#35 指定管理者?コンセッション?公務員でも意外と知らない法律のこと(の前編)
さて、今回は公共施設に関連する法律の話を少々。
法律というと、何だか難しいことで、仕事ではいっさい縁のないことと思っている方も多いだろうし、日常的に法律と向き合って仕事している公務員にとっても、面白くなくて何だか難しそうと思っている人が圧倒的だ。
僕も若い頃受けてた職員研修で、特に法律と文書事務の話が嫌いでしょうがなかった(笑)
そんなこんなで、とっつきにくい法律の話を、今回(前編)と次回(後編)に渡ってお届けしたい。
と言っても、僕は法律の専門家でもないので、難しい話を論じる気はサラサラなく、今回は公共施設の運営に深く関わる「指定管理者制度」と「コンセッション」の違いや、陥りやすい罠の部分について、出来るだけわかりやすく解説していきたい。
ちなみに僕が主体的に関わったプロジェクト「旧苅田家付属町家群整備事業(現:城下小宿 糀や)」と「旧グラスハウス利活用事業(現:Globe Sports Dome)」は2つともコンセッション制度を活用して運営されている公共施設であるが、このプロジェクトのことについても、後編では詳しく論じていきたい。
まずは地方自治法のツリー構造を理解しよう
さて、公務員にはお馴染みの地方自治法。
とは言っても、その骨格まで理解している人は少ないので、まずは初歩的な話から。
この法律を分解していくと下記のようなツリー構造が見えてくる。
◯編
●章
◎節
◉款
この中で公共施設に関連する項目は、第2編 普通地方公共団体の項目の中で、以下の2つに大別される。
・第9章 財務
第9節 財産
第1款 公有財産
・第10章 公の施設
そう、第9章に登場する「公有財産」と第10章に登場する「公の施設」である。
どうして最初にこんな骨格のことを書くかというと、このツリー構造ことを理解していない人が圧倒的だからだ。
法律の枝葉だけを見ていると、「公有財産」と「公の施設」を混同してしまいがちだが、大きな山を俯瞰すると、この2つは違う章に書かれているということをまずは押さえておく必要がある。
つまり、「公有財産」と「公の施設」の2つはそれぞれ別々に定義されているということである。
(これが後々、大きな罠となってくるので、ここを間違えないように)
公有財産をさらに分解してみる
では、最初の1つ目、公有財産をさらに細かく分類してみることとする。
(公有財産には、本当は船舶、地上権、特許権など超マイナーなものも含まれるが、今回は不動産=公共施設に限った話とする)
公有財産は、まず公用財産と公共用財産に分けられる。
・公用財産とは、市(=地方公共団体)が専ら使用する財産を指し、これには庁舎や消防署、職員宿舎などが該当する。
・公共用財産とは、市民が一般利用する財産を指し、道路や公園、学校や図書館、スポーツ施設や文化施設など、いわゆる公共施設といった時にイメージされるほぼ全てがここに含まれる。
で、この公用財産と公共用財産を合わせたものを行政財産という。
それとは別に、行政財産以外は全て普通財産に分類される。
文字にすると難しいので、これをわかりやすく図式化したものを下図に示す。
ここまでは理解している人が多い。
(図ではこうなっているけど、本当の割合でいうと、水色の公共用財産が圧倒的に多い・・・多分全体の9割超くらいはそう)
指定管理者制度は「公の施設」に適用できる制度
次は「公の施設」について。
これは前述したように、公有財産が定義されている第9章ではなく、第10章で独立して「公の施設」が定義されているので、行政財産(公共用財産)=公の施設と混同してはいけない。(そういう人が多い)
では、公の施設とは何なのか?
