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063 経産省の功罪
ホンダ、日産の経営統合の話を聞いて、またかの思いをしてしまった。間違いなく裏で経産省が動いている。もちろん、経産省に泣きついたのは日産であろう。日産は、未曽有の円安下でも大幅減益となって従業員を削減する見通しである。
日産は、経産省を後ろ盾にしてホンダと交渉することになる。そのようにして、対等以上の成果を得ようとしている。そしてそのようになれば、この経営統合は失敗する。唯一、成功の可能性があるのは、ホンダが日産を吸収合併するケースと思われるが、どうであろうか。カルロス・ゴーンが経産省からの独立を計ろうして追放されたが、結局日産の自主独立は水泡に帰した。
経産省、かつての通産省が活躍したのは、戦後の高度成長期である。人材も豊富で士気も高かった。牽引が行き過ぎてバブルを誘導した、日本を Japan as No.1 の地位までもう一歩というところまで引き上げた。日本経済を経産省が引っ張る姿は、バブル崩壊で終わりにすべきであった。もちろんそうはしなかった。そんなことをすれば、経産省は役割を終えて解体である。そうならないように猛然と仕事をするようになる。その仕事とは、既存大企業の温存と、安倍晋三氏への急接近である。結果は既に明らかになっている。
1989年の世界の時価総額ランキングでは、日本は上位50社中32社を占めている。30年後の2019年では、トヨタの43位のみとなった。経産省が躍起になって支えたのが、電力、石油、重電・家電、製鉄、自動車などの産業である。1989年時点のTOP50社の業種別では、金融、エネルギー、製造業などが上位を占めていたが、2019年では、IT・通信、金融、一般消費財、サービス、医療などが占め、製造業は4社のみである。つまり、経産省は斜陽産業の下支えをしていたことになる。最近では、東芝の惨状がある。かつての雄姿はどこへいったか。それでも、経産省は何とかしようとして数兆円の投資をしようとしている。
そしていよいよ日産である。日産の場合は、台湾企業からの買収の話を阻止しようということのようである。マスコミは、経営統合の話をEVや製品開発力を高めるためなどと前向きに報道しているが、もっと批判的に、第2の東芝にするなというような論調にすべきと思う。失われた30年を作り出した経産省には、この辺で退いていただくか、自己批判して出直してもらいたい。