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「教員という仕事に限界を感じていたころ、DANROと出会って」DANRO卒業生インタビュー

人と人とのつながりの中には、”目には見えない温かさ”がある。その温かさが増し、循環する時、きっと、世界は今よりもっと明るくなる。そんな創業者の想いから生まれた『深いつながりを紡ぐ、実践型対話スクールDANRO Autumn』が2023年12月に最終回を迎えました。卒業生へのインタビュー記事を、数回に渡りお届けします。

今回は、関東地方で小学校教員をされているまりさんにお話を伺いました。理想を持って教員になったものの、理想と現実の壁を感じ悩みを抱えていたというまりさんがDANROを通じて感じたものとは……。

お金と時間をかけて回収できるものは?


――DANROへ参加のきっかけを教えてください。

まりさん:小学校の教員をして3年目なんですが、教員として悩むことが多くてこのまま続けられるかなと悩んでいたんです。

そんな時期にインスタグラムで心が軽くなる言葉を見ていたときに出てきたのが、今回のファシリテーターであるいつみさん。そこで“自分と向き合うDANRO”というコミュニティがあることを知って参加してみようと決めました。

――説明会ではどんなことを感じましたか?

まりさん:講義型かなと思っていたら結構自分が話すという場面がたくさんあって驚きました。アウトプットする場や自分を表現する場って意外とないので、こういうのって重要だなと感じましたね。

自分のことをジャーナリングしている人は周りにいないので新鮮でしたし、仕事以外に“自分が出せる場”がほしいなとも。

――これまでにオンラインのコミュニティに参加されたことはありましたか?

まりさん:ないですね!仕事につながるようなオンラインの講義に参加することはありましたが、“私”として、自分として参加するっていうのはなかったです。

最初はどんな感じなんだろうと不安もあったのが本音。でもみなさん雰囲気もやわらかく、それぞれ想いを抱えていらっしゃったので安心して参加できました。結果として、仕事につながることも多かったです。

――不安もあったかと思いますが、参加の決め手になったものはなんだったのでしょうか?

まりさん:創業者の和花さんが「自分が一番自分のプロ。自分の右に立つ者はいない」という話をしてくださったことです。

やっぱりこういうコミュニティに入るのが初めてだったので“お金をかけて2ヶ月間参加してその分の回収があるのか?”というところまで考えちゃっていて。

でも和花さんのその言葉があったことで“自分のことをもっと楽しもう”と、まずそこで前向きに捉えられるようになりました。

――まりさんにとって初めてのコミュニティであるDANRO。参加してみていかがでしたか?

まりさん:参加前にDANROのサイトや記事を見ていたときには「そんなに変われるの?」と思ったし、やっぱり言葉にするときれいになりがちなところもあるんですが、対話を“経験する”ことで分かることがやっぱりありました。

DANROは対話を学ぶ場所でもあるので、ただ自由に話すのではなくて、聴き方の姿勢を体験したり話を聴き終わったあとにこうしようというワークもあります。

それを繰り返すうちに、対話ってこういうふうにすると深められるんだ、とか相手から話をしっかり引き出せるんだ、ということが実感として分かってきました。本を読んで学ぼうとするよりも、体験として感じることが大きいなと感じられました。

――私も毎回インタビューをさせていただいていて、不思議だなと感じます。全員が全員、何かしらの変化を感じていますから。やっぱり体験しないと分からない何かがあるんだなと思います。


教員の「理想」と「現実」のギャップを感じてつらい日々


――まりさんは学校の先生をされているのですね。

まりさん:親が医療系の仕事をしているので私もそうなるのかなとは思っていたのですが、学校という場に色々思うことがあり「自分が教員になり現場に出てみよう」というところで教員になりました。

――どんなことを学校に対して感じていたのでしょうか?

まりさん:やっぱり学校には教員が子どもに教える、という構図がありますよね。“先生の言うことは絶対”という圧力のようなものや、学力競争になってしまう環境が嫌だなと私はずっと思っていたんです。

テストを受けて順位で席順を決められることで、クラスメイトとの関係もギクシャクしてしまうこともあって。「順位で席を決められるのが嫌だ」ということを担任の先生に伝えたときに「じゃあ頑張れば?」と言われて、私の感じていることに全然寄り添ってくれないなともやもやしました。

子どもが好きだし、子どもと一緒に安心して過ごせる場をつくっていきたいという想いで教員を目指して今に至ります。

こどもたちからもらった宝物

――そうだったのですよね。みんながまりさんのような想いを持った先生だったら安心して預けられるのになと思いました。DANROに参加する前は、どんなことに悩んでいましたか?

