Crimson Heart Prologue

 翻訳機に入れ、不自然な文や文体修正等のみ行っております。全ての翻訳を完了しました。無断転載厳禁。こちらのノートからの引用等すべて禁止。SNSでのシェア等も固く禁止します。上記全て理解した上でお読みください。

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あ。ここにある高校生からのお便りが一つありますね。 読んでみます。
『こんにちは。私はレピュジア中央高校に通っている学生です。 うちのサークル部員たちが本当に大事にしていた機械をなくしてしまいました。 もしかしてウサギや猫を知っていますか？ もちろん、本物のウサギや猫ではありません！ 本物のウサギと猫は全部消えてしまいましたから……でも皆さんが学生の頃デバイスに一度は貼ってみたことのある、あのかわいい動物ステッカーにはきっとドジョウが……いや、ウサギや猫がいたはずです。 今そのような形の機械がレピュジアを歩き回っていますが事情がとても複雑ですがとにかくその土壌を発見したらレピュジア中央高等学校の電子工学サークルインターコードにぜひ連絡してください。 ありがとうございました！』
お便りはここまで。 本当に可愛くて悲しいお便りですね。 皆さん、「午後のレピュジア」はいつもレピュジアを歩き回るウサギと猫機械に対する情報提供を歓迎します。 では、今日も良い午後をお過ごしください！
-ラジオ放送<午後のレピュジア>

ジョアンは補助者につかまって上の階に向かっていた。近くで見ると、補助者の容姿には本当に鳥肌が立った。 下部は単純な金属円筒だが、上部は曖昧に人に似せて奇異な感じがした。 都会のあちこちはもちろん、校内にも廊下ごとに列をなして歩き回り、生徒たちを監視するあの不快な存在をジョアンも当然知っていたが、今日こんなにそれらに惹かれる身になるとは。
今朝ジョアンは校門を越えるやいなや生徒たちの質問攻めに包まれた。

「昨日のこと、本当？」
「タンジョと戦ったんだって？」
「こいつが一発飛ばしてくれたんだって？」
「いや、そこまでじゃなくて。」
「私が直接見たんだけど···。」

全部違うからあっち行ってよ！ 叫びそうになった瞬間、突然ジョアンの前に補助者が割り込んできた。 人間の顔をぼんやりと模した補助者の赤い目が瞬きをした。
「ジョアン学生、ご本人ですか？」
「……そうだけど、どうして？」
「懲戒事項があります。 ついてきてください。」

教室内の生徒たちのざわめきがさらに大きくなり始めた。 無念極まりないが、機械を対象に悔しさを訴えたからといって、何が解決されるわけでもなく、静かについていくしかなかった。
多分今頃そのデマは既定事実になったのだろう。 ジョアンはポケットに手を突っ込み、廊下を歩いた。授業が始まったので歩き回る人はあまりいなかったが、誰かに会う度に補助者とジョアンに注目する視線が感じられた。 皆が皆に統制の視線を向けるうんざりする空間。 ジョアンはいつも学校が嫌いだったが、今ほど嫌いだったことはない。

「距離を保ってください。 遠くならないでください！」
「保ってる」
「補助者に敬語を使ってください。 レピュジア中央高校の補助者は教師を代理しています。 ジョアン学生と補助者は対等ではありません。」
「君らさ、もしかして子供たちが影で君たちの名前を何て…」

補助者たちはきしみながら目に赤い光を浮かべている。

「もう一度警告します。 補助者に敬語を使ってください。無礼な言動に対しては懲戒が追加されます。」

子供たちがあなたたちを狂った小言缶と呼ぶのを知っているのかと聞きたかったのに。 謹慎処分を受けたくなかったのでジョアンは口をつぐんだ。

「廊下に足を引かずに歩いてください。」
「教室を覗かないでください。」
「前に出ないでください」

4階に到着したエレベーターが開く頃、ジョアンは小言缶、いや補助者のせいでいらいらしていた。 廊下の突き当たりの事務所の前に到着した時は、いよいよこの缶から解放されるという考えから、少し安堵感さえ感じた。 しかし、補助者の呼び出しにもかかわらず、ドアは開かれなかった。 ジョアンは廊下の床に落ちた名札をうっかり見た。 ジョアンは固い表情で尋ねた。

「今、教頭先生に会わなければならないの？」
「そうですね。 リルドマー教頭の呼び出しです。 ジョアン学生。学生は質疑時にも敬語を使わなければなりません。 補助者に対する無礼な言動は、指導教師に報告されます。」

補助者が小言を言い続けたが、ジョアンはこれ以上耳に小言が入ってこなかった。 リルドマーは痩せた体つきにいつもぴったりのスーツを着て、補助者を5台ずつ従える教頭だ。 学年ごとに何人かの気に障る生徒たちを睨みつけてひどくいじめることで有名だった。 目から抜けなければよくしてくれたが、その点がもっと気持ち悪くて嫌だった。
一体リルドマー教頭が私をどうして？ そのタンジョという子がそんなに重要なのか…。
どこかでレピュジアの有力な家の息子という話を聞いたが、ただのうわごとだと思っていた…。ジョアンはこれから自分に起こる不幸な未来を想像する。誰かが自分を遠くから呼んでいることにようやく気づいた。

