【無精子症について】100人に1人の割合だけどそんなに珍しい割合でもないという話
精液検査を行って精子の数や状態で4つに大別されます。乏精子症、精子無力症、精子奇形症、無精子症。
今日は、この中でも最も重症である無精子症についてです。
無精子症とは何か?
無精子症とは精液中に精子が全く無い状態をいいます。精子がゼロなわけです。
近年増加傾向にあり、男性の100人に1人は無精子症であるといわれています。1%ですから全然あり得る数字ですね。
私は角膜が徐々に円錐状に尖っていく円錐角膜ですがこの症状は2000人に1人だそうです。
また妻の友人は10000人以上に1人の病気で、毎週注射をして発熱をして寝込むというルーティンを一生しないといけません。
ですから1%なんてよく起こり得る話なんです。
無精子症は閉塞性と非閉塞性の2タイプに分けられます。
・閉塞性は、精巣内で精子が作られているものの精子の通り道が塞がっている状態。
・非閉塞性は、精巣内で精子が全く、もしくはほとんど作られていない状態です。
そして無精子症の8割は非閉塞性無精子症といわれています。
無精子症だと精液中に精子がいないのだから精液が出てこないとか透明な精液が出てくるとイメージされる人もいるかもしれませんが、見た目の大差はありません。
まして、基本的には自分の精液を他人と比べることなどありませんから自分の精子が無精子症かどうか見ただけで判断することなどできません。
そして、精子は極々小さいもので顕微鏡でなければ見ることはできません。
そのため、通常の精液と無精子症の精液の特徴には違いはないとされています。
精液の色やニオイ、粘り気の違いが見られることもあるでしょうが、精子の有無ではなく精液が原因で起こります。
精液と精子は違うのです。
原因は一部解明されてきています。
閉塞性無精子症の場合、精巣輸出管、精巣上体管、精管、射精管といった精子の通り道が尿路感染や性感染症、子供のときに受けた鼠径ヘルニアの手術の後遺症により閉塞することが原因で起こります。
非閉塞性無精子症の場合、ホルモンの異常か、精巣の造精機能に何らかの問題があるかのどちらかが原因と考えられています。
ただし具体的な原因を突き止めるのは困難な疾患になります。
無精子症になる遺伝子異常発見
近年、無精子症の原因となる新しい遺伝子異常が発見されました。
Stx2 遺伝子ノックアウトマウスは精子形成不全を呈することが知られていましたが、ヒトSTX2 遺伝子の機能は不明でした。われわれは、国内の医療機関を受診された日本人非閉塞性無精子症患者さん131例を対象としてSTX2 遺伝子シークエンス解析を行いました。結果、1例の患者さんにホモ接合性フレームシフト変異 [c.8_12delACCGG, p.(Asp3Alafs*8)] を同定しました。その患者さんの精巣では、Stx2 遺伝子ノックアウトマウスの精巣組織像の特徴的所見とされる「多核化精母細胞を伴う減数分裂停止像」が見いだされました。STX2 がヒト無精子症の原因遺伝子の一つであること、さらにSTX2変異は特徴的な精巣内の細胞の変化を招くことが明らかとなりました。原因不明の男性不妊症患者さんの一部には、この遺伝子の変異を持っている方がいると推測されます。出典:Shigeru Nakamura, Yoshitomo Kobori, Yoshihiko Ueda, Yoko Tanaka, Hiromichi Ishikawa, Atsumi Yoshida, Momori Katsumi, Kazuki Saito, Akie Nakamura, Tsutomu Ogata, Hiroshi Okada,Hideo Nakai, Mami Miyado and Maki Fukami
発見され、可能性の示唆に留まっているにすぎませんが、もしこの遺伝子が原因で起こっているのであれば、遺伝子をどうにかすることで無精子症を回復させることができる未来を期待してしまいます。
無精子症の治療方法
無精子症には閉塞性無精子症と非閉塞性無精子症がありますが、治療方法にも違いがあります。
閉塞性無精子症の治療方法
自然妊娠を望んでいて、女性側に不妊原因がなくカップルの年齢が35歳未満の場合には精路再建手術という方法があります。
精路に閉塞がある場合にその部を取り除いて精路を再建します。
その閉塞部位によって方法が異なります。
精路再建手術は、精路通過障害を解除できれば、射出精液中に精子が認められ、自然妊娠が期待できる治療法になります。
非閉塞性無精子症の治療方法
ホルモン異常が原因の場合は、ホルモン剤を注射することで精子が精液中に出現する可能性があります。
また、MD-TESE(精巣内精子採取術)と呼ばれる手術で精子を探すこともありますが、精子の採取成功率は30%ほどです。
精子が一つでも見つかれば、採卵した卵子とともに顕微授精を行って妊娠できる可能性があります。
手術方法によって採取成功率や再発率などに違いがあります。まとめたものが以下になります。
無精子症でも妊娠できる?
無精子症であっても妊娠の可能性はゼロではありません。顕微授精の場合理論上は1匹でも精子が見つかれば妊娠の可能性がでてきます。
ただ、ここで見落としていけないことがあります。
せっかく奇跡的に見つかった1匹の精子が動いていないと結局なにもできないのです。
これは不妊専門医が話している内容ですが、せっかく発見された1匹の精子も稼働していなければ妊娠には至りません。
不妊治療は経済的にも精神的にも非常に大きな負担になります。
何年も継続できるものではありません。
現実を見て、どこまで治療をするのかを夫婦で話し合うことが非常に重要だと思います。
あそこでこうしていれば、あの時やっていればと後々後悔しない選択をしてください。
コロナと無精子症
研究によれば、コロナウイルス感染から回復した男性を調べた結果4分の1が無精子症か乏精子症だったそうです。
元々そうだったのかまでわかりませんし、まだ確実な事とは言えません。
コロナ関連としては今後様々は情報が飛び交うと思いますが、確証を得た情報となるのはまだまだ先の話ですので全てを鵜呑みにしないようにしましょう。