061 経済の因果関係 最低賃金と金利
国の経済活動を知る上で最も重要な指標はGDPである。30年間に亘って日本のGDPは低迷している。特にドルベースでは悲惨である。1995年には5.5兆ドルであったが、2024年には4.1兆ドルになってしまった。その間、米国は7.6兆ドルから29.2兆ドルになっている。中国は、0.7兆ドルから18.3兆ドルに膨らんでいる。
日本はいったい何を誤ったのか。総選挙の各党の施策にその解答は全く見られない。このまま失われた50年となって沈んでしまうのであろうか。物価上昇を上回る賃金アップなどと叫んでも、どうやってそれを実現するのか。中小企業や低所得層に対する支援は重要な施策であるが、それでGDPが伸びるのであろうか。完全にお手上げ状態である。
最近、経済における原因と結果に対して極めて重要な指摘がなされた。その一つが、最低賃金と経済成長の関係である。英国を例に挙げているが、欧米先進国では当たり前となっている。日本の常識は、経済が成長すれば賃金も上がるということである。だれも異論はない。ところが、英国では違った。最低賃金を引き上げることによって経済を成長させるというものであった。企業などからは大きな反発があって、倒産が増加して失業率が上がると懸念された。
結果はどうであったか。経済は順調に推移し、倒産も失業率も大きな変化はなかった。今年の最低賃金は11.44ポンド円換算で2150円、前年から9.8%引き上げられた。1998年に導入された時点の3.6ポンドから3.2倍、円換算では5倍以上に達している。その間日本では円ベースで約2倍、ドルベースでは横ばいである。
では、なぜ最低賃金を上げると経済が成長するのか。因果関係を解析するのはなかなか難しいが、最も大きいのは経営努力であろう。積極的な製品開発、研究開発、先行投資、労働者のスキルアップ、等々。経済同友会トップの新浪剛史氏は、最低賃金アップに耐えられないような企業はダメだと言っている。そのような企業が退場することによって経済が循環する。日本の野党の足並みはほぼ1500円で揃ってきているが、それでは欧米先進国にはいつまでたっても追い付けない。毎年10%程度のアップを目指すべきである。
さて、経済の因果関係でもう一つ重要な点を指摘しておこう。それは金利である。日本の常識は、金利が上がれば景気が後退して経済は縮小するというものである。日本政府は、30年間ほぼ一貫して欧米諸国より低金利に誘導してきた。結果は経済の停滞である。低金利であれば、企業を維持できるし、円安で利益も享受できるのである。そこには、経営努力というものは不要である。日本の企業は、欧米の企業よりもはるかに優遇されているのである。すでに茹でガエルになってしまった。論理は、最低賃金と同じである。
日本経済再生のシナリオは、明らかである。最低賃金を思い切って引き上げることと、日銀を政府から独立させることである。日銀には、通貨の価値をドルベースで維持するという本来業務に専心してもらえばよい。