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道端の「片手袋」撮り続けて13年――人間ドラマを妄想する「孤高の研究家」
世の中にはいろいろな研究者がいますが、「片手袋研究家」という風変わりな肩書きを名乗る男性がいます。町なかを歩いていると、道端に手袋が片一方だけ落ちていることがあります。そんな片方だけの手袋を撮影して記録に残し、手袋の落ちた状況や原因などを考察するのが、片手袋研究だというのです。
10年以上にわたり研究に取り組んでいるのは、東京都文京区に住む自営業の石井公二さん(37)。メディアに取り上げられるなど注目を集めています。最近では、人気番組「マツコの知らない世界」(TBS系)に出演して話題となりました。
片手袋を研究しているのは、世界広しといえども石井さんだけとのこと。「孤高の研究」を続ける石井さんに、なぜそんなことをしているのか聞いてみました。(三好尚紀)
※この記事は2018年5月23日、ひとりを楽しむメディア「DANRO」で公開されました。
「見つけたら必ず撮る」4000枚に及ぶ片手袋写真
――片手袋研究は、写真の撮影から始まるということですが。
石井:落ちている片手袋を見つけたら、携帯で必ず撮影します。13年間撮り続けて、これまで撮った写真は4000枚以上。もう義務みたいなものですね。撮影しないと気が済まないんですよ。たとえば、終電を逃してタクシーで帰宅しているとき、窓からたまたま片手袋が落ちているのを見つけちゃうと大変です。自宅に着いてから、自転車で片手袋が落ちていた場所まで戻って撮影しなければ、気が済まないんですよ。
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――13年で4000枚だと、1日1枚ペースになると思いますが、そんなに多くの片手袋を見つけられるものですか?
石井:だんだんと目が肥えてきます。撮影を始めた頃と比較すると、見つける枚数は圧倒的に増えましたね。ぼやっと見た景色の中に違和感を見つけるというか・・・。これだけ片手袋を見てくると違和感に気づくようになるんですよ。20メートルくらい手前で違和感を覚えて近づいてみると、やっぱり片手袋だったみたいな。
――家族と一緒にいるときでも、片手袋を見つけたら写真を撮るんですか?
石井:もちろんそうです。妻はもう諦めていて、一緒に歩いているときに僕が写真を撮り始めたら、スタスタと先に行ってしまいますね。一方、8才の娘は、生まれた時から僕が片手袋の写真を撮っていたので、むしろ自然に感じているようです。片手袋と娘を一緒に撮ったりもしていたので、いまでは、娘が片手袋を見つけると、無言で片手袋の横に立つようになりました。
「絶対に触ってはいけない」片手袋撮影の厳格なルール
――そもそも撮影を始めたきっかけは何だったんですか?
石井:片手袋のことは、幼少の頃に読んだウクライナの『てぶくろ』という絵本がきっかけで、ずっと気になっていました。そして、20代のある日、僕の家の前に片手袋が落ちていました。手元にたまたま買ったばかりのカメラ付き携帯があったので、撮ってみたんです。それからすぐに2枚目を撮って。いつの間にか、続けなければいけないっていう義務感がわいてきて、やめられなくなってしまったんですよね。
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