ひとり飲みの作法とは 酒場詩人・吉田類が語る「孤独を謳歌する方法」
「お酒に失礼なことはしない」。酒場詩人・吉田類さん(69)がお酒を飲む際、自分に課している掟だそうです。テレビ番組『吉田類の酒場放浪紀』(BS–TBS)で、全国の味わい深い居酒屋を訪ね歩いている吉田さんは、酒飲みたちの憧れの的となっています。東京・銀座で個展を開いていた吉田さんを訪ね、酒場で他の客とすぐに打ち解けるコツや「終始一貫して臨機応変」という座右の銘のワケを聞きました。(土井大輔)
※この記事は2018年6月8日、ひとりを楽しむメディア「DANRO」で公開されました。
「酒は人の上に人を造らず」
ーーお酒を飲むとき「これだけはやらないようにしている」という“自分ルール”はありますか?
吉田:「絶対に他人に迷惑はかけない」というのがあります。自分が楽しく過ごすための鉄則でしょうね。お店では他人とひとつの空間を共有するわけですから。自分が楽しく過ごしたかったら、やっぱり相手を認めるべきで。相手には一目置くようにしています。
ーーそれは、相手が若い人の場合も同じですか?
吉田:年齢は全然関係ないですね。「酒は人の上に人を造らず」。まさにその通りなんです。自由民権運動の思想家で植木枝盛という人が『民権数え歌』というのを作って、「人の上に人があっちゃいけない」ということを言った。福沢諭吉が『学問のすすめ』のなかで出した言葉でもあるわけですけども、植木も私も土佐出身だから、それをもじった表現があってもいいんじゃないかと思っていて。「酒は人の上に人を造らず」。これを肝に銘じています。
ーーひとりで居酒屋に行く場合、他のお客さんにどうやって話しかければよいのでしょう?
吉田:僕の場合、下町の大衆酒場が自分のエリアだったから、お店に入ると、いきなり知らない人と顔を見合わせるわけです。「コの字」カウンターだと特に。すると、ひと口目でだいたい他の人と視線が合うので、「ニコッ」としてから飲む。これでもうOKです。
ーー『吉田類の酒場放浪記』では、いつも陽気にお酒を飲まれていますが、いわゆる「ヤケ酒」をすることはないのでしょうか?
吉田:そういうお酒に失礼なことはしません。これまで自分の悲しみを癒すためにお酒の力を借りたことがあったかもしれませんが、だからといって、ヤケにはなりません。お酒によって癒されるんです。特に、17年間飼っていた猫が死んじゃったとき。5年くらい立ち直れなかったんです。その悲しみを癒してくれたのは、お酒でした。
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