まりさん:「こういうふうにしたい」という想いを持って教員になったけれど、自分がしたいものと、周りから求められている教員のふるまいにギャップを感じてしまって。

教員として続けていくのならそういう対応も身につけていかないといけないのかなと思ったらつらくて、家に帰ったらずっと泣いていました。一緒に住んでいるパートナーには「無理しなくて続けなくていいんじゃない」と言われて、そのほうがいいのかもと思うこともあるくらい。

――どんなところでギャップを感じていましたか?

まりさん:想いはあっても、教員の規律もやっぱり大事だということも分かったし、クラスにはいろんな子がいて、周りの先生からの目もあって。

このご時勢もあり「給食は黙って準備して、黙って食べさせなさい」というルールがあったのですが、私はうまく子どもたちをそうさせられなくて他の先生に注意されることもありつらさを感じていました。

――話してくださってありがとうございます。高い志を持って教員になられたまりさんだからこそ、感じるつらさがあったのですね。


改めて感じた教員という仕事への想い


――DANROに参加して変化はありましたか?

まりさん:DANROに参加する前は漠然とした悩みを抱えていて、感情的になっていたところもありましたが、そこの“もや”みたいなところに目を向けることでクリアになっていきました。

「心の中のモンスターを見つける」というワークの中で“うまくやりこなそうとする、完璧に目指そうとするモンスター”などいろんなモンスターが自分の中にいることに気づけたんです。

それだけじゃなく、どうしてそのモンスターが生まれてくるのかというところも見えてきたから、ただ悩んでいるだけではなくて「じゃあこうしよう」という思考につなげられるようになりました。

一緒に時間をともにしたDANRO Autumnの仲間と

――具体的なエピソードなどあればぜひ教えてください。

まりさん:教室の状況を自分の力量だと同一化しているところがあるなと気付けたのが大きかったです。

例えばクラスが騒がしくて上手に学習へ向けさせられてあげられていない状況があって、支援の先生も入ってくださるような場合に「できない自分」「サポートを受けないとダメな教員」というふうに思ってしまっていたんですが……。

それは“一人でなんとかしないといけないと思っているモンスター”が自分の中にいて、なんでも一人前にやらなきゃという焦りがあったとのだと思います。そういう志は大事にしつつ、“自分とクラスの子たちは別のこと”と分けて考えられるようになりました。

子どもたちは自分一人で見なきゃいけないのではなく、みんなで見ていくものと思えるようになったことで、自分を責めなくていいよと自分に言えるようにもなったんです。

――より俯瞰的な視点で見て、感じられるようになったのですね。素敵です。

まりさん:そうですね。それから子どももいろんな要素を持っていて、いろんな背景があってここにいるのだから、その子に影響を与えられるのは一部分しかないと良い意味で感じられましたし、他の先生のクラスのことも他人事に思わないで協力しようと思った。

やっぱり責任を持って見ている子どもたちだから「頑張りたいな」とか「居心地がいいな」という感じてもらえるような場にしていきたいとも感じましたね。

――辞めたほうがいいのかもと思っていたとおっしゃっていましたが、今は教員というお仕事に対しどんな気持ちでいますか?

まりさん:DANROを通して自分のことを深く知れたし、それによってやっぱり教員であることにアイデンティティを持っているということも分かりました。

まりさん:そもそも教員になった理由も自分の経験があってのことだから、良くも悪くも仕事と自分をなかなか切り分けられないこともあります。自分をよく知れば知るほど仕事にも生きてくるところはある。逆にうまくいかないところがあれば自分につながるように感じることもある。

それでも、この仕事を自分の天職としてやっていきたいな、続けていきたいな、という気持ちを取り戻せたような気がします。

そこから逃げようと思ったこともあって、それも悪いことではないけれど、やっぱり「やりたいからやっているんだ」と思えたんです。これからはもっと対話を極めて専門的な知識やスキルを身につけていきたいなと思っています。

――対話は子どもとの関係性にも生かせていけそうですか?

まりさん:そうですね。担当が小学校1年生なのですがきちんと話は通じるし、なかなか建設的な話は難しい子もいるけれど、話せば分かる子もたくさんいて。

今までは「目の前の子を変えなきゃ!良くしなきゃ!」という気持ちが大きかったけれど、今は「いずれ子どもたちは成長していくし、今の成長段階のところでめいっぱい生きていてほしいな」と思って接しています。

子どもと話をするときも、これまではゴールに向かって話しているところがありました。例えばケンカをしてしまったら“最後はお互いにごめんねと謝ってもうやらない”という方向に持っていこうとしたり、反省してくれればいいなと思ったり。

でも今はその子の深い部分にあるものに目を向けようと意識できているんじゃないかなと思います。

――実際にどんなときにそう感じたのでしょうか?

