッパー、ゼネコン、ハウスメーカー、工務店。それぞれの関係を図にすると以下のように分類できるような気がします。違ったらごめんなさい。

図1

デベロッパーというのは、大きな土地をどのように開発していくか企画するところ。商業施設にするため巨大なショッピングモールを建てようとか、巨大なオフィスビルを作ってビジネス拠点にしようとか、大規模な住宅街を作って新しい街づくりをしようとか。会社名は○○不動産という名前が多い。

そうした大きな計画をもとに、実際に様々な建設作業を請け負うのが大手総合建設会社、いわゆるゼネコンです。会社名は○○建設という名前が多い。

ハウスメーカーは主に戸建て住宅を量産するのが得意で、工場で部屋のユニットを作って、それを現場に運んで組み上げるようです。会社名は○○ハウスとか○○ホームみたいな名前が多い。

工務店は、それぞれの街にいる職人さんが経営している小さな建設会社という位置づけで、自分たちで一から家を建てることもあれば、ハウスメーカーの下請けとして家の仕上げを担当することもあるらしい。

そんな建築業界ですが、今回は、ハウスメーカーさんの仕事について聞いたことを紹介します。

どんな仕事をしているの?

家を建てるのが仕事。何パターンもの部屋のユニットが用意してあり、それをいかに組み合わせるか、お客さんの要望を聞きながら設計する。設計が完了したら、ユニットを工場から現場へトラックで運んで組み立てる。だから工務店が一から家を建てるのと比べると短い時間で安定した品質の家が作れるという特徴がある。

重要なのはユニットとユニットの間の目地を埋めること。目地は日光を遮り、熱を逃がさず、雨が入らない必要がある。特に水をしっかり遮断するのが大事で、水が入ると鉄骨が錆びたり断熱材が濡れて性能が落ちたりしてしまう。シリコン系のゴムなどで目地を埋めるが、長い年月が経つとどうしても日光などで劣化してしまう。

お客さんは住宅のメンテナンスに対する意識が低い。建てたらそのまま30年住めると思っている人もいる。メンテナンスにお金がかかると言うと怒られることもある。なので、なるべく耐久性を高く長持ちさせること、また手間をかけずに簡単にメンテナンスできることが求められている。修理箇所が一目で分かる、補修もフィルムを貼るだけ、みたいなのがあると嬉しい。

住宅業界の今後の展望は?

少子化が進んで、住宅の需要は減っていきそうだけれど、ハウスメーカーの今後の展望はどうなっているのか。今まではとにかくたくさん家を建てて売ればいい、という形でやっていたが、このビジネスモデルだけでは厳しいところに来ているようだ。

そこで注目されるのは、デベロッパーの仕事に近い、街づくりの分野。最近ではトヨタのWoven Cityがかなり話題になったが、建物だけでなく、街、暮らし、健康など幅広く考えていきたい。高齢者が暮らしやすい、子育てがしやすい、環境に優しい、いろんな要望を叶える街づくりにチャレンジしていきたい。

企業と自治体が協力していくことも重要で、会津若松市の取り組みが先進的な事例として知られているらしい。株式会社まちづくり会津、という会社まで作って、官民連携で市街地活性化に取り組んでいる。

改善したい課題は何か?

職人さんの高齢化により、人手不足が深刻なようです。そのため省人化、省力化、省施工化が求められていました。建設工程をデジタル化する、なるべく工場内で作って現場作業を減らす、ロボットで施工する、組み立てやすい設計にする、などいろんなアプローチが考えられます。

今まで省力化のために外国人労働者を雇ったりしてきたが、そのせいで技術が若い人に伝承されていない、というのも課題のようです。親方だけが技術力を高めて、それを誰に受け継ぐこともなく辞めていく。だから、デジタル技術などを使って素人でも高いレベルの施工ができるようにしていきたい。

普通の戸建て住宅でも高い技術が必要とされるのはどんな場面なのか。たとえば、先ほどユニットとユニットの間の目地を埋めるという話があったが、そのためにパテを水と混ぜて練って壁に塗り、乾いたらケレンがけ(やすりがけ)をして平滑にする、というのを2~3日かけてやるらしい。

