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#55 地方自治法を僕なりに読み解いてみる(その3 入札とかのことの巻)

さて、このシリーズも第3回目ということで、今回は前回書いた入札とかのことについて少し書き足らなかった部分もあるので、その2の内容を補足していく感じでまとめていきたい。

あっそうそう、前回までのその1その2の方も併せて読んでみてね。

さて、一口に入札といっても色んな手段があり、また随意契約の方法なども合わせると、多種多様な公共発注が行われており、今回はこれからのトレンドも踏まえつつ、ここら辺のことを整理してみたい。

ちなみに今回扱うような入札や公共発注のテーマについては、色々と考えなければならない点も多いし、もっともっと多くの人が「どうやったら今の時代にあった発注ができるのだろう?」ということに着眼し、「今度はこんな発注をやってみる」という新たなチャレンジが生まれて、公共発注がもっと多様化していけばいいのになと思っているところ。

そんな思いもあり、僕が役所の外で活動しているNPO法人 自治経営 FMアライアンス(名称は公共資産経営事業部に変更予定)では、春から新しいプログラムを計画しているので、ぜひこちらにも参加いただきたい。
(公共発注についても、どんどん深掘りしていく予定で、今回のnoteはそのプロローグみたいなイメージ)

新しいプログラムは、NPO法人 自治経営 FMアライアンスのnoteを中心に展開する予定なので、こちらもフォローいただけると嬉しいです。
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また、NPO法人 自治経営では、公民連携やまちづくりについて、基礎から横断的に学べるプログラム(まちづくりスキルセットスクールという動画学習コンテンツ)もあるので、こちらも併せるとより広く学べます。
(僕も公共発注や脱炭素のテーマで登場してます)

では、入札についての話を続けていこう。


今日まで続く入札が絶対的に正義という思考

役所において何かしらの発注を行う際に、入札だけが絶対的に正義だと思っている人は案外多いのではないだろうか。
(官側にはこういった考えの人が結構な比率でいるが、民側にも一定数いたりする・・・まっ、新しくて複雑なこと考えなくて済むからねw)
また、こういった方達は、入札以外の発注に対してアレルギー反応を示すことも多いから実にやっかいな存在でもある。

一方で、公共事業を取り巻く環境変化(建設労働者の減少など)や、発注者である我々役所側が抱える課題(発注者側の技術者不足など)も山積する中で、多様な入札契約の方法が国からも示される(どちらかというと推奨されている)など、公共発注=入札一辺倒では成立しない時期に来ているのも事実である。

「多様な入札契約方式の活用に向けて」のリーフレットから抜粋(国交省資料)
「多様な入札契約方式の活用に向けて」のリーフレットから抜粋(国交省資料)

ちなみに、国のこういった資料を見ると、応札金額の高い安いだけで落札者を決定する、いわゆる一般的な入札の方が例外的な発注手段のようにも思えてくるが、そんな風に見えてしまう僕がおかしいのだろうか(笑)

ただ、前回のその2でも書いたが、地方自治法第234条で定められているように、(一般競争)入札以外は例外規定であるという考えは、未だに根強く残っているし、特に随意契約については長らく悪き契約というイメージが定着しているため、毛嫌いする人も多く、発注者側として動く場合、こう言った思考の壁をどうやって攻略するかが鍵となる。

入札のようで入札でない仕組み

地方自治法第234条には一般競争入札指名競争入札随意契約という3種類(せり売りはここでは省略)しか書かれていないが、多様な入札契約の時代にあって、契約相手を決める手続きには、色んなバリエーションが存在し、新しい方法もどんどん増えているのが実態である。

以下のような方式が代表例であるが、実はこれ全て入札という手続きではなく、随意契約による手続きとなる。
(自治法で3種類しか定義されていないから、逆読みするとそうなる)

プロポーザル方式
→価格よりも提案内容や独自性などを重視して契約者を選定する方式。

(工事などでの)競争見積り
→見積り合わせとも言うが、複数の業者から見積もりを徴収して、契約者を選定する方式。基本、役所側で積算しないものが対象。

コンペ方式
→建築家による設計競技などデザインなどの優劣を評価し契約者を選定する方式。

いずれも、複数の事業者に競争原理を働かせながら、より良い提案や、より安い価格を求める発注方式であるが、これらは役所側が決めた仕様での積算(予定価格の設定)に基づく入札方式ではないため、地方自治法上は随意契約として扱われる
(随意契約反対の人も、プロポだと納得するという不思議な現象もww)

