3-16. ある錯覚
僕がこの惑星に上陸して驚く一つは、
気候のスペクトル(幅)が多様ということです。
それによって自然環境もさまざ異なり、
生息する野生動物も多様ということです。
添乗員としてツアーに出ると
楽しみの一つは
神秘的な大自然、
そして、野生動物との意外の出会いです。
まだこの惑星すべてを回ったわけじゃありませんが、
もしかしたら、ここは神界ではないかというところもあります。
もっとも、
空と近いところがあります。
行かれたことある方もいると思いますが、
こちらも個人的にはその一つのスポットです。
雄大な飛騨山脈が通る中部山岳国立公園に属する
乗鞍岳、畳平まで行く道はとても厳しいです。
標高2702mだけに、真夏にも風が強く、
鳥肌が立つほど気温も低く、霧も濃くて
1メートル先も見えない場合もあります。
高山のみながらの環境に慣れた動物、植物が生息しています。
畳平の頂上には日本一高いバスターミナルがあります。
このように、お土産や食事先もそろっています。
信じられない怪談(?)もあります。
ここには時時、野生の熊が出没し人を襲うこともありそうで、
ある日は売店で働くおばさんを攻撃し顔をやられたという…
たまに、イノシシや熊が、
人が住んでいる町や畑まで降りるニュースもみるけれど、
やはりこういうところは
我々人間のところではなく、
もっともっとやつらの領域ですね。
この日も貸し切りバスでお客様と畳平へ登るくねくね道で
こういう話もしたら車内はうやまい恐れという空気が広がりました。
畳平頂上を目前にして、
「こちらでは、運がよければライチョウや野生の熊を見る事もできます。」
とコメントした瞬間、
車窓から遠くの山の世から動く物が見えました。
「あっ!!皆様、左側遠くから熊が見えますよ!」
本当の熊がいました。
「ええええ!本当だ!熊だ!」
皆驚いて大発見の気分で車窓を眺めました。
「まだ、小さいですね、赤ちゃんかしら!」
自分も畳平で熊を見つけたのは初めてなので
興奮の声で少し揺れました。
小さい熊は元気に山を走っていました。
……
夢中の僕らが現実に戻るまでは、
わずか10秒でした。
それは、
ドライバーさんの一言
「あのね…
あれはさあ、
……
畳平頂上で飼っているやつなんだ。
お母さんの熊もいるよ。」
「……」
一瞬、車内には
気まずい静寂が……
(-_-)