「ジョアン！」

大尉のソプラノのようなものすごい声量が廊下を鳴らしてからジョアンは驚いて声が聞こえてきたところを見た。

「マノダン先生！」

大股で広々とした足取りであっという間にジョアンの前に近づいてきたマノダンの勢いに押されたのか、補助者たちが一歩退いて席を外してくれた。

「ジョアン、こいつ。」

マノダンはジョアンを見下ろした、それでもジョアンは人生でマノダンが来たことに、ここまで嬉しかったことがなかった。 もしリルドマーに呼ばれないことができるなら…。ジョアンは救済者を見つめる目つきでマノダンを見た。 一瞬、マノダンはジョアンを焼きに現れた天使のようだった。
次の瞬間、マノダンの口が開くまでは。

「お前がタンジョを拳で殴って、足の甲を壊したんだって？」

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だから、実は問題がこんなに大きくなるとは思わなかった。
ほんの一言だけのつもりだった。 タンジョとあいつの囲いが学期初めから教室警察官の役割をするのがあまりにも目障りだったから。
一週間前、あいつらが「緑地帯に絶対行くな、レピュジアを脅かす勢力がある。」 「ひょっとして君もテロ勢力なのか」と同じ口調で、テロという単語とは一生無縁の小さな男の子に脅しをかけているのを見て、一言放ったのが発端だった。

「うわごとはもうやめなよ。脅威はお前たちなんじゃないの？」

それがタンジョたちの気に触ったようで、ターゲットが変わった。 タンジョたちはジョアンにしつこく付きまとい、余計なことで文句をいった。その男の子に片思いしてるなど、ジョアンが中央図書館に行くのを見たが秘密会合でもするのか？など、本当に幼稚極まりない。 しかし閲覧制限区域に出入りするのを報告すると脅迫するのは本当に面倒だったが....。じっと我慢していたらもっと面倒になりそうだった。
問題は机だった。 いくつか言ってあげようと、いつもより少し怒って席を立っただけなのに、よりによって机が床に転がるなんて。 それも目の前でジョアンに指差していたタンジョのように！
驚いて机を掴もうと伸ばしたジョアンの手が、倒れていたタンジョの顔に思いがけずぶつかった。机はガタンガタンと音を立てながら横を越えてタンジョの足の甲を打った。 
悲鳴をあげる周りのやつら、ジョアンが人を殴ったと大げさに言うタンジョの取り巻き。 「ケンカするの？ケンカするの？」 とどっと押し寄せて見物する生徒たちまで。 教室はあっという間にめちゃくちゃになってしまった。
混乱を整理しに来た教師に生徒らが何と言ったのか、ジョアンは倒れた机をなんとか立てて、状況を収拾しようとしていたとか。とにかくジョアンに文句をつけていた群れが突然被害者になったりしたのか、状況はついにこのように整理された。

'ジョアンが机を押してタンジョの足の甲を折った'

「うわさが広まってる。職員室が大騒ぎだよ。」

意図したことは当然ではなかった。 一方で率直に言えば、すっきりした部分が全くなかったとは言えないが……とにかくその事件の余波はジョアンを今非常に困難な状況に追い込んでいた。

「本当に偶然です。 あいつが私を脅して、席を立って起きたことです。」

マノダンは悩ましい表情で座っていた.

「そうだね、ジョアン。 私も教職に数十年いたし、生徒たちの言うことをそのまま信じてはいけないという事実を知っている。 生徒たちは自分を守るためにいつも嘘をつくから。 だから噂がふくらんだという君の言葉にも一理がないわけではないだろう。」

「噂は嘘なんですよ。 わざとタンジョを殴らないし、わざと机を倒したりもしませんでした。」

マノダンは雲のように膨らみ曲がりくねった灰色の髪を指先で撫でながら言った。

「それでもね。 タンジョの足の甲が折れたのは事実じゃないか」
「そうですね。 でも、それは机が」
「君の手がタンジョに当たったのも事実だし」
「でも……」
「タンジョは棒をぐるぐる巻いて私に涙があふれたまま足を見せてくれたよ。 馬鹿な顔にも大きく人の顔が入っていたよ。」
「……」

マノダンは当惑したように首を横に振った。

「私はジョアン、君のことを以前から知ってきたから、君がわざと人々の視線を引くよりはむしろ他人に悪口を言わせておく子だということを知っている。 でもね、この職業はバランス感覚が必要なんだよ。 私がジョアンに持っている好意のためにタンジョというやつを少しでも不当に扱うわけにはいかないの。」

間違いではなかったが、ジョアンは悔しい気持ちだった。 原因はそちらが提供したのではないか。
マノダンが口を開いた。

「リルドマーは今頃オフィスに戻ってきたはずだ。 もともと学生同士の争いはリルドマーの所管だから、あなたはリルドマーのところに行ってもう一度抗議してみることもできる」
「教頭先生は絶対に私の言うことを聞かないでしょう。」
「そうだね。うーん、こうしたらどうかな。 もし私が先にあなたに懲戒を与えれば、リルドマーが同じことでまた懲戒を与えることはできないだろう」