入札との相違点は明確で、(随意契約であるかどうかではなく)仕様発注(入札)か性能発注(入札以外)であるかの違いがポイントとなる。
つまり、(業務を行う相手によって成果物が変わるなど)入札には不向きな性能発注であれば、当然(契約上は)随意契約になってしかるべきと言うことである。

また、今日では多くの公共発注において、プロポーザル方式が採用されているが、入札方式と大きく異なるのは、次の2点。

  1. 公募時と契約時に条件が変わってしまった場合、入札方式の場合は変更が(仕様発注だから)不可であるが、プロポーザル方式の場合は(性能発注だから)若干のアレンジも可能である。

  2. 応札者(提案者)が1者の場合、入札は不調として扱うが、プロポーザル方式の場合、1者でも(条件を満たせば)成立とする場合が多い。

ちなみに、近年では多くの公共施設整備に採用されるPFI事業(DBO方式も含む)であるが、発注方式については入札方式とプロポーザル方式が概ね半々のようである。
(詳しい資料は探せなかったが、どうもそうらしい)

そもそも民間の創意工夫を求めるPFI事業なんてのは性能発注でこそ、その価値を発揮できるのに、入札で発注しているケースも多々あるというのは、僕的にはかなり驚きなのだが、これも地方自治法第234条の呪縛なのだろう(笑)
(ほんと言うと、公と民の関係が、発注者と受注者という関係ではないくらい薄まってくるのが理想なんだけど・・・)

これからのトレンドは?

僕も役所の中で多種多様な発注に携わっているが、(特に建設業界における)深刻な人手不足や、発注者側の技術者不足などを鑑みると、これからは、これまで以上に性能発注の方式が採用されていくだろうと予想している。

そうなると、今まで(特に公共工事なんかでは)当たり前に運用されていた入札方式は、再考されてしかるべきだろうし、もっともっと多様な発注方式が生み出されていくことになるだろう。
(クリエイティブな公共発注は僕的に大好物でもある)

ちなみに僕が津山市で公共発注に関わっている案件では、RO-PFI方式にコンセッションを組み合わせた事業(旧グラスハウス利活用事業)や、DB方式にコンセッションを組み合わせた事業(城泊事業)などでは、共にプロポーザル方式を採用している。

また、全国的な流れとしては公共施設(建築系)やインフラ(道路系)の包括管理業務委託も増えてきているし、僕らも行っている(随意契約を前提とした)民間提案制度なんかもすでに珍しい制度ではなくなってきている。

行政が全ての仕様を決定し、予定価格を細かく積算した上での、(しかも分離発注というのが定形化している)入札ではなく、民間の参入意欲が増すような公共発注でなければ、誰も受注してくれないという日が来るかもしれない。

そんな時にも、地方自治法の第234条の第2項や、施行令第167条の2の条文は、今のまま生き続けるのかな・・・と思うところである。

最後に・・・

公共発注を取り上げてみても、もっと詳しく深掘りしていくべきテーマだし、その上で公民連携とかまちづくりとかは、なかなか周りに詳しい人も少ないから思ったように前進できないという方。
そんな人におすすめなのが、僕も数年前に受講した都市経営プロフェッショナルスクールである。
基礎的な知識はもちろんのこと、経済のことや都市の成り立ちのことまで含めて横断的に学べるので、クリエイティブな公共発注を実践するには打ってつけのスクールである。

現在、第10期生を募集中なのだが、割引特典が効く1次募集は1月いっぱいが期限なので、これ読んだ方は下のリンクから速攻で申し込みください(笑)

本質的な公民連携を学べる都市経営プロフェッショナルスクール

ということで今回はここまで。
次回のその4は、公共施設とは切っても切り離せない公有財産の定義についてあれこれ書いていきたいと思っているので、そちらもお楽しみに。


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