白頭山(はくとうさん)の死#6(寛ぎ)
翌朝、僕は怪しい音ではっと目を開けました。
人間の匂いでしたので、警戒しながら音が聞こえた山の下を見回りました。
下の草原のから徐々に見えた姿は…
?
何と龍王潭(りゅおうたん)付近で出会った、昨日小屋の庭で見えた少女でした。こんなに高い所までしかもこんな時間に来るなんて…
怪しいながらも嬉しかったです。
僕が唯一好きなただ一人の人間だからです。
少女はしばらくの間キョロキョロと辺りを見回して慌てながら泣き始めました。
僕は当惑して少女の前に姿を見せました。
僕の出現で少女はやっと泣き止んで笑顔に変わりました。
僕も久しぶり気分が穏やかになりました。
その時でした。
「トン!トン!」
知らない方面から銃撃音と同時に僕の後ろ右足に強烈な痛みを感じました。
一発が命中したようです。貫通された傷から熱い血が出ました。
後ろ右足骨が折れたか全然使えなくなりました。
一体何が起こったか。
判断力も薄くなって頭が真っ白になりました。
上からわながひっつかまえて来ましたが、気を戻してギリギリで避けました。
気づいてみたら目の前の少女も姿を消えました。
その代わり人間群れが一斉僕に向けて包囲しながら鉄砲を発射しました。
やっと避けました。
恐らく、雪に目立った僕の血の痕跡を追いかけたようです。
包囲網はどんどん狭めて来ました。
僕は最後を予感しながらも死ぬ気でやつらの頭の上にジャンプして包囲網を破ろうとしたが、
先当たった後ろ右足を無理して使ったか背中から地面に落ちて転がってしまいました。最後の力を出して立ちました。
もっともっと多い人数の人間群れが岩の後ろから、姿を現れました。
「トン!」
今度は一発の銃弾が僕の胸に命中しました。
僕は一撃に体のバランスを失って倒れました。
......
ママがいるところへ向かうのは悲しくはないです。
ただ、ママを殺して、僕のそばから奪った人間たちが恨めしいだけです。
体が軽くなる気分です。
「わあ!」という人間群れの喊声が聞こえます。
喜びながら僕に近づいてきます。
間もなく、僕もママの様に皮が取られてあの小屋のペチカの上に誇らしく掛けられるでしょう。
やつらは友人や家族、親戚が小屋を訪れると温かいお茶を出しながらペチカの周りに座りながら掛けられた僕の皮を自慢そうに見せながら僕との一戦を語るでしょう。
朝の日差しが雪だらけの地で流れた僕の鮮血をもっと鮮明にします。
遠くの後ろから少女の泣き声が聞こえました。
少女でした。
僕を見ている少女は涙と鼻水だらけになって泣いていました。
その隣でパパと見られると人間が少女を抱きながら落ち着かせていました。
少女の目は言っていました。
「本当にごめん、あなたがこうなるとは思わなかったよ…」
「…大丈夫。君は悪くない…僕…ママに会いに行くわ…」
僕も目で答えました。
ママとの幸せだったことを思い出しました。
冠母峰(かんぼぼう)、「ママの懐」池の魚群れ、「咆哮の崖」で鳴いたママの迫力ある姿、訓練、猪との闘い、霧に囲まれた龍王潭(りゅうおうたん)の秘境、少女との出会い、そして…ママの死…
そして、
僕がこの白頭山(はくとうさん)の最後残っていた虎という事も思い出しました。僕の死で僕ら一族も終わりです。
最後に僕が生まれた「ママの懐」池が見たくなりました。
その時、青空の白い雲の中でママの一瞬、顔が見えました。
最初は本当かどうか疑われた形はどんどん鮮明にママの顔になって
僕を呼んでいました。
もう時間です。
幸せです。
ママに会えるから。
ママに出会ってママの懐で寛ぎたいです。
最後にママが見える空に向けて強く咆哮しました。
少女よ、
さようなら…
<続きは#7、最終話となります。>
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