すぐには理解できなかったが、ジョアンはマノダンの話し方が少し年配のように変わったことに気づいた。

「リルドマー先生の代わりに私がこの事件を処理することにしてもいい？」

マノダンの丸い灰色の目がジョアンと向き合った。 ジョアンはその目つきを見ながら何かを思い出した。 中学生時代、ジョアンが出会ったマノダン、先生たちの間の変わり者、ミステリーな魔女扱いを受けていた科学教師。 科学は苦手で授業時間にはいつもうとうとしながらも、ジョアンはマノダンに妙な同質感を感じた。
今、マノダンはジョアンにチャンスを与えているのだ。 マノダンが提示する懲戒が何であれ、リルドマーの手に渡ることよりははるかに良いだろう。 悔しさを完全に振り払うことはできなかったが、ジョアンは素直にうなずいた。
マノダンはジョアンを事務室の隅に座らせ、ホログラムスクリーンをしばらく覗き込んだ。 待っている間、ジョアンはオフィスをちらっと見た。 秘密の多いマノダンらしく、ほとんどの物が布やカーテンで覆われていた。 表面に現れた唯一の収納棚には、今は消えた植物や動物模型がぎっしり詰まっていた。
しばらくしてマノダンが口を開いた。

「ちょうど君に任せられる仕事があるんだ。 面倒くさいけど、難しいことではない。 簡単なボランティア活動だよ。 補助者の助けを受けることもできるし」

小言を絶対に望まないと答えようとしたが、マノダンが指一本を上げてふらふら振った。

「補助者が嫌なら、あなたを助けてくれる誠実な友達を1人つけてあげることもできるよ」
「真面目な友達ですか？」
「補助者も誠実な友達も付けずに一人でやらせておくわけにはいかない。 あの方がうまく遂行されたかを確認しなければならないから。 もし、君が君が望むなら、リルドマーの監視を受けながら職員室で書類整理を手伝うこともできるけど···。」
「真面目な友達.......と一緒にします」ジョアンは答えながらもどこか気になる気がした。
「よし、そう言うと思った。」

マノダンはにっこりと笑った. ジョアンはその笑いがなんとなく、わなに獲物が引っかかったことを確認した人の笑いのようだと思った。

「君もすでに知っている子だ」

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本当にそうだった。 ジョアンはセナのことをよく知ってい。いつも話題の中心となる。
レピュジア市民から愛され、学校の子供たちにも憧れの対象である、キム氏のそっくりな孫娘を知らないわけにはいかない。
しかし、セナがジョアンを知っているとは思えなかった。 あまりにもレピュジアの庭先であちこちに知らない人がいないので、おそらくジョアンの名前と顔くらいは知っているだろう。 しかし、セナがジョアンにあまり関心がないということにジョアンは1千レピュジアを賭けることができる。 否定的な方向の関心ならともかく。
いつも他の模範となるセナとは正反対に、学校でジョアンはいつも静かな悩みの塊だった。 口数が少なく物理的衝突が少ないだけで、先生たちは授業時間に適当に答え、皮肉を言い、試験答案用紙に冷笑的な答案を書くジョアンに困らせられた。ジョアンが討論大会準決勝の席で設立者のキム氏について言ったことをセナも聞いたかもしれない。 何て言ったっけ？「無責任です。 安全を掲げた監獄を作ったんです。 結局、自分が考えた理想的なレピュジアを具現できなかったじゃないですか？」と言ったのか。 似たような言葉だったはず。
今考えてみると、ジョアンはあえてそこで言ったことを少し後悔した。セナも討論大会でいつも優勝を占める学生だったし、その場にも必ず来ていたはずだ。 敢えて無責任な方を言えば、それは今都市をだんだん息詰まるようにしているボタンとアークであり、キムは理想的なレピュジアを作ろうと努力した方に近いから。 だが、セナにそのことを謝るのもちょっとおかしいのが、その話をセナが直接聞いたのか定かでもないし……とにかく、ジョアンはセナのことを考えると色々と気が引かなかった。
その日の討論大会決勝が終わってニコニコ笑って競争チームにも明るく挨拶するセナを見た時、ジョアンはセナと絶対親しくなれないということに気づき、セナを心の中で"残りの一生避けて通らなければならない人のリスト"の方にこっそり押し込んだ。 レピュジアが追求する完璧な人間像を女の子にすれば、それはセナだろうし、そしておそらくそこで反対側の端にいるのがジョアンだろう。
ところで、一体セナはなぜジョアンを助けると言ったのだろうか。

ジョアン！私たち、明日久しぶりに会うね。
二人で一緒にやればすぐ終わるから心配しないで。
じゃ、光の公園で会おう！ :)

ジョアンはため息をつきながらデバイスをサイドテーブルの上に置き換えた。 マノダンが言った「誠実な友人」がよりによってジョアンが避けたかった学生会長だったとは。 しかも、セナが直接ジョアンを助けることを志願したなんて。 むしろ事務所で書類を整理すると言えばよかった。
セナが嫌いなわけではない。 不都合なだけで、嫌いではない。 それに、不自由な人たちとつきあうことこそ、ジョアンが何とか身につけてきた社会性のリストに含まれるから。 でも、セナと一緒にいるのはきっと目を引くと思うけど。 そして、その横にジョアンがあれば、人々はさまざまな推測をして理由を突き止めようとするだろう。

「はぁ」
ため息を吐いたり、
「うぅ…」
変な音を流しながらベッドのヘッドに体を投げたり。
「はぁ、タンジョあいつ」
歯を磨いても状況が変わるわけではなかった。

［ジョアン］

スクリーンから聞こえてきた機械の声にジョアンはびっくりした。

[可塑性栄養サプリメントを摂取する時間です。 30分後に就寝すると、推奨睡眠時間が満たされます。 照明を暗くします。]

