【のーがたのーと】どなたでも利用できる店作りを目指し、人との繋がりを未来へと受け継ぎたい。/「イカ焼き屋」内野剛司さん
福岡県直方市の直方駅から徒歩1分の場所にあるイカ焼き屋。イカ焼きに加えて駄菓子や軽食、新鮮野菜なども取り扱っており、店先から流れる明るい音楽が地域の子どもたちの拠り所となっています。
昼過ぎには、子どもたちだけでなく、年配の方や、中には愛犬を連れた方など様々なお客様が訪れ、常に温かい空気に包まれている”イカ焼き屋”を営んでいるのが内野さんです。
内野さんはある思いからこのお店を始められました。今回のインタビューでは内野さんの思いについてお話を聞くことが出来ました。
過去の経験がイカ焼き屋の今を作っている
筑豊で生まれ、一時期は対馬で漁師もされていた内野さん。当時の対馬には子どもたちが好きな駄菓子店などが無かったため、子どもたちに美味しいものを食べさせてあげたいと思い、島で獲れるイカを使ってイカ焼きの移動販売をしていました。
そんな中、元々福祉に興味があった内野さんは、母の認知症を機に介護についての資格を取り、福祉の世界に関わるようになりました。その後、取得した資格を生かし生まれ育った筑豊の地で福祉関係の仕事をされていました。
福祉の現状を見て自分の“やるべきこと”に気が付いたといいます。
「全国的にもですが、直方市も福祉に関するサポート体制が大きく遅れていると思うんですよ。だから福祉に関して何か出来ることはないかと思いました。昭和の時代にあったような人と人とが触れ合え、発達障がいや身体に障がいを抱える方々や不登校、引きこもりの方々も来店することが出来るコミュニティづくりをしようと思いました。」
コミュニティを作り、すべての方々が気持ちよく暮らせるように内野さんは3年前このお店を始められました。
すべての人への“やさしさ”が詰まったお店
お店にはすべての人が快適に利用できるようにと、内野さんのこだわりが沢山あります。
・店先で流れている音楽
まず電球がともる店先では常に音楽が流れ、弱視や難聴を抱える方でもお店にたどり着きやすくなっていました。
視覚障がいの方が盲導犬と来店されることもありますが、内野さんは視覚障がいの方と関わることで子どもたちにとっても学びがあると考えています。
「視覚障がいの方との関わり方や盲導犬に対する接し方を学ぶことで、色々な方がいるという事を知ってもらう機会になればと思っています。」
・すべての方々が利用しやすい多目的トイレ
次に店内に入ると、個人のお店では見かけることの少ない多目的トイレがあり、収納式のおむつ交換用の大型ベッドも備え付けられていました。
・注文時に利用できる札
そして食事の注文は札で行うことが出来るため、聴覚障がいや聾唖者の方でも簡単に注文することが出来るようになっています。
我々取材班も、札を利用した注文で名物のイカ焼きをいただきました。とろとろの卵の食感と鼻を抜ける海鮮の風味がうまくマッチし、くせになる美味しさがありつつも、どこか優しい味わいで絶品でした。お店では名物のイカ焼きはもちろん、ランチメニュー等の定食もあります。
お店を始めるにあたって、内野さんにはあるコンセプトがあったといいます。
「コンセプトは心と身体のバリアフリーの店。障がいがあっても車いすでも、貧困層や買い物難民の方等すべてのお客様に利用していただける店を作りたいと考えています。」
内野さんの"思いとやさしさ”が込められた誰もが利用しやすいお店となっています。
他にも内野さんは不登校や引きこもり、発達障がいを抱えた子どもたちへの活動も行っています。
イカ焼き屋に隣接する多目的スペースを使って通称”未来塾“を実施しています。また、駄菓子を買いに店に来る子どもたちには積極的に声掛けをし、子どもたちが相談しやすい環境づくりもしています。
そんな内野さんが思い描く未来とは-
内野さんが思い描く未来
すべての方々に"やさしい"お店を作っている内野さん。お店を経営する中で大切にしていることを話していただきました。
「人との繋がりが希薄になってきていると思うんですよ。だからこそ人との繋がりを大切にするために色々な活動に取り組んでいます。」
活動を通して出来たご縁を大切にして当初の目標だった福祉を中心としたコミュニティが今、直方市に生まれつつります。内野さんは今後についても見据えています。
「70歳までの間に事業継承かな。お店を継承出来たらいいなと思っています。」
自分と同じ志を持つ人を募りお店を継ぐ。直方市で生まれたこのコミュニティを今後も繋いでいくことが内野さんの考える未来です。
今日もイカ焼き屋は様々なお客様で賑わっています。
店舗情報
店舗情報
「イカ焼き屋」
営業 :11:00~18:00
月曜定休
住所 :〒822-0027
直方市古町1-6 安田ビル1階 直方駅から徒歩1分
電話番号:094-958-9135
お店のインスタグラム
文・編集:難波友哉
取材 :甲斐、難波、鶴、青木
撮影 :青木