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#38 岩手県紫波町でのディープな3日間滞在記(の後編)
6/27(木)〜6/29(土)の3日間、岩手県紫波町にて「地方創生実践塾 」というセミナーに参加してきた。
紫波町といえばオガールがもちろん有名なのだが、ノウルプロジェクトなど次なるプロジェクトも続々進行中であり、今回参加したのは、そのプロジェクトの内容を垣間見つつ、当事者である方たちの話を直接聴いてみたいと気持ちが抑えられなかったというのが大きな理由。
(こんなに豪華な顔ぶれが揃う機会は滅多とない!)
それに加えて、紫波町というまちは、公民連携に関わる人たちがみんな大きなエネルギーを持ち、さらにそのエネルギーが人と人との関係性により増幅されているような気がして、それがどんな風に形成され、広がっていっているのか、その裏側を覗いてみたかったというのがもう一つの理由。
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参加の目的は濃厚な3日間によって何百%も果たせたので、僕的に感じたことなどを第三者にもお伝えしたく、今回の滞在記(インプットしたことのアウトプット)としてまとめてみることに。
前編では初日の部分を書いたので、この後編では2日目と3日目の内容をお届けしたい。(前編はこちらからどうぞ↓)
オガールさんぽ
2日目朝イチのプログラムはオガールを巡るフィールドワークからスタート。
オガールを訪れるのは、今回が3度目となるのだが、ここは来るたびに色んな発見がある。
というのも、この場所が単にハード的な整備ではなく、幾重にも重なったレイヤーの中にコンテンツやハードが構成されていて、そのレイヤーのどれもが重要なエッセンスになっているからだ。
広場の置かれ方・アーケード・全体のスケール感などのデザインルールがガイドラインとして先に決められ、その上に多くのレイヤーが重ねられていて、良質な空間の骨格となっている。
そこに、様々なコンテンツとそれを営む人たちで多色に彩られていて、それでいて全体に統一感があるから非常に心地が良いのだ。
ただ、これを言葉にするのは非常に難しい(笑)
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竹内昌義さん講義「脱炭素とは何か」
フィールドワークの後は講義タイム。
2日目はオガールやノウルプロジェクトに参画するこの世界の第一人者の講義が満載のプログラムであったが、その先陣は、我らが断熱男こと竹内昌義さん。
僕にとって竹内さんは断熱の師匠でもあり何度も話を聴いているが、毎回その断熱感が増している気がする(笑)
(ちなみに僕は断熱二郎から断熱ベジータへトランスフォームしたことになっているが、それも紫波町での出来事ww)
竹内さんの話を聴くと、日本はなぜ脱炭素社会から遅れをとっていて、世界の情報が断片的にしか入ってこないのか?ということを改めて実感する。
あまりにも僕たちは世界標準を知らなすぎるのだ。
脱炭素は難しいという雰囲気を作っているのは誤った情報であり、地球温暖化懐疑論者が、何も改革しなくても良いじゃんというポジショントークによって情報の非対称性を生んでいると竹内さんは言う。
本当にその通りだと思う。
日本もやればできるし、遅れている理由は変わりたくないだけということと、変わらない自治体は住民から選ばれなくなるという言葉が胸に刺さった。
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ちなみに、竹内さんの話は横道に外れて、時間オーバーになることが多いのだが今回もお見込みのとおり(笑)
本当は詳しく聞きたかったノウルプロジェクトの話は、昼食タイムに食い込んでしまい駆け足というか猛ダッシュで終わってしまった(笑)
余談であるが、約20年前に建てた自宅を僕は自身で設計したのだが、もっと断熱しときゃ良かった(当時は結構断熱したつもりだった・・・)と後悔しながら暑い家でこの文章を書いている(笑)
断熱はホントに大事!
長谷川浩己さん講義「いまの、その次の風景」
長谷川さんは日本ではあまり聞きなれないランドスケープアーキテクトの第一人者で、オガールの広場やノウルプロジェクトのランドスケープをデザインされている方である。
長谷川さんの話は本当に詩的であり、講義を聴いているというより、何か物語を聴いているような気分になる。
太古の昔からその場所にある風景に、時代時代のレイヤーが重ねられ、現在の風景が作られ、そして未来に続いていく。
その土地の気候、土地の条件、風土、産業の構造・・・それらをどう捉えてどういう風景が一番フィットするか?