照明がゆっくり暗くなった。 ベッドサイドの感知器に手を当てると、ジョアンが今日摂取した栄養素が計量された。 しばらくして、「バック」という音とともに壁から白い棚が突き出た。 ジョーンはその上に置かれたカプセルを口に入れて水を飲んだ。 微細汚染を防ぐ効果がある栄養剤とはいえ、このカプセルを飲むと耐えられない眠りがあふれ、ジョアンはカプセルを飲むのが嫌だった。 睡眠時間まであの声に従わなければならないのかと思って。
しかし、今日は時間通りに寝るのが役に立つだろう。 起こったことは仕方がない。 できるだけ早く終わらせよう。 目をつぶって終わらせて、二度とこのような悔しい争いにも、処罰にも巻き込まれないようにしよう。 ジョアンはそう思って目を閉じた。 口に残っている可塑性サプリメントの粘り強さを感じながら。

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歴史博物館と市役所を取り囲む光の公園は人混みでにぎわった。 キム氏の他界10周忌を迎えて追慕空間として造成された公園の片方で市民たちはホログラム映像を見ながら涙を拭った。 しかし、花壇に区分された追慕空間を過ぎて公園の内側に向かうと、追慕の雰囲気は跡形もなく、祭りでも開かれたようににぎやかになった。 来週がレピュジア設立記念週間なので、連休の雰囲気を楽しみに出てきた人が多かった。 公園の補助者たちも滑稽な動物の仮面をかぶって並んで子供たちの視線を引いた。 どういうわけか一方では追悼が、もう一方ではパレードが行われる奇妙な状況だった。
ジョアンは自分の手首をつかんで、てきぱきと歩いていくセナの表情を見た。
みんな目の前で自分の祖母の話をああしていたら不便じゃないかな。 少し前には追慕空間の列を通り過ぎてセナに気づいた人たちに捕まることもあったが、ジョアンが尋ねた。

「不便じゃない？」
「何が？」
「後ろのあの人たち、まだついてきてるよ」
「おばあちゃんを尊敬する人たちだから、仕方ないね。」

セナの返事にジョアンはむしろ言うことがなくなった。 こういうことをよく書いたんだろう。 レピュジアの有名人らしいというか。

「ところで、私たち今何しに行くの？」
「あ、マノダン先生が教えてくれなかったの？」
「ただ君に会えという言葉しか…あ、何か回収しなければならないという話もした」

マノダンはジョアンに"集めて整理しなければならないことが少しある"と説明しただけで、それが何なのか、どのように集めなければならないのか全く話してくれなかった。 中央図書館で失くした本を探したりという単純な業務だと思って、草案もそのまま渡した。 しかし、今、セナは中央図書館どころか、ジョアンが考えたことのない場所に向かっていた。

「ついてきて、もうすぐだよ」

速い足取りで前を走っていたセナが止まったところは光の公園の東側に位置した、半透明なホログラム障壁で遮られ、後方がよく見えなかった工事現場だった。 遠くではレピュジア設立記念映像だけが繰り返し再生されていて正確に何をするところなのか分からなかったが、近くで見るとホログラム障壁の内側には大きな建物が建てられているところだった。 人よりはるかに大きいロボットが慌ただしく歩き回りながら資材を運んだ。 建物の用途がわかる看板などはついていなかったのですが。 レピュジアのガラス張りの建物よりも、より生き生きとしたデザインで、いつか教科書で見たことのある霊態を演じていた。

「こっちにきて」

一つも知らせずに指示だけするのがすでに不便だったが、ジョアンはあくまでも手伝う立場なので言うことがあまりなかった。 ジョアンはセナの後を追った。
セナがホログラムの壁の前で立ち止まった。 そしてカバンを隣のベンチに置いた。 そういえば、セナは大きな袋も一つ持ってきたが、それが何なのかもまだジョアンは知らなかった。

「ジョアン、とりあえずこれを受け取って」

セナはジョアンに四角い金属パッチのようなものを渡した。 ジョアンは手のひらの上に置かれた、装飾用というにはどこか粗末なデザインの金属パッチをじっと見た。

「そして今から私の真似をして。分かった？」

セナが決然とした表情で指示し、深呼吸をした。

「何を真似するの？」

そしてセナは突然ジョアンが想像もできなかったことを始めた。

「まあ……お前、何、今何してるんだ。」

どもることがほとんどないジョアンも一瞬慌てた。

「……体操？」

セナはゆっくりと何かの動作を繰り返していた。腕を両側に伸ばして、折って、空に向かって持ち上げて。 降りたり、元の場所でぐるぐる回ったり、止まったり、また回ったり………。
ハセン会長とマノダン先生の2人で組んで私をからかうのかな？ ジョアンは当惑してしばらく的外れな想像をしたが、セナは笑顔で非常に真剣に体操のような動作を続けた。まるで宇宙人と接触したり神を呼ぼうとする、今は消えた歴史の中の奇異な宗教行為のようでもあった。
さらに荒唐無稽なことはその次に起こった。
変な動作を繰り返すセナの周りを何かがさっと通り過ぎた。 最初、ジョアンは石ころが飛ぶのを見間違えたのではないかと思ったが、もう一度考えてみると石ころがこんなところでいきなり飛んでいくはずがないのではないか。 監視ドローンと言うには早すぎるし。 隣で混乱に陥ったジョアンを気にせず、セナは屈せずに動作を続けた。 そしてついに……。

