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開幕戦

今までのオフを嘲笑うかのように、今年は中国のお陰で休養たっぷりのオフ(※スペイン国王ドン・ファビアン・ルイスを除く)。8月2週目にようやく始まったプレシーズンマッチは、オーストリア王者シュトゥルム・グラーツ、魔剤王者ライプツィヒと、いずれも若手を中心に起用して引き分けに終わった。プレシーズン気分が抜けないまま日付は8月16日になり、昨季同様の勝ち切れないゲームが展開される予感を漂わせながら、ル・アーヴルでの開幕戦を迎えた。
ル・アーヴルは、パリを流れるフランスを代表する大和川・セーヌ川の河口がある、所謂パリの外港都市。ドブの排水溝とも言えるわけだが、そんなドブを垂れ流している大元の巨悪集団が敵地に乗り込んで、2024-25シーズンのホイッスルが吹かれた。

幸先よく先制したのは巨悪集団。中盤の見事なパスワークから抜けたアセンシオが運ぶ→ハキミに当てる→チン出しが落としを受けて李康仁大選手にパス→大選手の一撃という見事な流れ。エンバペが抜けたことで騒がれそうだった得点力不足への懸念を一瞬で掻き消す、意味のあるゴールだった。勢いよく上がって行ったアセンシオと、そのアセンシオが運んだ瞬間にハキミの位置取りを確認して落としを受けられるポジショニングを取ったチン出しに最大級の賛辞を送りたい。
で、なんでお前はそもそもそこにおんねんというハキミは、この日も思想が強い54歳のオッサンが非常に思想が強いフォーメーションを組んでいたせいで奇妙なポジショニングを取っていた。

攻撃時の人員がかなり左サイドに寄っているのがわかるが、右サイドはほとんど李康仁兄貴とハキミにお任せである。2人ともSBレベルの走力があるので大丈夫という判断なのだろうが、あまりヘルシーではないので考えものである。昨季から散見される、負担をかけられるところは徹底して負担をかけるというエンリケの方針は、ケースバイケースで評価すべきだろう。まあこいつらなら別にいいけど
残念だったのは、序盤早々にチン出しが悪質タックルで受傷して我らが𝑹𝒂𝒏𝒅𝒂𝒍 𝑲𝑶𝑳𝑶 𝑴𝑼𝑨𝑵𝑰 の出現を招いたことだ。うまく足を抜けていたので助かったかと思ったが、長期離脱が確定したらしい。重要なピースとして見込んでいた新チームにとっても、2年目の飛躍に期待していた本人にとっても痛すぎる負傷となってしまった。
というわけで、𝑹𝒂𝒏𝒅𝒂𝒍 𝑲𝑶𝑳𝑶 𝑴𝑼𝑨𝑵𝑰が投入された後は、李康仁兄貴とアセンシオのポジションが入れ替わった。現状左に傾いているチームの右WGとしては李康仁兄貴>アセンシオという状態だが、前線での起点能力はチン出し>アセンシオ>>>𝑹𝒂𝒏𝒅𝒂𝒍 𝑲𝑶𝑳𝑶 𝑴𝑼𝑨𝑵𝑰という評価なのだろう。右サイドの守備は怖いが、起点を前に作れずに押し込まれるのはもっと守備的に怖いという判断だ。
とはいえ、李康仁がIHに回るようになって、左サイドの守備はひとまず安定した。必然的に左でボールを失うケースが多い中、ザグではなかなか難しかっただろう。まずザグって誰やねん。そもそも実質3バックのような陣形を取っていたが、右利きで3バックの左を、しかもあの身長と経験でやるのは解せない。恐らく左にボールが集まるように仕向けたかったのだろうが、それにしてもCBコンビを左利き同士で組ませていたのも不可解なポイントである。コンディションの問題はあるのだろうが、他の選手のプロップスを失いかねないように見える。これも昨季から考えさせられる問題だ。
そのCBコンビの相性もあまり良くは感じなかった。私はCBは基本的に対人タイプかカバーリングタイプかで分けるが、ベラウドも(恐らく)パチョも後者。両者ともなかなかボールを奪いに行けずにラインが下がるシーンが散見された。
パチョはいで立ちと所作こそキンペンベによく似ているが、実際ここまではキンペンベよりカバーリングに特徴のあるタイプに見える。空中戦には強みがあり、スピードを利して右側に素早くカバーに走れてもいるが、対人戦は若干の不安がある。マルキーニョスとは地味に組ませ難く、シーズンが深まればシュクリニアルの出番が増えるのでは無いか。そうなれば、マルキーニョスのポジションが一列前か、右に移っていくのかもしれない。押し出される格好になるかもしれない選手を、早めに他のポジションで試しておきたいところだ。
それにしても、パチョの獲得は戦力的に1人のレギュラーを足した以上の効果をもたらすかもしれない。左利きでフィードを蹴れるくらいならサウジアラビアに行った人とかベラウド(ピンチと子供作りが得意な人)でもできるが、空中戦の強さとカバーリングスピードは彼らにはないものであろう。国内はまだしも国際試合になると、近年は大型のCFが少ないこともあって、中型対人型CBで相手のFWを制しつつ、大型カバーリング型CBでエアバトルを抑えておくというのが定石のように見える。(監督の性癖に刺さる上で)空中戦に強みを持つカバーリングCBというのはカタール体制以降不在で、待ち望まれていた存在だったのだ。それがまさか対人かパス能力に特化した選手が多い左利きのCBで見つかるとは思いもよらなかった。チ○コもデカそうだし、期待していいだろう。っぱチン○のデカさが大事よ、おーん。
○ンコと言えば、明らかに小さそうなジョアン・ネーヴェスも欠けていたものを填めるピースになる。ブラン政権以降ロングレンジのキックが効果を発揮しにくいチームに於いて、彼のロングの球質は少々異様だ。蹴り方が巧いのか尻の筋肉が凄いのかはわからないが、ボールが低く伸びる。ネガティヴ・トランジションが速くて機動力があり、前方でのプレーを苦にしないのも、ヴィティーニャの負担を軽減できそう。粗チ○でインシャツで闘う顔をしていないのは不安だが、ショートパスメインでポジショニングに最大の強みを持つヴィティーニャとは良いコンビになりそうだ。
中盤の小柄さは欠点だが、その分は後方で補いたいというのが私の考えだ。そのうちシュクリニアルが出るようになると書いたのもそれが理由である。小回りが効かない点は懸念されるだろうが、パチョもシュクリニアルも脚は遅くない。よっぽどエアバトルで劣勢になると言うなら、マルキーニョスを一列上げるなりウガルテを起用するなりEUROの真のMVPを登場させるなど、手はいくらでもある。あとは監督がどこまで自分のプライドを捨てられるかだろう。

