「上陸旅」#7.From Hanoi
1
※新着のメール1件があります。
「Merry Chrismas & Happy New Years!」
「何だこりゃ、海外からの新種詐欺か?」
最近相次いたブラック不動産からのいきなり営業電話にあきてしまい、警戒心が最高レベルの日々です。
英語での知らない者からなので
フィッシングだと思い、中身も読まず
削除しようとしたら、
一瞬だけふっと変な気がして
中身を開けてみました。
……
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2
「ダニエルさん、さようなら!」
日本での短い1年という留学生活を終えて、
母国ベトナムに帰国する彼は
2007年秋、上智大学がある四ツ谷で
日本での最後の挨拶をしながら
手を渡しました。
「トアンさん、さようなら!
いつかまた会おうね。」
僕は彼と握手しました。
そして、軽く彼を抱きました。
「立派な神父様になって弱者の味方になってね」
日本語学校で出会ったクラスメートが
これでもう一人帰国。
知り合ってただ1年若干なのに
この別れが寂しく感じるのは
やはりこの人は
良い人だったやなと
……
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3
「トアンさん、ハッピーバースデー!!!」
「!!!!」
皆の熱い青春、
皆の明るい夢の様に
ロウソクがキラキラと照らす
クラスメート達のお祝いと共に
素敵なケーキが教室外から入り
サプライズ誕生日パーティーが
始まりました。
他国で迎える初めての誕生日が
知り合ってただ1ヶ月の外国人達が
こんな盛り上がるサプライズパーティーまで
なんて
トアンは予想もしなかった様に
サプライズな顔になり、
結局、涙がぽろりと…
もしかしたらこの日は
彼の人生で忘れない思い出になるかも…
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4
「初めまして、私の名前はダニエルです。」
皆日本に来たばかりで
まだまだ全てが慣れない日本語学校の初日、
隣に座っているクラスメート男に僕は
挨拶をしました。
「初めまして、僕はトアン。
ベトナムから来ました。」
お互い片言の日本語で
僕らは笑いました。
トアンは日本に来た留学生ですが、
ベトナムでカトリック神学校に入り、
将来、神父様になる夢を持っている
神学生という特殊な立場でもあり
日本ではサレジオ修道院所属で
日本語勉強と神学生としての活動も
並行していました。
授業が終わったら皆自由になるのが当然なのに彼は時間の制限があり
何となく大変そうでした。
日本語も日本での生活も
とりわけ慣れにくい様で困る様子だが、
カトリックという共感帯以外にも
世の中に対する純粋な彼の人柄が気に入って僕らは友達になりました。
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5
「Merry Christmas and Happy Years」
Daniel Oh san,
楽しく、幸せなクリスマスでありますように。
新しい年が順調でありますように。
God bless you and your family.
Peter Tuan
立派な神父様になった彼からのメールでした。
ハノイの聖堂に設置されたイエス・キリストの誕生(クリスマス)飾りと彼の写真が添付された短い内容でしたが、
穏やかな心の海を揺らせる気分で
何とか涙が出そうでした。
「パパ、どうしたの?泣いている?」
滑り台から降りた息子は
パパの異変を気づいて心配の顔で
聞きます。
冷たい空気と爽やかな青空の日でした。
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