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【超短編小説】誰がポストに施錠した?

 本当に意味がわからない。今住んでいる単身者向けアパートのエントランスには、ダイヤル式の集合ポストがある。チラシしか入っていないので、大半の住人が常にロックを解除し、ポストの扉を半開きにしていた。入居から五年間ずっと無施錠で何も問題がなかった。
 それなのにどうしたのだろう、今日はじめてロックがかけられていたのだ。

 私は恐怖を覚えた。もちろん私がロックしたのではない。いったい誰が施錠したのだろう。まったく心当たりがない。

 なぜこんなことをするのだろう。犯行理由がわからないことで、恐怖はさらに大きくなった。
 ダイヤル式だから別途鍵は要らないし、やろうと思えば誰でも施錠できる。だがこの五年間、勝手に施錠する住人はいなかったし、イタズラするような人物も思い当たらなかった。

 私は怒った。他の住人が間違って施錠したのだろう。
 しかし見ると、どのポストも扉がキチンと閉まっている。こんな光景は見たことがない。おそらく私同様、すべて施錠されているのだろう。

 私は悲しくなった。外部の人間によるイタズラだと思ったからだ。ポスティングやデリバリーの時にポストを見つけ、面白がって施錠したに違いない。エントランスに入ればポストが無施錠なのは一目瞭然。仕事ついでにガチャリと施錠したのだろう。誰かの快楽のため、心ない犯行が行われたのだと悲しくなった。

 そのときはダイヤル番号を忘れたので、私はポストの中を確認できなかった。帰宅してから番号を確認し、明日の帰りにまとめて取り出そうと思った。

 しかし翌日、驚きの光景を見た。アパートの管理人がポストに施錠していたからだ。思わず私は声をかけてしまった。

「あの、なんで鍵をかけてるんですか?」
「ああ、先日郵便物の取り違えで住人同士のトラブルになっちゃって。だから間違ってよそ様の郵便物を持っていかないように、鍵をかけているんです」

 家に帰ってから郵便物を確認すると、チラシに混じって管理人から注意喚起のチラシが入っていた。

「いや、施錠前に告知してくれないと、防ぎようがないんですけど」
 そう思ったら一気に気が抜けた。そして乾いた笑いをあげた。


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団 卑弥呼
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