話を試合内容に戻すと、チン出し交代以降は前線のケミストリーが感じられなかった。𝑹𝒂𝒏𝒅𝒂𝒍 𝑲𝑶𝑳𝑶 𝑴𝑼𝑨𝑵𝑰 はラモスのように低い位置で受けるほどボールタッチの性質が繊細ではなく、より良さが活きるように高い位置で受けようにも、両WGは幅と深さを取ることに従事しているので、彼と中盤を繋ぐ選手はピッチに居なかった。例えば新加入のデジレ・ドゥエ(闘うお顔、フランスの)がピッチにいれば話は変わったかもしれないが。ここは昨季エンバペも苦労していた部分のように感じる。というか𝑹𝒂𝒏𝒅𝒂𝒍 𝑲𝑶𝑳𝑶 𝑴𝑼𝑨𝑵𝑰 とエンバペの共存、地味に結構無理あったな
ハーフタイムでエンバイエはお役御免となり、後半開始と同時にジョアン・ネーヴェスを投入。後半開始すぐの失点はいただけないが、セットプレーの弱さはここまで続くと構造の問題だろう。ドンナルンマは高さこそあれど守備範囲は広くなく、オープンプレー以上にハイラインを設定するのに無理があるのではないか。そもそもドンナルンマもパチョも居るなら、セットプレー守備でラインを上げる意味はないように思える。
エンバイエは16歳にしては破綻なく終われたが、ネガティヴ・トランジション、リトリートしてからの守備の両面で課題を感じた。オフェンス時も幅と深さを取って仕掛ける以上の選択肢はなく、修行はまだまだ必要そう。破綻がなかったというだけで褒められる年齢ではあるのだが。
試合が動いたのは主力を投入した71分以降。ようやくザグが下がってマルキーニョスが入り、ベラウドがLBに移る(私がベラウドのLBに感謝したのはこれが初めてのことである)。前線も李康仁兄貴とアセンシオを下げて、デンベレとバルコラで突破力を強化する。中盤はしっかり3人で役割を入れ替えながら綺麗に回れていたので、あとは前線のパワーだけだったか。84分にデンベレのヘッド、86分にバルコラのドリブルシュート、最後にバルコラのクロスに反応した𝑹𝒂𝒏𝒅𝒂𝒍 𝑲𝑶𝑳𝑶 𝑴𝑼𝑨𝑵𝑰 がPKを奪取。そのまま生意気にもPKを蹴り込んで、終わってみれば4-1での勝利と相成った。
得点シーンを一つずつ振り返ると、デンベレのショボショボヘッドは、ジョアン・ネーヴェスが素晴らしい。バルコラが中に入って空いた左サイドのスペースに躊躇なく侵入して、逆足でクロスを上げ切った時点で本当に、本当に、偉いですよ〜🌸
それにしても、5レーンを全て埋めながら、ニアとファー、ファーストターゲットとセカンドターゲットがきちんと段差をつけながら入っていくのは昨季には見られなかった光景だ。エンバペがいた影響だろうが、昨季はそもそもここまでトランジションが間に合っていなかったように思う。中盤が昨季以上に滑らかに役割を替えながら動けているおかげで、両WGが躊躇なく中に入っていけるのも大きい。
バルコラのゴールはジョアン・ネーヴェス(チ○ポが小さそう)のところで勝負あったのかもしれない。低弾道のミドルパスがきれいにバルコラの胸元に収まった時点で、バルコラはバックしてくる相手選手と正対しているSBの間を割れば良いだけ。これはいけると判断したヴィティーニャが、サッと下がってドリブルコースを空けたのもお見事。そもそもネーヴェス(インシャツ)がアンカー位置に入り、ヴィティーニャはバルコラのサポートに入っていた時点でいかにうまく中盤が役割を入れ替えられていたかという話でもある。ザイール=エメリがそこによりうまく馴染んでいければ尚良いのだが。
と思っていたら、4点目はそのエメリンゴ2号機がアンカーの位置からヴィティーニャに出したミドルパスが全てを決した。受けたヴィティーニャはそのままバルコラにスルーパスを出すのみ。最後はバルコラが𝑹𝒂𝒏𝒅𝒂𝒍 𝑲𝑶𝑳𝑶 𝑴𝑼𝑨𝑵𝑰が突っ込める位置にグラウンダークロスを上げて、PKを誘発。チン出しが負傷したとはいえ、相変わらずポジション争いで劣勢に立たされている𝑹𝒂𝒏𝒅𝒂𝒍 𝑲𝑶𝑳𝑶 𝑴𝑼𝑨𝑵𝑰はこれで一旦落ち着けたのではないか。