「パッチ！パッチを貼って！」

まるでロボットのように動作を繰り返していたセナが口を開いた。 セナの動作は続き、ジョアンはびっくりしながらも、セナが指示する通りにパッチを持って周囲を見回したが、さっきその速く動いていた何かは再び消えて見えなかった。 次の瞬間、セナがジョアンの手に持ったパッチを素早く奪い、ジョアンの後ろに素早く動き、床の何かを手で襲った。 あっという間に起こったことだった。

「できた！」

 ジョアンは今まで起こったことを全く理解できず、瞬きばかりした。
セナがニヤニヤ笑って手で握った何かをジョアンに差し出した。 ジョアンはセナの手でもがいて、それがまた静まるのを見た。そのようなジョアンが生まれて初めて見た生物だったが、確かにすでに知っている存在でもあった。 生命科学の時間に資料写真だけで見たタヌキに似た、しかし絶対に本物のタヌキであるはずがない何かだった。
そのタヌキのような形をしているのがジョアンと目が合ってしっぽを一度上げた。
セナが意気揚々と話した。

「さあ、これが私たちが回収しなければならない『パピーボット』だ。」

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自然史博物館の設立は数年前から推進されてきた事業だった。 他界したキム氏を追慕する趣旨で始まったこの事業にはレピュジアという安全地帯を設計して建てたが、同時に人類が過去に去ってきた世界を忘れないようにと主張したキムの維持を継続するという意味がある。 レピュジアの科学者たちは絶滅した動物と植物、あるいは汚染されたあの外に残っている生物たちの本来の姿をホログラム映像と実物模型で再現し市民が簡単に接近できるよう公開して、人々が過去の生態を記憶」できるようにしなければならないという点に大部分同意した。
ただ、その過程で投入される莫大な資源をめぐって論争が起きた。
私たちが注目すべきことは過去か未来か？ 忘れられた生物を再現することがレピュジアの未来のために、安全の持続のために必ず必要なことなのか？ 自然史博物館の建設が子供たちにここレピュジアの外に住んでいる存在がまだいるという誤った認識を植え付けるのではないか。
レピュジアに存在しないものを見せることが、レピュジアの堅固な垣根に亀裂を生じさせたら？
結局、自然史博物館事業は多くの難航し、特にボートの反対により本来の計画よりかなり縮小された。 進行中に立ち止まって、また進行中に立ち止まることを何度も。 やっとキム氏の他界10周忌に合わせて改版が用意されていた。
もともと常設展示B館には「プロジェクトP」の展示品が入る予定だった。 レピュジア中央高等学校のプログラミングサークルとモノードデザインアカデミーの院生たちの合作で、過去の生物たちに触れて相互作用できる機械形態で作って展示するプロジェクトだった。 厳然たる公立博物館に高校生たちの作品が主要展示品として入ることになったのは、どうしてもこの自然史博物館事業が疎かにされたことと無関係ではなかった。
とにかくプロジェクトは成功的に進行し、製作された別名パピーボットはかなり歴史資料の中の姿と一致する外形と優れた相互作用能力を示した。 知能も高くて自ら観覧客に接触し、自分たちだけで動物たちの行動を再現したりもした。 事前参観客の反応も良かった。 博物館の職員たちも、学生たちも、このプロジェクトを指導したマノダンも、皆開館を期待して満足していた。
10日前、補助者ロボットのミスでこのパピーボットが全て博物館の外に散らばって消えるまではそうだった。

「一体どうしてそんなことが起こったの？」
「分からない。管理スタッフは仕上げ工事中に起きた小さなミスだと言ってたけど、マノダン先生は誰かがわざと犯したことだと思ってる。自然史のバムル館を嫌がる人が多いし、また学生たちの作品が入ったのはもっと気持ち悪い人もいるだろうから。 とにかくその原因を問い詰めるには証拠がなく、パピーボットを回収してくるのが優先だったの。」

数十台余りに達するパピーボットは、どれほど機動性が良かったのか、1~2日でレピュジアのあちこちに散らばってしまった。 パピーボットをよりリアルに具現するために、わざと基礎本能を入力しなかった決定を学生たちは後悔したという。 幸い半分程度は博物館から遠くない半径内で発見され、市民の情報提供であちこちに散らばったものをかなり多く回収した。

「パピーボットにレピュジアを歩き回らせておけばいいじゃないか。 過去の生物を真似した機械なら、レピュジアを自由に通うように解いておいてもおかしくはないが。 人を傷つけることもないし」

ジョアンは淡々と話した。セナはそれを聞いて肩をすくめた。

「ジョアン、君の言う通りだよ。マノダン先生も、製作者の学生たちもその方がいいと思ってる。問題は、パピーボットが都市を歩き回ることがまだ合意された事項ではないということだ。 管理局はパピーボットがあまり好きじゃないみたい。」
「そうだね。完璧な統制都市を自由に歩き回るタヌキなんて、本当に恐ろしいし、市民の安全にとっても危険だよ。」

ジョアンの皮肉にもかかわらず、セナは平気そうに説明を続けた。

「まだ見つけなければならないパピーボットが10台ほど残っている。」

見つけられなかったものはほとんどが人々の視線を避け、あるいは暗い夜や陰地帯を通じてのみ通うようにプログラミングされたボットで、特に念入りに作ったものが数台含まれていた。 その上、管理局はこのパピーボットがレピュジアを勝手に歩き回ることが保安問題を起こすとし、直ちに廃棄を主張しており、管理局職員が先に探すように放っておけば、まだ光を見ることもできないパピーボットは濡れ衣を着せられて終わる。