古から続く風景の土台の上に、新しく創るものがちゃんと乗っかっていて、ちゃんと見えるかどうかをチューニングするのがランドスケープアーキテクトの仕事だと長谷川さんは言う。
時間軸に沿って、決してそれを歪めることなく、理にかなった風景としてデザインされたランドスケープ・・・オガールがこんなに心地いいのは、そんな風景の物語が紡がれているからに他ならないと改めて感じた。
一方で、僕がこれまで仕事してきた公共施設や公共空間において、ランドスケープという概念はほとんど登場することがなかった。
建築の外構の一部だとか、土木的な造成の中で処理されてきたからである。
長谷川さんの話を聴いて、ランドスケープデザインの重要性を身にしみて感じたのと、いつか長谷川さんのような方と仕事をしてみたいと思わずにはいられない講義であった。
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岡崎正信さん講義「風景から稼ぐ仕組みをつくる逆算開発の本質」
長谷川さんの荘厳な物語の後は、ついに待ちに待った岡崎さんが登場。
僕にとっての岡崎さんって、ハテ?どんな存在なのだろう?
師匠と言うにはおこがましく、憧れの人というか、会いに行ける推しのアイドルみたいな人?まぁ定義はともあれ大好きすぎる方である。
ではどこが好きなのかというと、事業家としての実行力はもとより、高すぎる人間力、圧倒的な指導力に加え、面白すぎて困るところ、セクシーさ、あとどこまでも通る声が好きだったりする。
ちなみにこの日も白いTシャツから少しだけ透けて見える乳首がとってもセクシーだった(笑)
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今回はオガールにとどまらず、ノウルプロジェクトの話もたっぷり聞けると思って楽しみにしていたが、画面に映し出されたのは、1枚の折れ線グラフのような図。
なんの話だろうと思って耳を傾けていると、どうやら岡崎さんの人生の浮き沈みを表したグラフで、この後延々と岡崎さんの過去の自虐ネタが続く。
この1枚の図だけで50分間、人を笑わせ続けられるのは、世界広しといえど岡崎さんくらいのものだろう(笑)
一中一新、吉宗、詐欺・・・腹筋トレーニングかというくらい腹を抱えて笑わせてもらった(笑)
少し真面目な話に戻すと、今回参加した目的の一つとして、この界隈の第一人者の方たちがどんなプレゼンをするのか、そのテクニックも知りたいというのもあったのだが、岡崎さんのプレゼンは大いに刺激になった。
僕は、パワポ資料を比較的多めに用意することが多いのだが、パワポがなくても人生のストーリーだけで、こんなにも人を惹きつける岡崎さんって、やっぱり凄すぎる!
持ち時間の半分以上を折れ線グラフだけで費やした岡崎さんであったが、後半の話はうって変わって、金言の嵐。
詳しく書くとそれだけでnote1本分になってしまうので省略するが、オガール・ノウル・南城市の貴重な話を聴くことができた。
・作ってから売るのではなく、売ってから作る
・朝出ていって家に帰るまでに就きたい仕事が見つかるまちを創る
・仕事があるから人が住むのではなく、いい暮らしがあるから人が住む
・豊富な選択肢の中から住む場所として選択してもらえるか?