目を引いたのは、中盤の機能性の高さだ。全員がアンカーとIHを一定レベルで兼務できる中盤は、ともすれば役割を明確化できないが故にポジションに穴を開けるリスクを孕んでいると感じているが、現状誰かが下がるという基本的な約束事は徹底されている。胃癌淫は少し前に意識が強いのでうまくやれないように見えるが、アセンシオは躊躇なくアンカーの位置に入れていた。既存戦力のスペイン国王、ウガルテらもアンカーでのプレーは本職であり、ほぼ誰が入っても保てるシステムになっている。
役割が明確化されない分、後ろの選手の壁性能は重要になってくるが、その点でもパチョの存在は大きい。大型でしっかりリトリートできるので、中盤を抜けてきた相手をしっかり迎え撃つことができる。大きくて脚が長い選手がリトリートできるだけで、相手のパスコースは減るものだ。
そうなると懸念はチン出しがしばらく不在となる前線だが、この試合である程度アセンシオで耐え抜くプランは見えてきたのではないか。ただし、アセンシオもチン出しも試合ごとの当たり外れはあるため、現状のアタッカー陣で最もMF的なドゥエ1700でライン間を上手く使いながらWGの突破力に依存するなどのオプション戦術は序盤のうちに増やしておきたい。数は揃っているCFの補強は、エースになれる選手も脇役になれる選手も市場におらず、その中間ばかり揃っている時点で否定的だ。ソレールの居場所がなくなりつつある時点で、雑に使えるWGの方が欲しくなるのではないだろうか。

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