「さて、その動作は一体何だ。 パピーボットたちの視線を引くための動き?」

ジョアンの質問にセナがにっこり笑った。

「一種のイースターエッグみたいなものだよ。陰影地帯選好型パピーボットを製作した学生たちが、もしかしたらとあらかじめ入力しておいたコードがあったんだ。あまりに暗いところに行くと観覧客と相互作用できないでしょ。それで少しいたずらで、特定の動作、誰もが真似できる体操動作を繰り返すと、隠れていたあいつらが見て反応するようにしたんだ。 いわばあいつらにとっては「いないいないばあ」みたいなものだね。それでも本当に作動するとは思わなかった。 私もその動作でパピーボットを見つけたのは今日が初めてだよ。」

しかし、「初めて」と言う割には、あまりにも自然にやり遂げたので、セナはまるで何年も公共の場で図々しく体操をしてきた人のように見えるほどだった。 ジョアンはその考えを心の中だけでため息をついた。だから結局、自分がしなければならないことだというのがそれだ。 今からセナとばかげた動作をレピュジアのあちこちを歩き回りながらすること.......懲戒の目的が人を苦しめて二度と過ちを犯さないように戒めることならば、その目的に最も符合することだといえる。もちろん、ジョアンは間違ったことはなかったが。
ジョアンは袋の中をのぞき込み、満足しているセナに尋ねた。

「あなたもパピーボットを作ったサークル会員なの？」
「いや、今年は生徒会長の仕事で他のサークルはやれない。」
「じゃあ、どうして手伝ってるの？」
「私はマノダン先生を手伝うの。私を信頼してくださるから。」

セナが誇らしげに肩をすくめた。 ただ先生が自分を信頼するという理由だけで、こんなに面倒なことを厭わないなんて。 しかも懲戒処分の名目でジョアンに押し付けられたことなのに。 模範的であった。 やはりジョアンとは相反する子だった。

「サークルの会員たちは？ あの子たちが悪いことをしたことはないが、それでもあえて言えばあの子たちの作品じゃないか」
「あの子たちはこんなことをするには人見知りをする。」
「私も人見知りするんだけど。」

ジョアンがぽつりぽつり吐き出した. セナがそのようなジョアンをじっと覗き込み、意味の分からない笑みを浮かべた。

「うーん、あなたは違うと思うな。」

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いくら考えても一日二日で終わることではなく、四日中日程を空けておいたが、ジョアンは初日からすっかりあきれてしまった。 行く先々で視線が注がれた。 光の公園や市役所、歴史博物館、中央図書館、高層ビルが立ち並ぶ住居団地や商店街まで。 建物の影が落ちる草木、湿りそうな場所が多い公園の隅々、開けた野外まで2人はあらゆる場所を歩き回りながら礼儀その「儀式」を繰り返した。 程度しか1、2回ジョアンは敷布団で金属パッチだけを捕まえて待機したが、早くきちんと真似しろとセナが小言を言ったため、結局その滑稽な体操動作を真似しなければならず、後にはほとんど機械のように繰り返した。
人波でいっぱいの市役所前では、なかなか普段無表情を失わないジョアンの顔が熱くなった。 それでも大人たちが眺めるのは平気だった。
生徒たちが学校の課外活動でもしに来たのか。 という目線で見てくれたから。 問題は、ジョアンと同年代の学生たちも連休を迎え、皆外に出ていたという点だ。 ジョアンはセナの後を追って腕を広げた。足を上げたり上げたりしながら、どうかレピュジア中央高校の生徒たちに会わないようにしてほしいと信じてもいない神様に心の中で祈った。 しかしジョアンのそばに立つセナは……。

「生徒会長！ここでどうしたの？」
「お、運動してるの？見学してく？」

くすくす笑いながら近づいてくる友人たちに「私たち、すごく重要な仕事をしているの!」と答えながら、お前たちもやってみろと突然引き入れるのではないか？

「先生、こんにちは！連休は楽しく過ごされていますか？」

大声で通り過ぎる学校の教師たちに挨拶をするのではないか？ ここでこうしているのが全く恥ずかしくないという態度なので、色々とジョアンをさらに苦しめた。
懲戒3日目になると、ジョアンはマノダンがひどく恨めしくなり始めた。 本来の懲戒がリルドマー所管に移ったとすればリルドマーがどんな懲戒を下したかは分からないが、今このことも十分に恐ろしかった。 レピュジア中央高校の生徒たちにもすでにうわさが広まっているはずだ。 何も言わずに歩き回っているジョアンという子がレピュジアのあちこちを歩き回りながら変な体操をしていたんだ。
そんな中、セナはこのことが全く嫌いではないのはもちろん、甚だしくは楽しんでいるように見えた。 3日目にはセナの友達のような女の子が近づいてきて、ジョアンを上下不快な視線で目を通し、セナに何かささやいたが、セナが肩をすくめてこのように答えた。

「面白くて上達するのは、どうして？」
女の子が去ってしまった後、ジョアンが尋ねた。
「さっきあの子が何て言ったの？」
「何故お前とここで遊んでるんだ？って。 ジョアン、君は敵が多いんだね」