地方自治法第244条では以下のように定義されている。
これを読むと、市民・住民の身近な日常生活に利用され提供されている公共施設ということであり、前述した公共用財産と定義がかなり似通っているため、混同する人も多い。(何度もいうが、公共用財産≠公の施設である)
その上で、公の施設には一定のルールがあることを理解する必要がある。
①公の施設は、設置管理条例を作らなければならない。
②指定管理者に公の施設の管理を行わせることができる。
③公の施設の使用料(利用料)は条例でこれを定めなければならない。
ここで指定管理者制度のことが出てくる。
指定管理者制度は、平成15年の地方自治法改正によって創設された制度で、それ以前は公共的団体や地方公共団体の出資法人(いわゆる三セク)でしか管理を任せられなかった(管理委託制度)ものを、民間企業やNPO法人などに範囲を拡大した制度である。
今では一般的になった指定管理者制度であるが、この制度を導入するためには前提条件として「公の施設」でなければならないということになる。
コンセッションはPFI法に基づく制度
さて、次はコンセッション(公共施設等運営権)制度である。
こちらは、PFI法に基づくもので、平成23年の法改正により導入された新しい制度である。
利用料金の徴収を行う公共施設について、施設の所有権を行政に残したまま、施設の運営権を民間事業者に設定する方式とされている。
一般的に、指定管理者制度と比べて民間の裁量が大きく、自由な運営が可能であると謳われている。
制度の創設期には主に空港や上下水道施設に導入されることが多かったが、最近ではいわゆるハコモノの公共施設に導入されるケースも増えてきている。
我々が行なっている比較的コンパクトな公共施設に導入するものをスモールコンセッションと呼び、国もこれを推進している。
では、PFI法がカバーしている公共施設はというと次のようになる。
地方自治法と被る部分もあるが、両者は別の法律で、それぞれがあまりリンクしていないので、PFI法には行政財産とか普通財産とかの区分はなく、加えて「公の施設」の定義もなく、単に用途が列挙されているだけである。
このうち、コンセッション制度を導入できるのは、利用料金を徴収するものということになる。
またコンセッション制度では、運営権対価(施設で得た利益を一部行政に還元する対価)を設定することができるので、原則的には独立採算施設がターゲットとなるが、必ずしも独立採算が絶対条件でもない。
両者の違い(と共通するところ)
ここからは、指定管理者制度とコンセッション制度の違いについて解説していく。
両者は地方自治法とPFI法という違いはあるものの、公共施設の管理運営においてできる範囲はかなり近しく、正直にいうと大きな差はない。
指定管理は歴史が少し古いこともあって、多くの施設で導入されているが、独立採算の公共施設が世の中に少ないこともあって、コンセッションはまだまだレアケースである。
ただ、細かい部分では少し違いもあり、それをまとめたものが下図である。
利用料金の設定が届出であることと承認であることの違いや、行政処分(例えば使用許可)ができるか否かの違いはあるものの、制度の中でできる範囲はかなり似通っている。
ただ、一番の違いは「公の施設」でなくともコンセッションは適用が可能である、ということだと筆者は考えている。
後編では、ここを解説
さて、前編はここまで。
後編ではさらに深掘りして、それぞれの制度(特にコンセッション)を適用する際の留意点や、陥りやすい罠の部分などに触れていく。
また、津山市で行なっている2つのスモールコンセッション事例や、現在進行している新たなプロジェクトの工夫点なども解説していく。
ちなみに、後編は僕が役所の外で活動している「NPO法人 自治経営 FMアライアンス」のアカウントで書いている。
こちらは「公共FMアングラBar」という有料のメンバーシップ制としており、僕も含めたアライアンスメンバーのnote記事や、月イチ(毎月第3日曜日の21時〜)で開催するオンライン夜会(Zoom)をセットで楽しむことが可能だ。
毎月、公共施設にまつわる闇の話を本音で語りながら、そこから光を灯すことを目的としたアンダーグラウンドな会である(笑)
後編は、そちらのメンバーシップ限定記事としているので、前編を読んだ方は「公共FMアングラBar」にぜひジョインください。