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2月12日 重要なニュースと記事:政治編

今週のニュース・記事まとめは、「政治」と「その他」で分ける予定です。今回はトランプ政権による科学研究の助成金カット、マスク率いるDOGEの「AIクーデター」 、マスクのネオナチ問題、教育省廃止案について。


科学研究の助成金カット問題


トランプ政権は、国家衛生研究所(NIH)の研究助成金における「間接費用」を15%に制限すると提案し、医療研究業界は大混乱に陥っている。研究者らは、がん研究や心臓病などの医療問題に取り組む施設に打撃を与えるだろうと指摘し、マスクは「ぼったくり」だと主張

間接費用とは、研究室の維持や高度な設備の管理など、研究を支えるための間接的な経費を指す。 10日より大学や病院を含む米国の研究機関への年間数十億ドルの資金援助を削減する方針を、裁判官が阻止した。

ウィスコンシン大学マディソン校は声明文にて、NIHの予算削減により、癌、アルツハイマー病、糖尿病などに対する重要な研究活動が大幅に混乱し、救命につながる発見や治療が遅れることになると主張。「この助成金の大幅な削減は、最終的には(略)国の競争力を低下させることになるだろう」

ではこのNIH助成金の上限率が15%に引き下げられたことについて、マウントサイナイ・アイカーン医科大学微生物学部教授のKrammer氏がXのスレッドで解説したので、以下に訳す。

「NIHが助成金を通じて研究に支払う1ドルごとに、通常、追加の資金(これを費と呼ぶ)が加算される。直接費は実際の研究(科学者の給与、試薬など)に充てられるが、間接費はインフラおよび公共料金。電気、水道、暖房、トイレットペーパーなどの基本的なものから、動物施設の維持管理、特殊な設備を備えたコア施設、事務サービス、建物の維持管理、セキュリティ、郵便、インターネットなどにも充当される。
電話サービス、多くの場合IT全般...挙げればきりがない。 基本的には家賃や光熱費のようなものだ。 さて、これらの間接費や間接経費の範囲は様々だ。 場合によっては10%程度である。 しかし、機関によっては100%を超えるところもある。 仮に50%だとしよう。 その場合、研究に1ドル費やすごとに、NIHはさらに50セントの間接費/間接経費を負担することになる。これらの率は各機関ごとに設定される。この率は数年に一度NIHと交渉される。この率は時とともに変化し、多くの場合、その機関の所在地や研究者に提供されるサービスを反映する。例えば、ニューヨーク市の機関のオーバーヘッドは、ネブラスカ州リンカーンの機関のオーバーヘッドよりも高い可能性が高い。
場合によっては間接経費が水増しされ、研究者は助成金に多額の間接経費がかかる割には十分なサービスが受けられないと不満を訴えることが多い。 注意すべきは、間接経費は研究者の予算から差し引かれるのではなく、それに加えて支払われるということだ。
私の同僚の多くも同意するだろうが、一般的に間接経費は高すぎるか、あるいは研究により多くの利益をもたらすよう機関内で異なる配分がなされるべきである。しかし、全米で一律にすることは、一般的に物価の高い地域の機関にとっては明らかに不利である。
間接経費を大幅に削減すると、研究者が重要なインフラやサービスを利用する機会も減少する。米国の生物医学研究が世界をリードしている理由の一つは、高額の間接経費がハイエンドの研究を可能にしているからである。」

デューク大学Assistant ProfessorのChory氏は、このように説明している。

"レストランを経営していると想像してほしい。突然、食材とシェフの予算しか残らず、家賃、電気代、暖房費、水道代、サポートスタッフ、保険、ゴミ処理、トイレットペーパーの予算が一切ない状況だ。これが、米国のすべての主要な生物医学センターや病院に起こった「間接費の削減」だ"

ユタ大学教授のShepherd氏はこう批判している。


"現実を見よう。科学やNIHに対するこれらの攻撃は、支出の効率化が目的ではない。それは、DEIの抑制と、COVIDの起源などに関する陰謀レベルの非難に対する機関への復讐が目的だ。JD・ヴァンスはそう言った。プロジェクト2025はそう言った。経済的な意味はない。"

間接費用についての詳しい議論はこのスレッドを参照してほしい。

一方で、イーロン・マスク氏はこの間接費用の仕組みを正確に理解しないまま、「研究助成金の6割を大学側がぼったくっている」とXのアカウントで批判。

この例のように、「仕組みを理解せず」(もしくは、理解した上であえて専門知識のない人をミスリードするために)事実を捻じ曲げ、自身のアジェンダにとって都合の良いような発信と「財政の仕切り直し」「政府の運営」を正当化している。

その他米政府関連

1)Propublicaは、DOGEエンジニアがUSAIDにて、社会保障番号(SSN)、信用履歴、および安全保障上の背景調査で収集された情報へのアクセス権を持つ「スーパー管理者」になったと報じている。

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