セナはジョアンを見ながら何気なく言った. それを敵が多いと表現してもいいのかな？ ジョアンは当惑しながらも、一方ではセナの堂々とした態度、いや厚かましい態度が羨ましかった。 ジョアンが持ち合わせていない、欲しいと思ったこともない性格。 きっと人生が楽ではあるだろう。 みんな寝るのが好きで従うから。 実際、学校ではジョアンとよそよそしい間柄だった生徒たち数人も、ここ数日間はなんとなく好意的な態度でセナの隣のジョアンに挨拶をしてきた。
ジョアンは妙な気分だった。どうせ今度の仕事が終わったらセナとまた絡むことなどないはずなのに、なぜ自分はセナにこんなに複雑な感情を感じているのか。 考えてみれば、ジョアンが懲戒のために一人ですべきことをもっと積極的に手伝ってくれたのだから、ただ感謝しなければならないのに。

『どうしてみんながセナを好きなのか分かった。』

しかし、ジョアン自身とセナはまったく合わなかった。 目的地を決めて何度も喧嘩しそうになって下したジョアンの結論だった。 いったん方向を決めたら、無条件に自分の言葉に従わなければならないというセナの態度がジョアンにはずっと気になった。 ジョアンも人の言葉に素直に従う性格ではないため、論争が長引いた。 それでも言い争いの末に次の目的地が決まれば、道を探すのはジョアンの役目だった。 セナはいつも決まった道だけを通っていたのか、路地の近道をよく見つけるジョアンを見て感嘆した。 その驚き本当に純粋な感嘆だったので、いざこざしてイライラしたジョアンの気持ちも少し和らいだ。

幸いか不幸か、「いないないばあ体操」は効果があった。 レピュジア全土を忙しく歩き回った3日間、ほとんどのパピーボットが回収された。 ハムスター、モルモット、コウモリ、フクロウ、トカゲ…...., 教科書でしか見た生物がまるで生きているかのようにぐずぐずしているのを見ると不思議だった。 あくまで機械で精巧に作られているだけで、本物の生物ではないが。
順調に進んでいた回収は、最後のパピーボット一つを残して難航した。 どういうわけか、4日目の1日をまるごと歩き回っても、痕跡すら見つけるのが容易ではなかった。
このようにむやみに歩き続けるわけにはいかなかった。 頭の中でレピュジアの全体地形図を描いてみたジョアンが話した。

「まだ私たちが行ったことのない主要場所は2ヵ所だ。 イエローベルトと真ん中の森の散歩道。」

イエローベルトはレピュジアの外縁に位置する工場と発電所が集まった生産地区だった。 だが、そこで働く人以外にはほとんどのレピュジア市民が行くことがない場所で、パピーボットがいくら機動性が良くてもそこまで行ったとは思えなかった。
そして最も有力な場所としてレピュジアの中心である中でショー、普通は緑地帯と呼ばれるところを巡る遊歩道が残った。 緑地帯自体は立ち入り禁止区域で。長い遊歩道は緑地帯をぐるりと囲んで近くの商店街と老人ホーム区域まで続く。 ジョアンは最初からその遊歩道にパピーボットが歩き回っていると予想していたが、不思議なことにここ数日間、セナは緑地帯の話が出るたびに話を変えた。
ジョアンは単刀直入に尋ねた。

「緑地帯の遊歩道に行きたくない理由があるの？」
「そういうわけじゃないけど···。」

さりげなく眼鏡をいじりながら困っていたセナは、結局ジョアンの表情を見て納得した。

「最近、その地域の雰囲気が良くないんだ。 悪いうわさが立ってる」

1ヵ月前からレピュジアの緑地帯近くで変な怪生命体を目撃したという話があった。 顔が奇怪に歪んだ、少年くらいよ体格の怪物が通りかかった人々を攻撃し、またスリをして逃げたと。
犯罪がほとんど起こらず、たとえ起きても直ちに統制されるレピュジアなので、人々の反応は二つに分かれた。 「そんなはずないよ、デマだ。」「いや、今すぐ探して処罰してくれ。」

「意外だね。お前はそんな噂なんて信じないと思ったのに」

ジョアンの言葉にセナは何か刺さったように怒った顔をした。

「私も信じない」
「じゃあ、どうして行かないの？」
「……行ってみようか」

意地を張るセナの反応にジョアンは空笑いした。 何か問題でもあるのかな、そんな噂に怖がる子じゃないと思ったのに。
ジョアンはそれが文字通り些細な事件を膨らませて生じた「悪いうわさ」だと考えた。 まるで数日前の自分に起こったことのように。 しかし、セナは言葉だけで信じていないと言うだけで、気にしているのが明らかだった。
緑地帯に向かう間、なぜか元気が抜けて見えるセナを見てジョアンは妙に変な気分になった。 この数日間、セナに対して持っていた様々な偏見が消されたりもした。 思ったほど理想的で完璧な子ではない。普通の同年代の子たちみたいな面も多いんだね。 そうしながらジョアンはふとセナに若干の親近感を感じる自分を発見した。 また会う仲じゃないのに、バカみたいに。
とぼとぼ歩いていたセナが突然つぶやいた。

「もしそれが単なる怪物じゃなかったらどうしよう。」
「ん？」
「いや、ただ言ってみただけ。」

何か個人的な事情でもあるのだろうか。 どうせ友達でもないジョアンに具体的には話してくれないけど。 ジョアンは前を歩いているセナの後頭部を見ながらため息をついて話した。

「他人が誰かをむやみに言うのは、信じなくてもいい。」

直接やられてみたから。 それが嘘だということを知っているから。
セナの肩が動くのが見えた。ジョアンはこれ以上言葉を付け加えることはなかった。 次の瞬間、セナが振り返ってジョアンを眺める視線には、何か微妙な感情が込められているようだった。