・一次産業がなくなればローカルがなくなる
・ローカルには風景がある
・万人受けしなくとも1%の人がローカルに来てくれたらいい
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抱腹絶倒の漫談の後に、こんな素敵な言葉が次から次へと飛び出してくる岡崎さんの話って、ホントに一粒で二度美味しいよね(笑)
トークセッション&交流会
2日目最後は高橋賢さんがコーディネート役になっての鎌田さん、岡崎さん、竹内さんを交えてのトークセッション。
人を大事にするところが伸びていくとか、馬鹿話できない人と仕事できないとか、人に信用されようとするならその人を儲けさせるしかないといった頷きしかないようなコメントがここでも飛び交う。
もうここまでくるとダイアモンドのような金言の降り注ぎ状態で、頭の中は幾千粒のインプットの矢たちで、瞳も脳みそもびしょ濡れ状態である(笑)
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トークセッションの後は参加者と主催者・紫波町役場の方を交えての交流会。
Made in Shiwaのシードルや日本酒、この交流会のために用意いただいた(地域おこし協力隊の方の手作り)料理をご馳走になる。
紫波町に来ていつも感じるのは、こういう場で常に町内産のものを振る舞うというおもてなしの心と、公共施設の中(図書館の入り口前にある紫波町情報交流館)で堂々とお酒が振る舞われるおおらかさだ。
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交流会の後は、もちろんこれで終わる訳がなく、夜遅くまで続くのだが、それはこぼれ話にて。
鷹觜賢次さん講義「人をつなぎ巻き込むことで新しい動きに」
さて最終日となる3日目は、日詰商店街の一角にある文化財「平井邸」がこの日の会場。
文化財の活用という文脈では、僕たちもこれから色んなプロジェクトを抱えているので、そのあたりも参考になってありがたい。
鷹觜さんは日詰商店街にある藤屋食堂という飲食店で料理人をされてる方で、日詰商店街で新規出店する若者と関わったり、インターンを受け入れたりと地域でメンター的な役割を果たされているそう。
オガールができて、日詰がどんどん寂れていく様子に気を病んでいたそうだが、整備されたオガール広場に家族で訪れた時に、この風景が子どもたちの日常になるんだというオガールの考え方を学び、自身の考え方も変えたそうだ。
衰退していく商店街の中で、自分にできること、エリアをどうしていくのかを考え、自身の商売のことだけではなく、日詰商店街の未来を考えるパブリックマインドに胸を打たれた。
鷹觜さん、活性化とか賑わいという言葉が嫌いだそうで、今セミナーの主催者である地域活性化センターは法人名を変えなければ、紫波町での第8回目の開催は難しいかもしれない(笑)
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須川翔太さん講義「熱源に寄り添い熱波を吹かせる熱波型ゲームチェンジ」
さて、3日間のプログラムの大トリを担うのは、紫波町役場商工観光課の須川さん。
須川さんは、1年前に紫波町を訪れた際に、紫波町内をあちこちとアテンドしてもらったという関係もあり、今回は須川さん目当てで来たといっても過言ではない。
須川さんの凄いところは、紫波のことを愛しすぎて、仕事なのかプライベートなのか、本人も多分気づいてないくらいエネルギーの塊であること。
あと、周りの人との関係性の作り方というか、きっと自分の恥ずかしいところや不完全なところも曝け出し、周りがそれをほっとけないようになる構われ力と、周りにいる人たちを凄いと認める誉め殺し力なのかなと思う。
一緒にいると無意識のうちに関わりたくなるというか、巻き込まれていくというか、そんな人である。
なので、今回僕が参加した目的の35%くらいは須川さんの話を聴くためでもあった。
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話の方はというと、本当に須川さんの人間味が溢れた内容。
オガールではない農村部のこと、日詰商店街のこと、ラフランス温泉のこと、どれもが普通の公務員なら目の前の課題から目を逸らし、仕事としてできることだけやるフリをしたり、やった体裁だけを整えて終わり、にするようなことを愚直に体当たりするところに共感してしまう。
そんな活動を端的に表しているのが唎酒師と熱波師の資格取得だったりする(笑)
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印象に残ったのは、地域の希望を叶えるためには、市民の声を聞いた政策より、想いや情報を届けることの方が大事という言葉。
僕たち公務員は多くの市民の意見を聞きがちであるが、みんなの意見を聞いて誰のためでもない政策をつくるのではなく、それぞれの想いを多くのひとへ届けることだと。
裏テーマの考察
本当に中身の濃い3日間であった。
紫波町には鎌田さん、岡崎さんのような凄い方がいて、さらに須川さんのような熱い方もいる。
もっと言えば、その周りにも紫波町のことが大好きな役場の職員が大勢いて、役場の仕事に対して誇りを持っていて、組織に対するエンゲージメントもすこぶる高い。
僕のまちではちょっと考えられない感覚だ。
ではなぜ、紫波町ではこんなことになるのだろう?
オガールがあるまちというだけではきっとない。
セミナーの冒頭、副町長が参加者みんなの前で「職員に任せている」という趣旨のことを言われた。
きっとそういうことなのだろう。
それぞれの担当職員に活躍のフィールドが用意されていて「仕事を任される」ことで自由と責任が生まれているのだろう。
鎌田さんから、絶えず周りの人に発せられる「無茶振り」は「無茶」でもなんでもなく、権限を与えられた責任者への愛のしるしのようにも感じた。
やっぱり紫波町は凄い!それを感じた3日間であった。
夜のこぼれ話
さて、ここからはオープンに書けないような内容の話なので申し訳ない有料にさせていただく。
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