まりさん:持ち物にいたずら書きされたという子がいて、はじめはクラスの子にやられたと言っていたんです。でも、聞いていくうちにその子が自分でやったのではというところが見えてきたんですよね。

その子は質問に答えられなくて、涙をうかべていて。そこで「もしかして涙を浮かべているということは、先生に言えてなくてもやもやしていることがあるんじゃないのかな?」と聞いて見たら「うん」と。

「人間誰でも間違えちゃうことはあるし、もし自分でやっちゃったと言っても先生は怒らないし、正直でいてくれるあなたが好きだよ」と伝えたら、正直に話してくれました。

ちょうどDANROで“相手の表情から見えることを伝えてみよう”というワークをしたあとだったんです。それが生きたなと思う瞬間でした。

――本気で子どもと向き合おうと思ってくれている先生がいるんだなとまりさんの話を聞いて希望に感じました。そういう世界が広がっていってほしいです。貴重なエピソードを聴かせていただきありがとうございます。


きれいではない、泥臭い対話も大切にしたい

――DANROはまりさんにとってどんな場所ですか?

まりさん:“自分に自信を与えてくれた場所”ですね。やっとスタートラインに立ったなという感覚。これまでの自分は常に足りない部分を見てしまったり、子どもに寄り添いたいけどどうしたらいいのか分からなかったりして悩んでいました。

でも対話って、うまく話すとか相手の求めていることを言うとかではないんだなと感じられた。話すのは得意じゃないけれど、傾聴ならできるかなと感じられています。相手がどう感じているのかなと観察して聴こうとすると、見えてくるものもあるんです。

今はDANRO Beyondに参加していて。DANRO Autumnでスタートに立って、 Beyondで深めていっているような、そんな感じです。

――DANROやBeyondでの学びを通じどんなことを感じていますか?

まりさん:Beyondでは、ちょうど“美しさ”というところをフォーカスしているところなのですが、美しさについて考えることってなかったなと。

それが仕事に直接影響するとは思われないのかもしれないけれど、仕事で現れている姿が氷山の一角だとしたら、直接的に見えていない水面下の部分、人生哲学のようなものが深まっているやうに感じていて。

Autumn、Beyondを通して人間性が感化されている感覚があるし、もっと自分が味わいのある人間になりそうだなと期待しています。

――対話に関してはどう感じていますか?

まりさん:目の前の人と向き合うには、対話が重要だなと改めて感じています。でも、対話ってきれいなものばかりじゃないと思うんです。

例えば、学校ではクラスメイトと向き合っていく中で苦手な子や嫌いな子がいても関わり続けなければいけないんですよね。仲良くはしなくても共存していかなければいけないという状況で、大事なのは“きれい”なだけじゃない対話。

言葉よりも手が先に出て相手を傷つけてしまったり、デブやバカなど言葉が暴力になってしまったりがやっぱりあって。クラスのみんなで嫌なことがあったりされたりしたときにどうしていけばいいかなという話し合いをしたんです。

そのときに嫌なことは嫌だ、こういうふうにしてほしい、ということを伝えていかないと相手はわからないから“言葉で伝えていく”ことの大切さを話し合いました。

ーー子ども同士でも対話が必要なのですね。

まりさん:きれいにはいかないですが、やっぱり対話はみんなができていったほうがいいなと感じますし、私自身も泥臭く対話を続けていきたいです。

「子どもたちがいろんな人と折り合いをつけて共存をできるようなサポートをしていきたい」という、私の教員としての願いが生まれたのがDANROだなと思っています。

――心温まるエピソードをありがとうございました。何度か何を聴こうとしていたのか分からなくなるほど、まりさんのお話に胸がいっぱいになりました。まりさんのような先生が増えてくれたらいいなと思うし、まだまだ日本の教育も捨てたもんじゃないなと思えました。ありがとうございました!



まりさんについて

小学校教員になって3年目。理想と現実のギャップに苦しんでいたところにDANROと出会い、新たな気持ちで教員生活に臨めるように。

DANROについて

「日常に対話を、対話を文化に。」をスローガンに掲げるダイアログカンパニー。私たちがともにこの世界に生きていくために、人、自然、社会など全体性を探求しながら、循環し合える空間を創造しています。
実践型対話スクール、DANRO CHILDREN、自己を探究するダイアログコミュニティの運営などを行う。その他対話を軸とした事業を展開。
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▼実践型対話スクールDANROの詳細は、下記からご覧ください

インタビュアー・記事/山中麻衣
「想いをつなぐ」取材・インタビューライター。その他企業と読者をつなぐwebライティングも。公式noteは<こちら>

小林 夏花
「光を感じる空間と 懐かしさとありったけの想いを」をコンセプトに全国で活動するフォトグラファー。DANRO Autumn参加者でもある。Instagramは<こちら

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