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最後のパピー筆は本当に緑地近くの遊歩道に隠れていた。 遊歩道が長くて大変な旅程ではあったが、険しい噂のせいか歩き回る人が少なく、他の場所に比べて容易だった。 セナが金属パッチを持って周囲を見回して、ジョアンが滑稽な動作を繰り返す間、目の前にくしゃくしゃに垢がついた小さなウサギが現れた。 ひときわ人懐っこい奴だった。
セナが最後のパピーボットに金属パッチを貼り付け、袋に入れて回収した。

「本当にここにいたね。 さあっ、ついに終わり！」

セナは元気そうに話した。 
ジョアンもうなずいた。

「お疲れ様。手伝ってくれてありがとう。」
「君のことばかりではなかったから。 一応これもマノダンに持って行かないといけないのに、いつ持ってきていくのが···ん?」

散歩道の外に出ていた2人は、どこかから聞こえてくる叫び声を聞いた。
喧嘩になったようだったが、もう少し歩いて出ると人々が一ヶ所に集まって歓声を上げており、警察官が老人を捕まえていた。 赤い照明を点滅させる補助者たちと制服を着た警察官まで、何か大きな事件でも起きたような雰囲気だった。 今日はこれで帰ろうなど、単なる誤解だったなどと言われてきたが、どういう状況なのかは把握しにくかった。

「さあ、今日はこれで終わりです。こちらの遊歩道に落としたものあるので、私たちが一緒に探してみます。 もうすぐ日が暮れて危ないから……」
「落としたものと誰かが奪ったものがどうやって同じなんだ！ 話したじゃないですか。 きっとあいつの仕業なんだ」
「そうですね。早くこの周辺を捜索してほしいというのに、私たちの話も聞かずに…」

ジョアンとセナの視線が合った。 まさか、本当にそのうわさどおりなのかな？

「そこの学生たち！」

警官は突然ジョアンとセナを指差した.

「そこの袋は何だろう？ 中をちょっと見ることができるかな？」

セナがびっくりしながらも袋を警察官に差し出そうとしたが、ジョアンがセナを阻止した。 セナの慌てた目つきがジョアンに向かった。 ジョアンは「見せないで」と口ぶりでささやいた。 パピーボットはほとんどのレピュジア人にとってなじみのないものであり、警察官にとってもそうだろう。 何も見せずに押収されることもあった。
セナは袋の入り口をぎゅっと握り締めたまま言った。

「学校の物品です。 これを持って行くには、まずレピュジア中央高校のマノダン先生にお話してください。」
「これは盗難事件だ！ 今すぐその袋を開けてみたまえ。」

警官が高圧的に出始め，ジョーンは口を開いた。

「何を探しているのかわかりませんが、とにかく中に入っている私はその品物ではありません。 中に入っているのは機械動物です。」
「何であれ、今すぐ見せてみろ」
「おい、ちょっと待てよ。この学生、慣れてるようだな」

セナは少し当惑した顔で，隣の別の警官に向き合った。

その男がセナの顔を見抜いたようだった。
警官たちが隙を狙ってジョアンが袋を曖昧に開けて中の物をざっと形だけ確認できるように見せた。

「見てください。ただのおもちゃのようなものです。」

強硬に出ていた警察官も内部をざっと確認し、変な顔をしただけでこれ以上手をつけずにジョアンとセナをそのまま送ってくれた。

「行こう。君があの有名なキム氏の孫娘じゃなかったら、これが回収されて終わったよ。」

ジョアンは散歩道を抜け出してぶっきらぼうにつぶやきながら、セナは何か考えているようや表情で口をつぐんだ。
電車の帰り道、二人は黙っていた。 セナが何を考えているかは分からないが、ジョアンも頭の中が複雑だった。
本当にレピュジアで変なことが起きているのだろうか。 そのタンジョたちが言った言葉がある程度は正しいだろうか。 それなら、なぜレピュジア管理局ではこのことを公に扱わないのか…。

「ジョアン」

セナは電車の停車ボタンを押しながら言った。

「私はマノダン先生と個人的に話し合うことがあるから、事務室には一人で行くよ」

ジョアンはトラムから降りるセナの後ろ姿を見た。 説明のつかない気持ちだった。

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最後のパピーまでお伝えしたよ。 マノダン先生が君もお疲れ様、ありがとうと伝えてほしいと言っていたよ。

家に帰ると、セナからメッセージが届いていた。 何と答えたらいいのか分からず、ジョアンはいったんデバイスを置いた。 歯を磨いてここ数日の騒動を振り返った。 やっと全部終わった。 悔しいこともあったけど、懲戒を終えたので学校でこのことをこれ以上問題視しないだろう。 セナとも少し不便だったが、よく協力して仕事を終えた。
にもかかわらず、ジョアンはなぜかすっきりしなかった。 ずっと気になる感覚が残っている。一体この感情は何だろう。 なんとなく仕事が終わったわけじゃなくて、変なことに巻き込まれたようなこの感じは。 今レピュジアでは何が起こっているの？
その時、セナの次のメッセージが到着した。

また、ジョアン、私を手伝ってくれない？

to be continued……

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キム・チョヨプ × Crimson Heart

キムチョヨプ 
2017年「館内紛失」と「私たちが光の速度で進めないなら」で第2回韓国科学文学賞中編大賞と佳作を受賞して作品活動を始めた。書いた本に小説集『私たちが光の速さで進めないなら』がある。韓国科学小説作家連隊の会員