この平滑度合いが不十分だと、完成した壁がボコボコ歪んで欠陥住宅みたいになってしまう。太陽の光があたったときに光の反射具合が乱れると顕著に分かるので、本当に鏡面のように平滑にしないといけない。そういうところに技術が求められる。

もし、そういう目地を埋める作業も、なんかフィルムをぺらっと貼り付けるだけで終わったりすれば大幅な省力化につながると思うけど、なかなかそんないい技術は生まれてこない。

最近の顧客ニーズはどんな感じ?

高級路線と低価格路線で二極化している。ただ、住宅を購入するボリュームゾーンは子育てしている30代なので、低価格の方が需要は多い。

ちょっと上の世代であれば、かつて昭和の価値観で「就職して結婚して車と家を買って一人前」みたいな人たちなので、今でも家を買い替えるなら新築を選ぶことが多い。

一方、若い世代はシェアハウスとかメルカリとか浸透していることからも分かるように、中古マンションのリフォーム物件が人気。住宅へのこだわりは少なく、立地の方が重視されている。

国内需要は限界も近いだろうし、海外への進出も検討しているのだろうか? と聞いてみたところ、それもまた厳しいらしい。住宅には各国のカルチャーがにじみ出てくるので、基本的に日本のものそのままだと受け入れてもらえない。

地震のない国なら耐震性など必要ないし、気温、湿度など天候が違えば求められる通気性なども違う。国土の広さによって家のサイズ感も変わってくるし、どこまで現地にローカライズさせればいいか、やるとしたらかなり本腰を入れて取り組まないと、容易には海外展開できないようだ。

ただ、日本のハウスメーカーがやっているような建築の工業化は、海外ではあまり行われていない。大量生産で、安く短期間に住宅を供給できれば、一気にシェアを広げられるかもしれない。部屋ユニットを使ってトレーラーハウスを作るなど、いろんな参入の仕方を模索しているようだ。

ハウスメーカーの最近のトレンドはそんな感じでした。さて、ここまで家の構造や外装の話をしてきましたが、今回のおまけコーナーでは家の内装について触れていこうと思います。

おまけ:内装について

今回はハウスメーカーさんのインタビューで、内装は専門ではないので、いくつか聞いた話をトピック的に紹介します。

ユニバーサルデザインについて。ユニバーサルデザインっていうのはバリアフリーの延長線みたいなもので、住宅でいうと、右利きでも左利きでも不自由しないとか、車いすでも生活できるとか、こどもの安全に配慮されているとか、高齢になっても住み続けられるか、などを考慮した設計です。

たとえば扉。力いっぱい扉を開けたとき、バーンとぶつかるのは安っぽい感じがする。車のドアみたいにスッと心地よい閉まり方をする、動きを制御する、というのが求められる。

色について。色はユニバーサルに誰にでも受け入れられることよりも、顧客それぞれの好みに合わせてカスタマイズする方が求められる。黒色ひとつとってみても、深みのある黒の方が高級感があるとか言われる。黒なのに深みがあるというのは一体何を感じ取っているのか。

建材メーカーがそういった感性工学みたいなのに積極的に取り組んでいて、よりよい表面コーティングなどを研究している。化粧板ならアイカ工業、表面装飾なら凸版印刷や大日本印刷などが得意分野だろう。

ハウスメーカーは、そうした建材メーカーが開発した商品を使うだけで、あんまり自分たちで新しい住宅トレンドを作ろう、ということはできていない。昔はハウスメーカーの要望に合わせて建材メーカーが様々な内装品を作る、という構造だったけれど、最近は建材メーカーの作る汎用規格品の中からハウスメーカーが選ぶだけになっていて、力関係が逆転してしまっているらしい。

コストダウンを追求した結果、何か大切なものまで削ぎ落してしまったような感じがしますね。悲しい日本のメーカーあるあるです。

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